RD希少疾患・難病 RD
[Rare Disease]

RD-1

風邪をひくと症状が軽い人と重い人が居るように、ヒトの病態には個人差があります。本領域では、ヒトの病状の違いが何故起こるのかについて免疫学の観点から研究し、その治療法を開発することを目的としています。この免疫学は従来、体内に侵入してきた病原体から体の守るシステムでありながら、一方でアレルギーやがんにも深く関わっています。そして、この免疫系は多種多様な細胞から構成されていて、個人によってその細胞の割合は違っています。また、各々の細胞にはゲノムやトランスクリプトがあり、これにも個人差があります。すなわち、ヒトの病気の多様性はその細胞、ゲノム、トランスクリプトの各々の多様性と深く関連しています。これらのそれぞれの個性を繙くことにより、ヒトの病状の個人差が分かり、また治療法の確立へと繋がります。

RESEARCH MEMBERS

RD-1

森尾 友宏

大学院医歯学総合研究科 発生発達病態学分野 教授

RD-1

佐藤 荘

大学院医歯学総合研究科 免疫学分野 教授

RD-1

高地 雄太

難治疾患研究所 ゲノム機能多様性分野 教授

PUBLICLY OFFERED RESEARCH PROJECTS

新規腫瘍疾患特異的マクロファージと腫瘍微小環境の包括的理解

國吉 佳奈子

大学院医歯学総合研究科 免疫学分野 プロジェクト助教

悪性腫瘍は世界的に高齢化が進む現代において罹患数、死亡数がともに増加し続けている疾患の一つである。医療の発達で罹患後の生存率が伸びている一方で身体的精神的負担を軽減したより良い治療法を開発することが重要な課題となっている。本研究では腫瘍細胞と免疫細胞、非免疫細胞系を含む腫瘍微小環境のクロストークに焦点を当て、腫瘍の発症から悪化する過程で変化する腫瘍内浸潤細胞や腫瘍微小環境の間で起こる様々な現象や細胞間相互作用の詳細を明らかにし、包括的に腫瘍疾患を理解することを目的としている。

好塩基球を標的とした急性呼吸窮迫症候群(ARDS)新規治療戦略の創出

三宅 健介

高等研究院 炎症・感染・免疫研究室 特任助教

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)はCOVID-19をはじめとする肺炎や敗血症などが誘因なって発症する重篤な急性肺炎症です。重度の呼吸不全をひきおこし予後不良の病態であるにもかかわらず、生存率の改善に寄与できる確立した薬物療法は存在せず、病態解明に基づく新規治療法の開発が切望されています。私たちは、マウスモデルを用いた研究から希少な血球細胞である好塩基球がARDSの炎症抑制に重要な役割を果たすことを突き止めました。本班は、最新技術である高感度1細胞RNAシーケンス解析を用いて、好塩基球による肺炎症抑制機構を解明し、好塩基球を標的としたARDS治療へと繋げることを目的として研究を行います。

抗原提示機構に関するデータサイエンスと免疫学の協奏研究

清水 秀幸

M&Dデータ科学センター AI システム医科学分野 教授

抗原提示機構は非常に精緻なシステムであり、多くの研究者の積み重ねによって膨大な知見やデータが蓄積しています。一方でデータサイエンス、特に人工知能は理論や技術とも急速に発展しています。本研究課題ではこれらを融合させた次世代の免疫疾患研究に向けた基盤研究を行います。つまり抗原提示細胞が持つ MHC class I とペプチドの親和性や複合体の安定度、そして TCR 刺激度合いを既存の大規模リソースから学習した AI を構築し、自己免疫疾患の理解や効率的なワクチン設計原理の発見、腫瘍新生抗原と免疫療法など医歯学上の重要研究の足がかりとすることを目指します。

自己免疫学的機序に基づく皮膚線維化疾患におけるB細胞・形質細胞の機能解析

遠藤 香凜

大学院医歯学総合研究科 皮膚科学分野 特任研究員

全身性強皮症(SSc)は線維化による血管障害・皮膚硬化を特徴とする膠原病の一つです。SScの多くの症例では疾患特異的自己抗体が検出されていることから、自己免疫反応が疾患の発症と進展に関与していることが推測され研究が行われています。しかし、病因は明確になっておらず進行性の線維化を抑制する治療法は限られており新規治療法の開発が求められています。本研究では、自己免疫反応から線維化が誘導される移植片対宿主病モデルマウスを用いて、SScの病期毎でのB細胞と形質細胞の動態および疾患病態形成への関与について明らかにし、B細胞と形質細胞除去の最適化を図る基礎的知見を得ることを目的としています。