システム研究部門 | 第3回 次世代の心臓開発に心血を注ぐ! 命をつなげる人工心臓

心臓は、臓器の中で重要な部分のひとつであり、生命を維持する上で最も命に関わる部分。
日々血液を体中に送り続けるためには、故障などは絶対に許されないものであります。
最先端の人工心臓の研究とは、いったいどのようなものでしょうか。


高谷 節雄 教授
お話をしてくれた先生 計測分野 高谷 節雄 教授
米国クリーブランド市Case Western Reserve大学大学院博士課程修了 PhD。
東京医科歯科大学医学博士。クリーブランドクリニックフェロー、国立循環器病センター研究室長、米国ヒューストン市ベーラー医科大学准教授、山形大学教授を経て、1999年から現職。

先生の机には多数の人工心臓が並んでいますが、小さいものから、大きなものまでありますね。
赤ちゃんのものから成人のものまであります。私の研究テーマは、循環系の人工臓器の基礎と応用研究です。システムとして無駄なく動くため、材料、エネルギーの問題、加工をどうするかというものも研究しています。
心臓だけではなく、関係するパーツの研究もされているということですね。
そうですね。全体のシステムとして機能しないといけません。ここにある小児用、幼児用の人工心臓などは体重が3kg~20kgくらいに対応します。大人の場合は血液の量が多いので、体重1kgあたり80ccくらいなので、あなたの場合は4リッターくらいです。幼児用は心臓を大きくできないので小型化をしないといけません。
手作りで作ってらっしゃるのですか?
CAD/CAMで設計まで担当します。体重に合った心臓を作ります。
テストなどはどうするのですか?
豚とか牛で実験を行います。輸血による感染や炎症の問題などもありますから
確かに、直接人間で実験する訳にはいきませんよね…
そうですね。また、15歳以下は臓器移植は日本ではできないのです。その場合、海外ということになるのですが、海外に行くまでの間、補助という意味で採用されています。心臓移植の実績は日本は少なくて、過去8年間で45例ほどしかありません。アメリカは約2000件の実績がありますから、遅れているのです。日本は過去和田心臓移植でマスコミが叩いてしまった歴史がありますから、なかなか法律的にも前に進んでいかないといえます。
なるほど。日本では、年間5例しかないということですね。人工心臓にいろんな種類があるのですか?
体外式のものがあって、99年に東洋紡と一緒に開発したものです。ですが、外へ出ると感染の問題がありますから、病院から出れないのです。本当は家にいて生活ができると良いのですが。ドナーが出るまで3年から4年くらい、病院内で待つような形です。
心臓というのは休みなく働く臓器なので、大変ですよね・・・
一日に10万回、1年間に4000万回、休みなく働いてくれているということです。長期間耐えるものを作るといのは当然のごとく、必須条件といえます。
そうですね。先生にとって理想の心臓とは、どんなものですか?
完全に心臓を取ってしまい、人工的な置換型の心臓です。そして、「モーター駆動の埋め込み式」にするというものが究極の目的です。
それはすごいですね!
そうですね。一番の問題は「熱」です。電気で動く訳ですから、熱で血液が凝固してしまうということです。そして、「感染」の問題もあります。外敵、菌が入らないように処理すること。そして、機械なのでやはり壊れてしまわないようにということで、「耐久性」の問題も考えなくてはいけませんね。
血が固まってしまうとは、ちょっと怖いです…
あと、一方向に回転することで弁の動作がなく、完全に「脈がない」状態で動く人工心臓もあります。1970年代中ごろですが、牛の心臓での実験では、血圧が一定の状態で牛が34日間生きたのです。
世界最小磁気浮上補助人工心臓世界最小磁気浮上補助人工心臓
すごいですね!脈がないのですか…
そうです。構造的にコンパクトにできるのが一番のメリットです。スクリューで毎分5リッターの血液を流すことができます。拍動はありません。
なんかラジコンのモーターのような感覚ですね
これに似たもので実際に、2000年6月からイギリスのフェアフィールドというところなのですが、もう7年生きています。最初は皆信じなかったのですが、これは事実です。バッテリーは後頭部から外に繋ぎます。後頭部は皮膚が動かないので最適なんです。音もなく静かな仕組みなので、夜静かに眠ることもでき、かつ電力も少なくて画期的といえます。退院してちゃんと社会復帰してるんですよ。
仕事をしているとは!
日本でも長野県諏訪市のサンメディカルという会社で開発した人工心臓で、1995年から2005年の10年間で開発されたものがあり、東京女子医大で2人、大阪循環器センターで1人、埼玉医科大学で4人、大阪大学で4人、埋め込み式のもので、ちょうど6カ月間ちゃんと問題なく動いたということで、厚生労働省が認可を出しています。最初で埋め込んだ方2名は、日本で開発された埋め込み式のもので、初めて退院し、仕事に復帰するという見事な結果を残しています。
さすが、日本も頑張っていますね。
あと、写真の人工心臓は、東工大と共同で開発したもので、平成18年4月24日に、日本経済新聞でも掲載されましたが、世界最小の磁気浮上遠心型のもので、摩擦による熱、つまり血栓の問題がないものもあります。非接触なので駆動部分が浮いているんです。摩擦熱が発生しないのですごいですよ。
リニアモーターカーみたい!人工心臓がここまで進んでいるとは驚きです。私、心臓移植を受けなければならなくなった場合は、すぐ先生の所へ駆け込みます!(笑)

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