「CRISPR-Cas3による新たなin vivoゲノム編集技術を開発」【高地雄太 教授】
東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 難治疾患研究所 高地雄太教授、同 生体材料工学研究所 山口健介特任助教は東京大学 医科学研究所先進動物ゲノム研究分野の真下知士教授、石田紗恵子助教、北海道大学 大学院薬学研究院の佐藤悠介准教授、信州大学 医学部の関島良樹教授、名古屋大学 糖鎖生命コア研究所・大学院理学研究科の阿部洋教授、理化学研究所らの研究グループと共同で、国産ゲノム編集技術 CRISPR-Cas3を生体内で応用する新たな手法の開発に成功しました(特許出願済み)。
本手法は、CRISPR-Cas3システムをメッセンジャーRNA(mRNA)として脂質ナノ粒子(LNP)(mRNA-LNP)、に搭載し、体内に投与することで標的臓器の遺伝子をゲノム編集する技術です。今回の研究では、肝臓に特異的に送達されるLNPを用いることで、肝臓遺伝子の効率的なゲノム編集に初めて成功しました。今回標的としたトランスサイレチン(TTR)遺伝子は、肝臓で産生されるトランスサイレチンタンパク質(TTR)が変性してアミロイドとして蓄積し、心臓や神経に障害をもたらす難治性疾患トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)の原因遺伝子です。TTRの産生抑制による治療効果が明らかになっていますが、既存治療は長期間の継続投薬を要する点が課題です。本研究では、CRISPR-Cas3を搭載したLNPを投与することで、マウス肝臓のTTR遺伝子を生体内で直接ノックアウト(破壊)しました。その結果、一度の投与で、継続して血中TTR量が約80%減少し、心臓組織におけるTTR沈着および、それに伴う異物除去細胞であるマクロファージの浸潤が明らかに抑制されました。これらの成果は、CRISPR-Cas3を用いた新しいin vivo遺伝子治療法の実現可能性を示すものであり、ATTRのみならず他の遺伝性疾患への応用にもつながることが期待されます。
本研究成果は、2026年1月5日(英国時間)付で、英国科学誌「Nature Biotechnology」のオンライン版で公開されました。
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