診療のご案内肝炎・肝がん

肝臓がんについて

肝臓がんは大きく分けて肝臓にある細胞ががん化した「原発性肝がん」と他部位で発生したがん細胞が肝臓に転移してきた「転移性肝がん」に分けられます。そして、原発性肝がんの約9割が肝細胞癌です。

肝細胞癌について

肝臓は代謝、解毒作用、胆汁の生成・分泌する機能を持っており、その役割を担う肝細胞が癌化したものが肝細胞癌です。病因は、ほとんどがC型肝炎、B型肝炎、アルコール性肝障害、脂肪肝などの慢性肝疾患です。近年では、生活習慣病に関連して脂肪肝をお持ちの方が増えており、肝細胞癌の増加が懸念されております。

肝細胞癌に対する治療について

肝細胞癌の治療には、主に肝切除療法、ラジオ波焼灼療法、肝動脈化学塞栓療法、放射線療法、および全身化学療法が行われ、治療方法の選択には、肝臓の機能、肝細胞癌の数、そして肝細胞癌の大きさを考慮することが推奨されています。

肝細胞癌治療アルゴリズム(日本肝臓学会 肝癌診療ガイドライン2017年版)

基本的には、このガイドラインに準拠した治療法が選択されます。しかし、これはあくまで一般的な指針を示すものであり、実際には患者さんごとに、さらに適切な治療法を考える必要があります。私どもの「肝炎・肝がん撲滅外来」では、肝胆膵外科、放射線科の医師とも密接に連携しながら、内科治療にこだわることなく、それぞれの患者さんに最適と考えられる治療方法をご提案させて頂いております。

ウイルス性肝炎・脂肪肝炎等の背景肝疾患を有する患者さんや肝硬変の患者さんでは、肝発癌リスクが高いために、私たちは患者さんごとのリスクに応じてCT、MRI、造影超音波等を駆使して早期診断に努めております。この様にして診断した早期肝癌に対しては最先端の画像支援システムを用いたラジオ波焼灼術により低侵襲に治療しています。すなわち、超音波造影剤やRVS(Real-time Virtual Sonography:CT/MRI画像を立体化し、施行中の超音波画像と同一断面を表示することが出来るシステムで、確認が困難な腫瘍の同定が容易となる手法)など様々な手法を駆使することで、安全かつ確実な治療を心がけております。腫瘍個数や腫瘍径の観点などからラジオ波焼灼術単独治療の適用とならない症例では、放射線科と連携して肝動脈化学塞栓療法を併用したり単独で治療したりしており、治療効果を最大限に向上させております。

一方、進行した肝癌に対しては患者さんごとのがんゲノム情報に応じて適切な分子標的薬や免疫治療薬を選択するなど、あらゆるステージの肝癌においておひとりおひとりに最善の診療を提供しております。近年、肝癌に対する分子標的治療は飛躍的に進歩しており、2020年には免疫チェックポイント阻害薬を使用した化学療法も保険適応になるなど、抗がん剤の開発には目覚ましいものがあります。当科では、肝動脈化学塞栓術療法の効果が十分でない患者さんに対して、これら新規薬剤を用いて積極的に治療を行っており、大きな効果を上げております。

肝癌は局所的に根治したとしても、他臓器の癌に比し再発率が高いことが指摘されています。また、肝硬変など何らかの肝疾患を合併している患者さんが多くを占めるという特徴があります。私たち肝臓専門医は肝癌治療後も再発の早期発見に努めるとともに、再発リスクや肝予備能の低下を低減するための生活指導や治療介入を積極的に行い、肝臓と身体全体を常に最善の状態に保つ努力をしております。

肝癌と診断された方や、既に診断されている方で、主治医の先生から更なる専門診療が必要と判断された場合には、紹介状をお持ちになり私どもの「肝炎・肝がん撲滅外来」を受診することをお勧め致します。

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