ジョンズ・ホプキンス病院 小児アレルギーおよび免疫部門
小児科・内科・病理学分野教授 ハワード M. レダーマン 医師・医学博士(2000年)
Howard M. Lederman, M.D., Ph.D., Professor of Pediatrics, Medicine and Pathology
Division of Pediatric Allergy and Immunology, Johns Hopkins Hospital
体位ドレナージ (胸部理学療法) とはお子さんの肺気道から分泌物を除去するための、医師による指示に基づいて行う手技です。気管支ドレナージ(排痰)についての以下の情報はメリーランド州ベテスダにある嚢胞性線維症財団 (Cystic Fibrosis Foundation)から提供を受けたもので、同財団の許可を経て掲載しています。
気管支ドレナージ(排痰)は重力を利用し体を動かすことで分泌物 (痰など) を移動させ、分泌物が詰まって閉塞している気道を開放する措置です。胸部へのこの理学療法により、分泌物が蓄積されて起きる胸部の疾患を予防し、また治療することができます。
以下のことが原因で呼吸器官に問題を抱える患者さんに有効です。
・分泌物が多く
・分泌物が粘稠で、ねばねばしていて
・分泌物を上手に除去できず、さらに
・咳をうまくできない
・あるいは以上のうち複数が該当する
予防面から以下の方にも有効です。
・分泌物が多いか、あるいは分泌物が粘稠な傾向がある。加えて/あるいは
・呼吸筋が虚弱な人
胸部への理学療法で気道の内壁から分泌物を除去するための手技が行われます。具体的には以下を行います。体を動かし重力により、肺の区域からより太い気管支に分泌物を移動させる。手をお椀のような形にして胸を叩く。揺する。深呼吸をさせる。咳を促す。
叩く場合、分泌物がたまっている部位の上部にあたる胸を、手をお椀のような形にして叩きます。叩く場合は同時に体を揺することで、気管の内壁に粘着している分泌物が動きやすいようにします。手は指を密着させお椀状にして空気を入れ、叩いても胸壁が傷つかないようにします。叩くときは勢いよく、しかし痛くないように気をつけ服の上から叩きます。措置する人は事前に指輪を外してください。理学療法士または専門のトレーニングを受けた人が措置してください。
振動を与えることもまた分泌物の移動を助けます。施術者はしっかりと手を患者の胸部に当て、自分の上腕と肩にテンションを張るように固定します (等尺性収縮)。揺するときには手はお椀状にする必要はなく、普通の平たい状態にします。患者は“フゥ フゥ フゥ”または“スゥ スゥ スゥ(歯擦音)”と声を出しながら息を吐きます。息はできるだけゆっくりと長く吐きます。市販のバイブレーターがあり、利用することも可能です。
深呼吸は分泌物の移動にも咳を促すことにも効果があります。うまく咳ができることは、気道の清浄にとって大切なことです。しっかりとしかし、緊張せずに、力を込めて息を吐き出し、それに続いて深く息を吸い込むと、分泌物を動かし自然な咳を促します。また胸部の下部側面を支えると緊張が和らぎ、スムーズに咳が出やすくなります。
嘔吐の危険性を最小に抑えるために、気管支ドレナージ(排痰)は食前か、食事の一時間から一時間半後に行うのがよいでしょう。早朝や就寝前がお薦めの時間帯です。気管支ドレナージ(排痰)により就寝前に溜まった分泌物を気道から除去すれば、就寝中の咳を抑えることができます。
うまくできるようになれば、気管支ドレナージ(排痰)は日に少なくても2回行ってください。急性の呼吸器疾患などで必要な場合は、気管支ドレナージ(排痰)をさらに回数を増やして行ってください。予防が目的の場合は、一日1回から2回行ってください。