診療のご案内肝炎・肝がんの主な対象疾患について

非アルコール性脂肪性肝疾患/肝炎(NAFLD/NASH)について

昨今、肥満などを背景とし、脂肪肝をきたす非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease : NAFLD )の方が増えています。検診受診者を対象とした調査では約3割の方がこの病気を持っているとされ、推定で約2000万人の方が脂肪性肝疾患に罹患されていると考えられています。更にその中の一部、1-2割の方が脂肪肝に肝炎を合併した非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis : NASH)をきたします。肝炎の持続は肝臓の線維化を引き起こし、肝硬変、肝がんへと進展していきます。NASHの方の多くは、症状をきたさずに進行してしまうため、ご自身が脂肪肝を指摘された場合は一度病院を受診することが勧められます。

検診などで、腹部超音波検査にて脂肪肝を指摘、その中でも血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)といった値が高い場合などに、精査が必要とされ受診されるケースが多く、まず肝障害が本当にNASHによるものか、他の肝疾患が潜んでいないか調べていきます。
NASHの確定診断は肝生検による脂肪肝や炎症の程度、線維化といった病理学的評価・診断を必要とします。肝生検は一般的に入院を必要とする侵襲的な検査であることから、ハードルが高いことが問題でした。当院では、既に腹部超音波エラストグラフィー(フィブロスキャン)やMRIエラストグラフィーといった最先端の非侵襲的な検査診断機器を導入し、非侵襲的な脂肪肝や線維化の評価を行っています。肝生検による確定診断とともに、こうした非侵襲的診断機器、血液検査結果を踏まえることで、患者様個々のNASH、線維化、発がんのリスクを考慮して治療にあたることができています。

NASHの治療については、肥満・生活習慣病を背景としている際には、食事・運動療法による体重減量を第一に目指します。多くの生活習慣病が、同様に食事・運動療法を指導されることと同じように、まず目指す目標です。具体的には体重の7%程度の減量で脂肪肝や炎症が改善することが報告されています。薬物治療は、有効性が示された選択肢はビタミンEなど数少なく、欧米を中心として今まさに様々な治療薬の開発、治験が執り行われている中であり、今後の選択肢が広がる可能性を期待されます。我々もこうした治験に精力的に参加するなど、力を入れています。

治療の目標は、炎症を取り除き、線維化の進行を抑えることであり、これらにより肝硬変・発癌の抑制を目指します。既に線維化が進行している方など、発癌のリスクが高いと考えらえる場合は肝癌の早期発見定期的な画像検査などのフォローアップが必要です。

脂肪肝の腹部超音波所見

前のページへ戻る