「スポーツ×医学×歯学」プロから愛好家までサポート

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東京医科歯科大学病院では、全てのスポーツを愛する人々が健康で安全に生涯を通じて楽しめるように、医学と歯学の両面からサポートしています。

突発性難聴と高気圧酸素治療

当院の高気圧酸素治療部で突発性難聴の治療を受けたプロサッカー選手が、ご自身のツイッターで治療の様子を呟いてくれました。そこで突発性難聴に対する高気圧酸素治療に関して、東京医科歯科大学スポーツ医学診療センター長の柳下和慶教授と、耳鼻咽喉科の堤剛教授にインタビューしました。

突発性難聴で高気圧酸素治療を行うことはどんなきっかけで、いつ頃から始まったのでしょうか?どんな効果があるのでしょうか?

柳下和慶先生 突発性難聴の原因が循環不全とも考えられており、高気圧酸素治療は循環不全全般に広く適応になっていることから、突発性難聴に適応されています。
突発性難聴に対する高気圧酸素治療の歴史は新しいものではなく、1900年代後半には始まっていました。

どんな症状の突発性難聴の患者さんに対して、高気圧酸素治療が行われるのでしょうか?

柳下和慶先生 高気圧酸素治療は、突発性難聴の発症早期から適応になります。ただステロイドなど他の治療で十分な効果を得られなかった患者さんも多く来られます。発症から1か月以上経過してから高気圧酸素治療を行っても、効果を得られる可能性は低いと考えられています。

片耳の聴力をほぼ失った状態からの回復というのは、珍しいことでしょうか?
どのような要素が「ほぼ完治」まで導くことができた要因と考えられますか?

柳下和慶先生 耳鼻科の先生のご意見も伺いたいところですが、聴力をほぼ失った状態からの回復は、比較的稀と考えます。
今回、発症1週間後から高気圧酸素治療を開始しましたが、比較的早期から高気圧酸素治療を開始したことが、良好な結果につながった一つの要因かもしれません

  • 耳鼻咽喉科 堤剛教授のコメント

    プロサッカー選手のツイッターを拝見すると発症後の聴力レベルは4分法で80dBですのでかなり高度の難聴です。一般には突発性難聴は治癒が1/3、部分回復が1/3とされており、発症時の難聴が高度であるほど治癒率も悪いことから、この聴力からの完全回復は珍しいと言ってよいと思います。
    治療については早期のステロイドがゴールドスタンダードですが、それでもエビデンスは確立されていません。他の治療法が確立していない現状を踏まえて推奨グレードはC1とされています。高気圧酸素療法についても、エビデンスは確立されておらずoptionとしての選択になり、推奨グレードはC1とされています。
    治癒に導いた要因としては、早期のステロイドと高気圧酸素治療、それになんといっても患者さんの「若さ」と「健康さ」があるのではないかと思います。

その他、プロスポーツ選手で高気圧酸素治療を受けるケースとして多い疾患や症状はどんなものがあるでしょうか?

柳下和慶先生 打撲、肉離れ、靱帯損傷など、軟部組織損傷に対して多く行われています。

読売巨人軍の宮崎キャンプに帯同ドクターとして参加しました

当院整形外科・スポーツドクターの大関信武医師が読売巨人軍の宮崎キャンプに帯同ドクターとして参加したときの様子をインタビューしました。

この写真はいつどこで撮影されましたか?

大関医師 2月25日の撮影です。
キャンプ自体は2月頭~末までの約1ヶ月、宮崎と沖縄で行っていますが、私が帯同したのは2月14日~16日(宮崎キャンプ、2,3軍+故障者対応)、2月23日~25日(沖縄キャンプ、1軍)です。写真の場所はセルラースタジアムで、この日は楽天と練習試合を行いました。

帯同ドクターというと、保健室みたいなところに待機しているか、白衣に医療器具が入ったバッグを抱えるイメージが強いのですが…

大関医師 ご期待に沿えずすみません。今回の帯同で私が持参した医療関係のものはありません。超音波診断装置をスポーツ現場ではよく使用しますが、キャンプには球団が持参してくれます。野球場に白衣は合わないですし、時に自分も身体を動かすなど、動きやすい服装をして観察しています。

かなり厳重なマスクをしているようですが?

大関医師 N95マスクです。万全のコロナ対策で臨もうと思い、大学病院のものを持っていきました。

帯同中はどこでどんな活動をしますか?どんなことに注意してキャンプの練習等を見ていますか?

大関医師 練習や試合にはすべて帯同しますが、特に痛みを訴えている選手の様子を観察しています。その選手が普段の動き・プレーができているかをチェックして、練習後ホテルのトレーナー室で診察をして、その状態について選手・トレーナーと話し合います。この日の試合ではピッチャーライナーを受けた投手がいて退場したので、その対応を行いました。

まもなく開幕戦を迎えますね?

大関医師 選手たちがけがや病気にならずに元気な状態で開幕戦を迎え、ファンの皆さんに素晴らしいプレーを披露してもらえるように、スポーツドクターとして貢献したいと思います。