診療のご案内肝炎・肝がん

当専門外来で行われている臨床研究について

肝炎は、ほかの多くの臓器における炎症と違い、自覚症状がほとんどないままに病気が進行してしまう病気です。大部分の急性肝炎は、肝細胞が壊されても自然に元の状態に戻り、特別な治療を行わなくとも治りますが、劇症肝炎や急性肝不全では、肝細胞の破壊が極めて大規模に起こるため、肝細胞の再生が間に合わず、適切な治療を行わないと高頻度に死に至ります。また、C型肝炎やB型肝炎では慢性化することがあり、ウイルスがいるだけで活動性はない無症状のキャリアの方もいれば、肝炎が持続して、肝硬変や肝がんになってしまう人もいます。

世界では肝炎ウイルス感染症によって、毎年100万人以上が死亡し、2018年には世界三大感染症であるHIV、結核、マラリアの死者を上回るほど問題となっており、これを受けて、2016年5月WHO総会は、2030年までにウイルス性肝炎を撲滅するための戦略を全会一致で採択しました。日本を含む11ヶ国は2030年までにWHOの撲滅目標を達成すると見込まれていましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、病院受診や治療を控える傾向から目標を達成できない可能性も報告されており、最近問題となっています。

私たちは、肝炎治療における治療効果・安全性、治療後の肝発がんに関わる宿主やウイルスの因子についてこれまで多くの研究を基礎と臨床両面から行ってきました。新型コロナウイルス感染拡大の中で、これまでと異なりさまざまな制限がありますが、肝炎撲滅に向けてこれまで以上に臨床と研究を推進したいと考えており、実際の臨床現場から感じる疑問や、患者様にすぐ還元できるような、有意義な研究課題について、いつもスタッフ一人一人が患者さんと向き合いながら考えています。研究で得られた結果は、国内外の学会や研究会、ホームページなどを通じて発表していきたいと考えています。下記に私たちの研究室で行っている臨床研究の一部をご紹介します。

1.”御茶ノ水リバーカンファレンス” 多施設共同研究(C型肝炎治療)

消化器内科関連施設と大学で行う多施設共同研究“御茶ノ水リバーカンファレンス”は2000年以降活発に行われております。IFN治療が主軸だった時代から、IFNフリーの時代に至るまで、これまで2000例を超える患者さんのデータを集積し、治療の安全性や有効性、治療後肝発がんや予後に関する研究成果を報告しています。

御茶ノ水リバーカンファレンス協力施設

2.国内外の施設への情報および資料提供

”御茶ノ水リバーカンファレンス” 多施設共同研究では、匿名化した臨床情報、患者検体を、倫理審査などの必要な手続きを取った上で、他施設とも共有した研究を行っています。内閣府所管の国立研究開発法人である日本医療研究開発機構(AMED)が推進している肝炎克服事業で行われる研究班も含めて多くの施設から資料提供の依頼があり、これまで多くの研究に協力し得られた知見がGastroenterologyやGutなどに報告されています。

ほかにも肝癌レジストリ研究や、NASH/NAFLDの研究など、幅広く手掛け、基礎と臨床を融合した研究を展開しています。こちらもご参照ください。

これまでの主な業績詳しくはこちら ▼

  • SVR後のC型肝炎患者において、治療後のAFP値、M2BPGi値が肝細胞癌発生および肝細胞癌再発の予測因子として有用であることを報告しました
    Nagata H, J Hepatol. 67:933-939, 2017

  • 肝癌の既往がないSVR達成C型肝炎患者において、SVR時のM2BPGi値がSVR後の生存率を予測する因子となりうることを報告しました
    Nakagawa M, J Gastroentero. 55: 990-999, 2020

  • Nakagawa M, J Gastroentero. 55: 990-999, 2020.

  • Nitta S, Hepatol Res. 50:524-531, 2020.

  • Sapena V, Gut, Online ahead of print. doi: 10.1136/gutjnl-2020

  • Nitta S, Sci.Rep. 9:5722, 2019.

  • Azuma S, Dig Dis. 37:247-254, 2019.

  • Inoue-Shinomiya E, Hepatol Res. 49:500-511, 2019.

  • Nagata H, J Hepatol. 67:933-939, 2017.

  • Murakawa M, Hepatol Res. 47:1212-1218, 2017.

  • Murakawa M, J Med Virol. 89:1241-1247, 2017.

  • Matsuura K, Gastroenterology, 152:1383-1394, 2017.

  • Nagata H, Hepatol Int. 10:956-964, 2016.

  • Murakawa M, J Gastroenterol Hepatol. 30:1075-1084, 2015.

  • Asahina Y, J Gastroentero. 58:1253-1262, 2013.

  • Asahina Y, Hepatology. 58:1253-62. 2013

  • Nakagawa M, Hepatol Int. 7: 153-161, 2012.

  • Asahina Y, Hepatology. 55:20-9. 2012

  • Ueyama M, Antiviral Therapy. 16: 1081-1091, 2011.

  • Sakamoto N, J Medical Virol. 83:871-878, 2011.

  • Asahina Y,Hepatology. 52:518-27. 2010

  • Sakamoto N, Hepatology Res. 40: 1063–1071, 2010.

  • Nakagawa M, J Gastroentero. 45:656-665, 2010.

  • Asahina Y, Gastroenterology. 134:1396-405. 2008

  • Asahina Y, J Hepatol. 43:623-9. 2005

  • Asahina Y, J Hepatol. 39:1063-9. 2003

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