理事ご挨拶

GREETING

東京医科歯科大学外観

本学は、2022年4月から10校ある指定国立大学法人の1つとなりました。これは言うまでもなく、ゴールではなくスタートラインに立ったということであり、更なる研究力の強化が必要です。そこで、3つの重点研究領域、創生医学、希少疾患・難病研究、口腔科学、を設定し、またこれを支える3つのコア技術・概念、ゲノム・データサイエンス、社会医学、創薬モダリティ、を横ぐしに設定し、研究を推進します。
昨今の研究力の強化には、「内発的動機付け」と「異分野の融合」が必要だとされています。

内発的動機付け
(モチベーション):

Daniel Pinkという米国の社会学者がモチベーションを3つ、モチベーション1.0, 2.0, 3.0に分けています。モチベーション1.0は食欲、睡眠欲などの本能的なモチベーションです。モチベーション2.0は、「外発的動機付け」と呼ばれており、いわゆる「アメとムチ」です。モチベーション3.0は「内発的動機付け」と呼ばれており、簡単に言うと「自分がやりたいからやる」というものです。高度成長期には外発的動機付けが有効だったのですが、いったん成長してしまうと外発的動機付けではやる気が起きず、内発的動機付けが重要であることが分かっています。さらに、「ろうそくの実験」という有名な実験で、イノベーションには外発的動機付け(アメ)はかえってマイナスとなることも分かっています。研究はまさにイノベーションなので、アメとムチではなく「自分がやりたいからやる」ことが必要です。そこで、新しい重点領域研究では、従来のTop-down型の指定研究者だけでなく、bottom-up型として公募研究者を選びました。

異分野の融合
(Convergence science):

最近、Nature, Cell, Scienceなどのトップジャーナルに掲載された17,000論文を分析した研究が発表されました。分かったことの1つに、トップ論文の多くが、異分野が融合した研究成果であることがあります。また米国の特許は16万種にコード分類されています。19世紀の特許はほぼ100%単一コードに紐づけられていましたが、現在の特許は88%が複数コードに紐づけられています。これからもイノベーションの創出には異分野の融合が重要であることが示されます。そこで、重点研究領域では、指定研究者も公募研究者も異分野の研究者からなるように選んでいます。
是非、重点領域の中、あるいは重点領域間で共創して、医科歯科大発のイノベーションを創り出していただければと思います。

理事・副学長(研究・改革担当) 古川 哲史

古川 哲史

理事・副学長(研究・改革担当)