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[Oral Science]

OS-2

頭頸部領域における粘膜組織は生理的に特有の機能を有し、呼吸や摂食などの日々の営みや喫煙などの生活習慣によって、外来から種々の刺激を受けている。頭頸部がんおよび難治性粘膜疾患の発症機序は複雑である。頭頸部がんにおいては、拡大手術やネオアジュバント療法により手術適応が広がったものの、再発・転移症例のコンロトールは今なお困難をきわめ、化学療法・放射線療法・免疫療法などの適切な複合療法による QOLを維持した低侵襲治療法の選択と開発が望まれる。本プロジェクトにおいては、難治性粘膜疾患および上皮発がんに関わる制御遺伝子・分子の同定や、頭頸部がんの微小環境ネットワークシグナルの解明を通じて、頭頸部領域の特殊性を明らかにするとともに、希少がんであり、外科療法によって患者のQOLの低下を招きやすい頭頸部がんの非/低侵襲治療法を開発することでアンメットメディカルニーズの課題解決を図る。

RESEARCH MEMBERS

OS-2

渡部 徹郎

大学院医歯学総合研究科 病態生化学分野 教授

OS-2

東 
みゆき

大学院医歯学総合研究科 分子免疫学分野 教授

OS-2

原田 浩之

大学院医歯学総合研究科 顎口腔腫瘍外科学分野 教授

OS-2

朝蔭 孝宏

大学院医歯学総合研究科 頭頸部外科学分野 教授

OS-2

加納 嘉人

大学院医歯学総合研究科 臨床腫瘍学分野 講師

OS-2

樗木 俊聡

難治疾患研究所 生体防御学分野  教授

OS-2

梶 
弘和

生体材料工学研究所 
診断治療システム医工学分野 教授

PUBLICLY OFFERED RESEARCH PROJECTS

頭頚部メカノストレスを再現する頭頚部がんin vitro 3Dモデル

木村 雄亮

生体材料工学研究所 精密医工学分野

頭頚部がんの発症機序は複雑であり、不明な点が多いです。解析が進んでいない理由の1つとして、in vitroでの研究環境が整っておらず、実験回数を重ねられない点があります。頭頚部組織は摂食を含む、多くの外因性メカノストレスを受けており、また、咽頭部においては、咳などによる不規則なタイミングでの急激な内因性メカノストレスを与えられる事も多く、このようなメカノストレスを含む、in vitroでの細胞、組織培養環境を整える事が非常に困難でした。そこで本領域研究では、そのようなメカノストレスを含め、頭頚部組織、及び頭頚部がんの3次元構造を完全摸倣したin vitro実験モデルの開発を行っていく予定です。

3D動態解析とNGS解析を用いた歯髄リンパ管誘導メカニズムの解明とその応用

田澤 建人

大学院医歯学総合研究科 歯髄生物学分野 助教

歯髄の保存・再生の試みは歯を長期にわたって残すために重要でありますが、その実現には歯髄の詳細な組織構造や細胞動態・機能を包括的に理解する必要があります。しかし、歯髄は象牙質・エナメル質といった硬組織に囲まれているという特徴から解析の手段が限定され、未だに不明な点が多いのが現状です。なかでも歯髄リンパ管の有無、歯髄常在性マクロファージの生物学的役割については明らかになっておりません。またこれらは、密接に関わりながら歯髄間質液の調整、組織修復、免疫応答に関与していると予想されますが、これまでの手法では解析に限界がありました。そこで、本研究では組織を透明化することで歯髄における標的分子を3次元構造のまま観察する手法を用いて、これまでは困難であった歯髄脈管系および歯髄細胞の3D観察を行い、最新の分子生物学的手法と合わせて、これらの相互関係を明らかにすることを目指します。

Am80による線維化のリモデリングを介した口腔がんの放射線増感戦略

野島 瞳

大学院医歯学総合研究科 歯科放射線診断・治療学分野 特任助教

“腫瘍を軟らかくする”というこれまでにないアプローチで放射線治療増感を目指します。治療抵抗性がんの特徴に、間質の高度な線維化や低酸素領域の存在が挙げられます。低酸素領域の腫瘍は放射線抵抗性ですが、それを改善させるための増感剤で、未だ臨床応用されているものはありません。近年、急性前骨髄球性白血病治療薬であるAm80が、固形腫瘍の間質の線維化を改善させることが示されました。本研究では、口腔がんマウスモデルにAm80を投与すると、腫瘍が軟化し、酸素の送達性が向上することで低酸素領域が減少し、放射線治療増感につながると仮説を立てました。高度線維化腫瘍モデルを作成し、多面的な検討を行う予定です。