「食道がんオルガノイドで解明する化学療法抵抗性メカニズム」【樗木俊聡 教授】
東京科学大学(Science Tokyo)総合研究院 難治疾患研究所の樗木俊聡教授と佐藤卓元准教授(現・日本医科大学教授)らの研究チームは、本学 消化管外科学分野および包括病理学分野、慶應大学、都立駒込病院との共同研究により、40症例の食道がん(ESCC)患者から、ESCCオルガノイドライブラリーを樹立しました。このライブラリーには、7症例の化学療法剤抵抗性オルガノイド株が含まれており、それらが抗酸化ストレス応答の亢進を示すことを明らかにしました。食道がんは食道粘膜に発生するがんであり、最も予後不良ながんの一つです(世界で罹患率7位、死亡率6位)。また、日本人の食道がんのほとんどは食道扁平上皮がん(ESCC)に分類されます。近年、外科的切除、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療により、ESCC患者の死亡率は改善しているものの、しばしば治療抵抗性ESCCクローンの増殖による再発が起こります。しかし、再発したESCCに対して有効な治療法は確立されていません。これらの課題を克服するため、本研究では、多症例のESCC患者から、患者ごとのESCCの性状の違いを再現可能な「ESCCオルガノイドライブラリー」を樹立しました。このライブラリーには、化学療法感受性のものが17症例、抵抗性のものが7症例含まれています。詳細な解析の結果、前述の通り化学療法抵抗性機構の一端が解明され、化学療法抵抗性ESCCの診断に有用なバイオマーカー[用語5]や、有望な治療薬候補の発見につながりました。本成果は、4月1日(ロンドン時間午前10時)に「Communications Biology」誌へオンライン掲載されました。
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