RD希少疾患・難病 RD
[Rare Disease]

RD-2

希少性神経疾患あるいはアルツハイマー病などの神経難病を対象に、独自に開発したヘテロ核酸技術によって創製した核酸医薬、あるいは、AI・スパコンを駆使した分子ネットワーク解析から開発した治療薬を用いて、認知症と神経難病の新しい治療・予防を創出します。
横田グループでは、これまで核酸医薬の基盤技術である「ヘテロ核酸技術」を独自に発明し、研究開発をしてきました。核酸医薬品は近年上市が相次ぎ注目されておりますが、中枢神経への薬物送達と毒性の点で課題がありました。本研究では、ヘテロ核酸技術を用いて核酸医薬の課題を克服し、認知症と神経難病に対する治療薬の創製を行います。
岡澤グループでは、アルツハイマー病などの認知症の症状顕在化の、はるか前の分子的兆候を網羅的解析手法によって探索してきました。そして、得られたビッグデータを、スーパーコンピュータやAIを用いて解析することで、神経変性の本質が徐々に明らかになってきました。このうち本研究では、分子ネットワークの時間的遷移と脳炎症にフォーカスした研究を進めます。

RESEARCH MEMBERS

RD-2

岡澤 均

難治疾患研究所 神経病理学分野 教授

RD-2

横田 隆徳

大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学分野 教授

PUBLICLY OFFERED RESEARCH PROJECTS

難治性精神疾患におけるシナプス分子に対する自己抗体病態の解明と治療法の開発

塩飽 裕紀

大学院医歯学総合研究科 精神行動医科学分野 テニュアトラック准教授

難治性の精神疾患の新しい治療戦略の創出のためには、さらなる分子病態の解明が必要です。近年、脳炎からシナプスに対する自己抗体が見つかってきています。それに伴い明らかな炎症を起こさないけれども精神症状を呈する自己抗体病態も提唱され始めました。例えば、統合失調症をはじめとした精神疾患の病態の一部に、神経系・シナプスに対する自己抗体/自己免疫が関係する可能性が指摘されています。本研究課題では、未知の自己抗体の発見・その病態への関与の解明・自己抗体によるバイオマーカ―の創出・自己抗体を除去する治療法の確立を行っていきます。

神経変性疾患モデルiPS細胞とAIを用いた細胞死の予兆検知

田中 ひかり

難治疾患研究所 神経病理学分野 講師

細胞死は治療可能な段階(可逆的段階)から治療不可能な段階(不可逆的段階)に進行する重要な病態過程であり、この前兆を知り制御することは極めて重要です。本研究では、一見正常な形態である細胞死が起こるよりも前にその細胞が細胞死に至る運命を予測することを目標とします。具体的には、我々の先行研究で神経変性疾患において最も頻度が高く、発症前から既に起こっていることが明らかになったTRIADネクローシスの予兆検知を行います。

筋萎縮性側索硬化症の原因タンパク質TDP-43の凝集抑制を目的とした新規アプタマーの創出

三浦 元輝

大学院医歯学総合研究科 脳神経病態学分野 大学院生

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に運動神経が障害され、全身の筋力が低下し人工呼吸器を使用しない場合平均して3−5年で死に至る重篤な疾患です。しかしながら非遺伝性のALSに対する有効な治療法は確立されていません。TDP-43タンパク質は95%以上の非遺伝性ALS患者の方の神経細胞内で異常な凝集体を形成しており、ALSの病態への関与が強く疑われています。当分野ではALSの治療法開発を目標とし、TDP-43の凝集を抑制する核酸医薬の開発を進めてきました。本班では更に発展させ、新規の構造をもち、より有効性の高い核酸の開発を進めています。その作用機序の詳細な解明とともに、薬としての有効性・安全性を改善させ、ALSの治療法開発へとつなげることを目指しています。

核酸高次構造を標的としたリピート伸長病の創薬研究

馬 悦

統合研究機構 研究基盤クラスター リサーチコアセンター 助教

近年、難治性神経疾患であるリピート伸長病の疾患原因の一つとして、グアニン四重鎖(G4)と呼ばれる特殊な核酸の高次構造が着目されています。一部のリピート伸長病の原因遺伝子は、グアニン豊富な繰り返し配列を有しており、G4の形成とそれに結合するタンパク質が集積することで、リピート伸長病の発症に繋がることが報告されました。そこで本研究課題では、原因遺伝子上で形成されるG4と結合タンパク質との相互作用を阻害する低分子化合物を探索し、そのモダリティ化を行うことでリピート伸長病に対する創薬シーズ化合物の取得を目指します。

新規オートファジー関連因子 BCAS3 を原因因子とする HEMARS の発症機構解明

小島 和華

難治疾患研究所 機能分子病態学分野 学振特別研究員 PD

オートファジーは、不要なものを分解して細胞の健康状態を保つシステムです。神経系の細胞にとって細胞内恒常性の維持は極めて重要であり、オートファジー遺伝子の変異によって発症する神経疾患も知られています。本研究では、我々がオートファジー膜に集積するタンパク質として同定し、その後、神経発達障害の原因として報告された新規オートファジー関連因子を扱います。単一遺伝子の変異による遺伝性疾患の治療法確立には、その変異がどのような遺伝子産物を生み出し、どのような分子機能の破綻または獲得が病態を引き起こすのかを理解することが必要です。分子機能と病態の解析を並行して進め、治療法創出につながる足がかりを得ることを目指します。