RD希少疾患・難病 RD
[Rare Disease]

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RD [Rare Disease]

“希少疾患”は一般に、人口1万人につき5人未満が発症する疾患と定義される。その中核をなす「単一遺伝子変異に起因する単一遺伝子病」は、ゲノム解析技術の進歩によって顕著に増加しているため、希少疾患の種類も6,000〜7,000以上と多い。欧州では全人口の12人に1人が罹患するとされており、総患者数は決して希少ではない。また、単一遺伝子病以外の希少疾患の発症には複数の因子が関与すると想定されるが、そのほとんどは未だ原因が不明または病態が未解明であるため治療法が確立しておらず、長期の療養が必要である。従って、希少疾患全体が、既存の治療法では治癒や制御が困難な“難病”に該当するといえよう。なお、既に重大な社会問題化している認知症のように、患者数は多くても難病に該当する疾患も例外的に存在する。
本学附属病院には、従前より「希少疾患先端医療センター」が設置され、幅広い専門領域をカバーした希少疾患・難病の診断拠点として活動するだけでなく、先端的治療を展開している。また、学術面では「難治疾患研究所」や「医歯学総合研究科」を中心として活発な研究活動が行われており、免疫異常症や神経変性疾患、炎症性腸疾患、顎顔面成長・発育異常症など、医歯学領域における希少疾患・難病の基礎〜臨床研究において多数の業績を積み上げている。そして、これまでの研究を通して希少疾患・難病の原因や病態には幅広い疾患の治療につながる“鍵”が潜んでいることを学んできた。例えば、SNPsなどの遺伝的素因に食事や嗜好品などの環境要因が加わり、ウイルス感染などの炎症刺激が契機となって生じた免疫恒常性の破綻は、免疫異常症だけでなくがんや生活習慣病の発症・進展にも関与している。そこで、本研究領域では、希少疾患・難病に潜む“鍵”を見出すために、臨床検体や各種病態モデルを対象として先端的な技術を駆使した多元的な解析を試み、研究成果を疾患の予測や先制医療、新たな治療モダリティの開発につなげることをめざす。

稀少疾患・難病領域長 東條 有伸

領域長

東條 有伸

理事・副学長(連携・データサイエンス・教員人事担当)

副領域長

森尾 友宏

大学院医歯学総合研究科 発生発達病態学分野 教授

PUBLICLY OFFERED RESEARCH PROJECTS

RD-1

免疫異常症および関連領域

免疫は感染症だけでなく、がんやアレルギー、近年では認知症にまで深く関与していることが明らかとなってきています。本RD-1では、ゲノム、トランスクリブトーム、細胞の観点から免疫を繙くことにより、ヒトにみられる病気の症状の多様性とそれに対する治療法について研究していきます。

RD-2

神経疾患および関連領域

希少性神経疾患あるいはアルツハイマー病などの神経難病を対象に、独自に開発したヘテロ核酸技術によって創製した核酸医薬、あるいは、AI・スパコンを駆使した分子ネットワーク解析から開発した治療薬を用いて、認知症と神経難病の新しい治療・予防を創出します。

RD-3

循環器(⼼臓・⾎管・腎臓)および関連領域

循環器領域の病態生理解明においては、遺伝的要因と環境・生活習慣などの後天的要因を統合して評価することが重要です。RD-3では、遺伝子改変動物や後天的病態モデルを用いた病態解明を推進し、その知見を臨床に応用してバイオマーカーの開発や新規治療法の開発に展開するほか、医工連携を用いた新規診断法の開発を目指します。

RD-4

顎顔⾯構造機能異常症

頭蓋顎顔面先天異常ならびに眼・耳・鼻など感覚器の希少疾患・難病を対象として、表現型・ゲノム・モデル動物の解析をメディカルデータサイエンスとして統合して病態基盤を解明し、発症予測、診断、治療法、疾患進行予測、治療薬開発、予防などへの応用を目指します。