研究の紹介学部学生さんへ

2024年度プロジェクトセメスター

「蛍光色素変換を用いた腸炎惹起性メモリーT細胞再循環機構の解析」

消化器病態学/腸管免疫イメージンググループ

担当学生:山中唯花さん
指導者:根本泰宏

炎症性腸疾患は寛解と再燃を繰り返すために生涯にわたる維持療法を必要とする難治性疾患です。当グループはこれまでの研究により、疾患記憶を保有し、寛解期においてもリンパ節などのリザーバー臓器で生涯にわたって維持される病原性メモリーT細胞が炎症性腸疾患難治性の原因であることを明らかにしました。

この病原性メモリーT細胞は腸管に留まるのみではなく、腸管→リンパ節あるいはリンパ節→腸管へ”trafficking”していることが知られており、本機構は炎症性腸疾患難治性の要因であると考えられています。

今回のプロジェクトセメスターでは博士課程、修士課程の大学院生チームに参加し、これまで主にtrafficking解析に使用されてきた、ラベリングされた免疫細胞の局所投与に比して、より生理的で、定量性に優れ、網羅的な解析が可能な“蛍光色素変換システム”を用いて、炎症性腸疾患モデルマウスにおける病原性メモリーT細胞traffickingの可視化、定量化を行いました。さらに研究が進めばメモリーT細胞traffickingを標的とした、炎症性腸疾患の新規治療法開発に繋がることが期待されます。

感想

今回のプロジェクトセメスターを通して、初めて研究に携わらせていただきました。知識もほぼ無く、実験器具の使い方も分からない状態でのスタートでしたが、先生や大学院生の方が一から優しく教えてくださり、大変勉強になりました。期間中、マウスの手術を見学させていただいたり、実際に手を動かしてマウスの腸や脾臓、リンパ節の細胞を採取したりする機会があり、非常に貴重な経験をすることができました。朝から始めて夕方に終わるような時間のかかる実験をしたり、失敗を乗り越えながら何度も繰り返し実験をしたりする姿を目の当たりにし、研究の大変さを身をもって感じると同時に、その過程も研究の魅力の一つなのではないかと思いました。

また、研究以外の部分では、大学院生の方から色々なお話を聞くことができ、将来のイメージがより具体的になりました。

短い間ではありましたが、有意義な時間を送ることができました。ありがとうございました。

「iPS細胞由来複合型腸組織における間質解析」

消化器病態学/腸管オルガノイド応用グループ

担当学生:和田有加さん
指導者:水谷知裕 加藤周

近年、多能性幹細胞から段階的な分化誘導による腸オルガノイドの作成が報告され、腸管の三次元的構造および特異的機能を保持することから、疾患の病態解明やドナーの不足する移植医療のリソースとして期待されています。現行の腸オルガノイドは腸上皮への分化誘導が主体ですが、分化の過程で発生した中胚葉が、上皮との相互作用によって間葉系細胞へと発達し、上皮および間葉系細胞を有する腸組織の再現モデルとして期待されています。そこで、我々のグループでは、内胚葉由来の後腸上皮細胞オルガノイドと中胚葉由来の間葉系細胞オルガノイドを用いた、安定した腸組織構築に取り組んできました。

そこで今回のプロジェクトセメスターでは、この腸組織が組織として成熟しているかの解析に取り組んでもらいました。和田さんは、研究開始から積極的に実験に取り組みました。特に、免疫染色やqPCRといった解析手技は、グループでもトップの腕前と言っても良いほど成長されました。取り組んでいただいた研究成果は、今後の再生技術の発展につながる重要な知見が得られたと期待しています。

感想

研究に携わるのは初めてで高度な研究内容を学ぶことには不安がありましたが、先生方には基本手技や研究分野の背景から丁寧に教えていただき、理解を深めながら研究を進めることができました。研究を行う段階に至るまでにも習得すべき技術や知識が多くあり、時間をかけてそれらを体得したことで、研鑽を積む大切さを感じたように思います。最先端の研究に身を置く先生方と関わり、研究のリアルな過程について集中的に学んだ半年間は、非常に貴重な経験となりました。ありがとうございました。