システム研究部門 | 第2回 もっと手軽に身体の状態を知ろう! 新時代のスマートセンサ

糖尿病の患者さんなど、自分の体内の数値を常に知っておく必要のある人は意外と多くいます。
しかしながら、治療法の進歩と比較して、数値の計測方法の改善は今ひとつというのが実情。自らの身体状態を知ることなのにそれはおかしくないか、と「計測屋」魂に火がついた研究、その成果はいかに?


三林 浩二教授
お話をしてくれた先生 計測分野 三林 浩二 教授
東京大学大学院先端学際工学専攻博士課程を修了。工学博士。
東海大学工学部助教授を経て、2003年より現職。

先生のご研究の代表的なものは「柔らかいセンサ」と伺いましたが、なぜ柔らかいセンサが必要なのでしょうか。
人体の状態を計測するために使えるものは限られていて、代表的なものが血液とか、排泄物とか、唾液です。それらは、採取するのが面倒ですね。
ちょっと話がそれますが、コンビニで検診キットを売っているのを知っていますか?
血を採って送ると結果が返ってくるというものです。
検診は継続的にやってもらって、経過を見ることが大切です。しかし、ただ「やってください」では無理な話で、もっと手軽に身体の状態を知ることができる方法を提示してあげるべきなのです。コンビニで売っている検診キットもその一例なのですが、それでもやはり血を採取する必要がある。私は元々「計測屋」なので、更に手軽にならないか、と考えています。
ほとんどの人は検査は面倒でも仕方がないとハナからあきらめてしまっていますから。
そこで、私が注目したのが目だったのですが、目に入れるセンサが硬い金属でできていたら、入れるのイヤじゃないですか?そこで、柔らかい素材のセンサを作ろうということで研究しました。
柔らかいセンサ
これが、センサですか?
作り方は意外と簡単で、電極を素材で挟んでパウチするだけです。
しかし、これを目に入れたら目が見えないのではないでしょうか。
透明電極というのがあるから大丈夫です。
ほとんどコンタクトレンズと同じ感じになりますね。
そうです。では、「これを目の中に入れておいて何が計れるのか」ということですが、糖尿病の方は、いつも血糖値を計る必要があるのをご存知ですか?
知っています。糖尿病の方と会ったときに数値を計っている姿を目にしたことがあります。プチッと血を採って、計測器でチェックしていますね。
実は、涙の糖分濃度と血糖値は相関関係にあるので、涙を計れば血糖値がある程度分かるのです。
目の中にコンタクト型センサをいれておけば、あのプチッと採血は要らなくなるのですか?
完全に要らなくなるとはいきませんが、継続モニタリングにはその方が適しているでしょうね。
目で計った数値はどうやって確認するのですか?
「人体通信」を使えば、コードレスの受信機に常に数値を表示できます。人体をケーブルや無線の代わりにして情報を送るのです。人体の表面に電界を発生させ、受信機側でそれを磁界に変換することでデータの受け渡しをします。肌に密着していなくても、シャツの上くらいなら十分送受信が可能です。
人体図
旅行が好きな方は旅行先でもいつもあの採血をやっているのかと思うと、ちょっと気の毒でした。これがあればいつでも気になった時に計測器をチェックするだけでいいのですね。
実用化はまだまだ時間がかかりそうですが、これが私たちの目指す場所と時間を選ばない生体計測、つまり「ユビキタスバイオモニタリング」の一例なのです。
実現する日が楽しみですね。
多くの方々の生活が、より快適になることと思います。

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