研究の紹介学部学生さんへ

2021年度卒業研究(保健衛生学科・検査技術学専攻)

「ヒトiPS細胞由来肝細胞を利用した肝臓病の病態研究」

疾患生理機能解析学分野 及び 消化器病態学/肝臓グループ

担当学生:4年生 板倉さん、神前さん
指導者:柿沼 晴、新田沙由梨、三好正人

ヒトiPS細胞は多能性幹細胞として、ほぼ全ての臓器の細胞系譜に分化誘導が可能であり、肝細胞系譜への誘導法もこれまでに確立されてきました。ヒトiPS細胞由来肝細胞には、様々な遺伝的な背景をもった細胞を利用して研究できる、あるいは分化段階を調節して研究できるなどの利点もありますが、胎児肝細胞の形質を残すなど、いくつかの欠点もあります。当研究室ではこの細胞を利用して、肝臓の病気の仕組みを解明する研究や、より便利な細胞を作成する試みを行っています。

2021年の卒業研究として、当研究室では2名の学生に研究を進めて頂きました。板倉さんは、ヒトiPS細胞由来肝細胞の成熟化に有利な条件をみつけるために、候補化合物を添加し、その効果を確認する研究を行いました。神前さんは、ヒトiPS細胞にゲノム編集技術を用いて、肝細胞癌にみられるゲノム異常を作り出し、その細胞を肝臓細胞にするとどうなるか、について研究を進めました。それぞれ、今後の研究の進展に役立つ結果が得られ、卒業研究発表会でその成果を発表しました。

感想

卒業研究として、短い期間でありながらもiPS細胞の培養や肝細胞誘導、Real-time PCRなどの技術的なことを多く学び、臨床的に応用できる可能性を持つ研究に携わることができ、とても貴重な経験をいただけたと感じました。常に進歩し続けている医学において、この研究での経験を糧にして、私もまた学ぶ心を忘れずに医療に携わっていきたいと思います。(板倉)

細胞培養やRT-PCR等初めての手技が多く、慣れるまで時間がかかりましたが研究室の先生方の御指導のおかげで様々なことを学ぶことができました。今回の卒業研究ではiPS細胞に特定の癌関連遺伝子を組み込むことで、種々の遺伝子の発現量が変化することがわかりました。大学院へ進学したら、さらに実際の肝癌に近いiPS細胞のモデルを構築して研究を深めたいです。(神前)