「副腎細胞が“脂肪細胞に変わる”仕組みを解明」【柳井翔吾 特別研究員、佐々木純子 教授(キャリアアップ)】
東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 難治疾患研究所 病態生理化学分野の柳井翔吾 日本学術振興会特別研究員(PD)、佐々木純子教授(キャリアアップ)、佐々木雄彦教授らの研究チームは、副腎皮質細胞が脂肪細胞様に分化転換する現象を、シグナル伝達リン脂質 PI(3,4,5)P3の蓄積が誘導することを明らかにしました。副腎はストレス応答の主要なエフェクター臓器であり、通常は成熟脂肪細胞を含みませんが、まれに副腎脂肪腫が認められ、その成因は不明でした。
本研究では、副腎皮質で PI(3,4,5)P3 を分解する酵素 PTEN/SHIP2 を同時に欠損させたマウスを作製し、PI(3,4,5)P3 の蓄積がAKT経路の持続活性化と転写因子 PPARγの異所性発現を介して、副腎皮質 X-zoneの細胞を脂肪細胞様に転換させることを実証しました。これにより、副腎に本来存在しない脂肪組織が出現する分子機構を動物モデルで再現し、内因性リン脂質シグナルが細胞運命を非遺伝的に制御することを示しました。
さらに、この知見は、ストレス応答や老化と内分泌代謝の接点に位置する副腎を標的とした、脂質シグナル制御に基づく介入の可能性を示唆します。
本成果は、9月9日付(米国東部時間)の米国科学アカデミー紀要「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載されました。
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