素材研究部門 |第1回 骨折時の治療期間が半分に!? エネルギーを蓄えた人工骨の魔法

骨折時の不便、経験のある人なら誰でも「あれは大変だった!」と口をそろえるはずです。
人工骨を埋め込む必要のある患者さんなら、そんな「一日でも早く元通りにしたい」という願いは一層切実です。
その願いを現実のモノとしてくれるのがエネルギーを蓄えた人工骨です。今回はその仕組みについてお話を訊きました。


山下仁大 教授
お話をしてくれた先生 無機材料分野 山下 仁大 教授
東京大学大学院を修了。工学博士。
東京都立大学工学部助教授を経て、1999年より現職。

2年ほど前に骨折したのですが、ちょうど踵の骨だったので、絶対に歩いてはいけませんと言われて、ギブスをしていた1ヶ月間はほとんど外出もできず、大変な思いをしました。
あの苦労が1日でも短くなるならそんなに嬉しいことはないと思いますが、先生が研究・開発された人工骨は普通の2倍のスピードで骨がくっつくそうですね。それはどうしてですか?
はい。では人工骨の素材のお話からしましょう。
今、最も一般的に使われている素材はリン酸カルシウム、いわゆるアパタイトと言われているもので、人体にもっとも影響が少なく、自分の骨とくっつきやすいといわれています。
私たちはそのアパタイトにイオン分極を発生させて、電荷を長期間起こし続ける方法を見つけたのです。
イオン分極というのは、アパタイトが電池のようにエネルギーを蓄えていると思ってください。
何だかいかにもいい働きをしてくれそうなイメージが湧きますが。
はい。そのエネルギー入りアパタイトを「エレクトロベクトルセラミックス」と名付けたのですが、その素材でできた人工骨を使うと、通常は自分の骨からしか増殖してこない細胞が、人工骨の方からも増殖する効果があることがわかったのです。
双方から歩み寄るので倍のスピードでくっつくというわけです。
人口骨
それから他には、人工関節にもこの研究成果を応用できないかと更に研究を進めているのです。
通常、人工関節は金属製で、それを骨に埋め込むのですが、この「エレクトロベクトルセラミックス」を表面に塗ってあげると早く骨にくっつくというわけです。
他にも人口歯根(インプラント)にこれを塗ると、従来は難しいといわれていた上あごにも使えると期待されています。
それは朗報ですね。ケガや病気をすると、何でもない日常生活を送れることがどれだけ幸福なことかがよく分かります。先生のご研究は一日でも早く日常生活を取り戻す手助けをする研究ということになりますね。
人口関節
あとは光触媒を使って色素を分解し、従来の酸を使用した方法よりもずっと歯を痛めないで白くする方法なども研究しています。
年齢を重ねると肌だけじゃなくて歯もくすんできますから機会があれば試してみたいです!!
簡単に言うと、これまでのものは化学薬品で“なめして”使っていました。新しい方法は、ブタの組織からブタの細胞を洗い流すのです。そこに患者さんの細胞を組み込んでから移植することで、免疫拒絶反応も抑えることができます。
薬品の力を借りずに本当にお肉の部分だけ借りて、後は自分仕様にアレンジしてから移植するということですね。そう言われると急に抵抗感がなくなりますね!
残念ながらまだアメリカでしか実用化されていないのです。
日本でも実用化されるといいですね!

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