「鉄が肝臓を傷つける—新たな細胞死フェロトーシスの正体とは」【諸石寿朗 教授】
東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 難治疾患研究所の諸石寿朗教授、熊本大学 消化器外科学講座の松本嵩史医員(研究当時、現パリ・サクレー大学 研究員)らの研究チームは、肝臓に過剰に蓄積した鉄が細胞死を誘導し、肝疾患の進行や手術後の回復遅延につながる仕組みを、動物実験および患者データの解析によって解明しました。
本研究では、細胞の鉄調節に重要な役割を果たす遺伝子FBXL5[用語1]を欠損させたマウスを用い、鉄の過剰蓄積とフェロトーシスとの関連を明らかにしました。さらに、フェロトーシスの誘導時に肝臓で活性化される100個の遺伝子群を「iFerroptosis」として特定し、これを肝疾患の評価指標として活用する可能性を提示しました。
これらの成果は、フェロトーシスが肝疾患において果たす役割を再定義するとともに、術後予後の予測や新たな治療戦略(フェロトーシス抑制薬の開発など)への道を拓くものです。
本成果は、東京科学大学 制がんストラテジー研究室、熊本大学 消化器外科講座、熊本大学消化器内科講座、京都大学 がん免疫総合研究センターとの共同研究によって行われ、5月29日付で「Hepatology Communications」誌に掲載されました。
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