ご家族の方へ

家族のためのハンドブック

肺の病気

ジョンズ・ホプキンス病院
シャーロン A. マクグレースモロー 医師(2009年)

Sharon A. McGrath-Morrow, MD, Johns Hopkins Hospital

A-Tの子供および大人が呼吸器に何らかの問題を生じるリスクは低くありません。肺疾患になると体動時あるいは休息時の、頻繁な咳、荒い息、鼻詰まり、速い呼吸、息切れや、体重増加不良などの症状がみられます。

肺病の原因と呼吸器症状

1. 感染および免疫不全

免疫系に問題のある人は、平均的な人と比べて副鼻腔や肺の感染症になる可能性が高く、症状も重い傾向にあります。副鼻腔と肺の両者に罹患することがあり、両者ともに咳を伴います。副鼻腔炎になると色のついた鼻水、後鼻漏 (鼻汁が喉の方へ落ちること)、咳、鼻詰まりなどの症状が出ます。気管支炎や肺炎は、気管支と肺での呼吸器感染症です。気管支炎や肺炎を繰り返すと気道に恒久的なダメージを与え、その結果気管支拡張症と呼ばれる症状になります。気管支拡張症になると、慢性的に気道が細菌感染に犯されやすく、肺の機能喪失が進行します。

2. 呼吸筋の協調性障害

A-Tは呼吸筋の協調障害を生じ、その結果咳がうまくできずまた呼吸が浅くなります。特にインフルエンザや肺炎など呼吸器系疾患にかかった場合も、深く呼吸ができず、気道の分泌物排出ができません。気道分泌物排出困難の症状は何歳から出現してもおかしくありませんが、特に10歳を過ぎるとその傾向は強くなります。

3. 嚥下障害と誤嚥性肺炎

誤嚥とは食べ物や飲み物、唾液などが本来食道に行くところ、誤って気道に入ることを言います。誤嚥は肺を痛め、肺炎の反復を招きます。A-T患者は食べ物を飲み込むことがうまくできずに誤嚥をしがちで、その結果誤嚥性肺炎のリスクが高まります。誤嚥は慢性的な場合も断続的な場合もあります。また呼吸器感染症や胃食道逆流症 (酸の逆流) の場合、さらに悪化する傾向にあります。普通、誤嚥をすると咳が出るのですが、A-T患者の場合、咳をしないことが多いので、医師も誤嚥に気付かないことがあります(“飲食について”の章を参照してください)。

4. 間質性肺炎

一部のA-T患者には間質性肺炎 (ILD) を発症する人もいます。症状は呼吸困難、痰を伴わない乾性咳嗽で、肺や副鼻腔の感染症は伴いません。間質性肺炎になった肺は線維化して、酸素の運搬が難しくなります。原因は明らかではありませんが、免疫機能異常に関係するかもしれないと考えられています。間質性肺炎を発症したA-T患者には経口ステロイドが有効かもしれないとの研究が報告されています。

5. その他の呼吸器系の疾患について

A-Tであることとは関連性がありませんが、A-T患者は子供も大人も他の呼吸器系疾患になる可能性があります。喘息は普通の人でもよくある病気で、断続的にあるいは恒常的に咳が出て、ゼーゼーと喘鳴がします。喘息の治療にはステロイドの吸引や、気道を広げ肺から粘液を排出する機能のある気管支拡張薬を使います。喘息は環境に影響されやすく、症状が誘発されます。例えばタバコの煙や空気の汚れ、また天候の突然の変化、激しい運動、呼吸器感染症などが原因となります。喘息であるA-T患者が呼吸器感染症になると、病状はさらに悪化します。

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