ご家族の方へ

家族のためのハンドブック

作業療法の特長

ケネディー・クリーガー研究所
マリー・ラシュノ 公認作業療法士(2008年改定)

Mary Lashno, OTR/L - Kennedy Krieger Institute

安定性の向上

A-Tの子供の多くは腕、体、頭の動きの制御に問題を抱えています。細かい作業を行おうとするとそれを邪魔するように体が余計な動きをしてしまい、それを抑えることが患者にとっては大きな負担となります。それゆえ腕、体、頭を安定させることは大きな意味を持ちます。A-Tの子供は日常の行為を行うことに一生懸命です。知恵を絞り、自分のできる代償的なパターンを探りながら日常生活を過ごします。こうした生活上の技術は非常に機能的であり、次第に意識しなくても自由に行えるようになり有効です。例えば脇を締め、肘をテーブルに乗せて安定させ、胴体を使って腕を支持します (物を取るときは肘をテーブルに付けたままスライドさせます)。ところが最初は有効であっても、段々と問題になるケースがあります。例えば腕を伸ばす(肩と肘に力がはいるので震えがひどくなり、肩が疲れてきて動きの制御ができなくなります)、指先を型で固定して動かす (指関節を固定することで、手が異常な形で固定されてしまい手や手首の骨格が変形する恐れがあります)などです。異常な代償動作を見つけたときはご家族および療法士は、その行動パターンが癖になる前に、なるべく早い時期に止めさせ,代わりに機能的なパターンを習慣化するよう促さなくてはなりません。

最適な座位支援法(シーティングシステム)とは

腕、体、頭を安定させる座位支援法(シーティングシステム)は、子供の動作を楽にし、日常生活を支援します。シーティングシステムは多種あり、入手の際はこの分野の経験が豊富なリハビリスタッフのアドバイスを参考にしてください。例えばしっかりした座面と背もたれ、両脇の支え、また胸を支えるベスト、様々なヘッドレスト、腕を安定して乗せられるラップトレイなどが選択できます。家の中での車椅子の使用が難しい場合、家族が快適なシーティングシステムを用意してあげてください。リフトン社 (Rifton) の製品はよく利用されています。シーティングシステムは複数の部品で構成され、うまく腕と体を安定させてくれます。小さなお子さんには、テーブルの高さに合わせラレルハイ・チェアやブースター・シートが良いかもしれません。まだ椅子に座れなかったり、お子さんの体が大きい場合は、お子さんの体と頭部を支える椅子を用いることが重要です。足は床にしっかり付くか、あるいは足を支える台があるものが良いでしょう。テーブルやトレイが付いていると、そこに腕を乗せることができます。側面からの支持には毛布やタオルによる調節で安定性が増します。シーティングシステムはお子さんが安心して手による細かな作業をサポートするためのものであることを念頭に置くことが重要です。つまりいつも座りっぱなしにするのではなく、必要なときに使うことが大切です。経験則としてはっきり言えることは、体、頭部、腕をしっかり安定させることにより余計な動きが抑えられ、疲労を軽減できるということです。

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