女性化乳房
担当医師 | 植村法子 |
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外来日 | 木曜日 |
女性化乳房とは、男性において、乳腺の増殖により乳房が肥大した状態のことをいいます。原因としては、生理的なもの、薬剤性、続発性、特発性などがあり、乳腺組織でのエストロゲンとアンドロゲンのアンバランスが病態とされています。海外の報告では、有病率は約3割と多く、日本でのデータはありませんが、お困りの男性も多いと思います。症状としては、胸部の痛み、外見に対する精神的な苦痛などがあります。
当院では、女性化乳房の患者さんが受診したときは、まず採血とMRI検査を行います。これは、他の疾患で生じる続発性女性化乳房の鑑別、胸部に生じる悪性腫瘍との鑑別をする為です。これらの検査で異常が見つかった場合は、それに対する治療を優先します。特に異常がない場合は、特発性女性化乳房と考え、手術を検討します。他に、思春期などの生理的なもの、薬剤性の場合は、経過観察の後に手術を検討します。
手術は、外見の改善を目的に行います。単に硬い部分を切除するだけでは、陥凹が残ってしまいます。当院では、乳腺だけではなく、まわりの脂肪を適量切除することで、なるべく自然な胸部の形になるような手術を行っています。
皮膚の下の乳腺と脂肪を切除する為には、胸部のどこかを切開する必要があります。一般的には、乳輪縁下半分を切開することが多いです。しかし、乳輪周囲に傷跡ができると恥ずかしいと思われる方もいらっしゃいます。そこで当院では、乳輪縁、胸の外側、腋窩の近くなど、患者さんと相談し、切開の場所を決めています。
当院では、入院、全身麻酔下に手術を行っています。ほとんどの方は保険適応ですが、単に脂肪のみで胸が膨らんでいる方の場合は、自費になります。入院期間は4-7日です。
治療の一般的な流れは以下の通りです。(患者さんによって異なる場合があります)
初診を含め2-3回の外来診察をし、検査、手術日を決定します。
手術の前日に入院し、病棟の説明と麻酔科医師の診察を受けます。
手術は全身麻酔で行います。手術時間は片側のみで約1時間、両側で2-3時間です。
手術後は胸帯で圧迫します。手術日はベッドの上で安静です。
手術翌日から歩いたり、胸から下のシャワーを浴びたりできます。腕をあまり動かさないようにしてください。
手術後数日でドレーン(皮下に血がたまらないように吸引する管)が抜けます。ドレーンが抜けたら退院です。
手術後1週間程度で、外来で抜糸を行います。
手術後少なくとも2週間は、胸帯を装着し、胸部の安静を心がけます。スポーツや重いものを持つ仕事などは避けてください。
手術後1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月の時点で、外来診察を行います。手術部位が腫れたり、多少の凸凹が生じる事がありますが、通常3ヵ月程度で落ち着きます。
手術後3ヵ月を過ぎても、軽度の突出や陥凹が残ってしまう場合があります。ほとんどの患者さんは気にされません。もしも気になる場合は、追加切除や脂肪注入などで、凸凹を修正することも可能です。
手術後は、Tシャツが着られるようになった、社員旅行で温泉に行けるようになったなど、明るい声を多く聞きます。女性化乳房で悩まれている方、他院で手術したけれど、改善しない/変形が残ってしまった方など、お困りの方はご相談ください。
画像は、患者さんの承諾が得られたものを一部加工しています。