耳介
担当医 | 加藤小百合、植村法子 |
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外来日 | 水曜日、木曜日 |
耳介はもともと複雑な形をしているので、様々な程度の変形がおこります。当科では、生まれつきの変形の患者さんや、けがや病気で変形してしまった患者さんの治療をしています。いろいろな変形の場合がありますので、患者さんごとに状態を確認して、最適な治療を考えていきます。
小耳症
「小耳症」とは、生まれつき耳の一部あるいは全部がない状態のことです。様々な形の患者さんがいます。小耳症の患者さんは、外見と聴力、眼鏡等がかけられないことが問題となります。聴力は、ほとんどの患者さんで反対側が正常なので、普段の生活で問題になることは少ないようです。外見に関しては手術で、健常の耳に近い形にすることができます。眼鏡等もかけられるようになります。
小耳症では、耳の形を作る軟骨が不足しているので、別の軟骨を使って耳の形を作る必要があります。この手術には大きく分けて、2つの方法(永田法に準じた方法、エキスパンダー法)がありますが、どちらの方法も2回以上の手術が必要になります。手術では、患者さん本人の胸からとった肋軟骨を細工して皮膚の下に埋め込みますが、もとの耳が小さい分、皮膚が足りないため、それを補う必要があります。
永田法に準じた方法では、1回目の手術で、肋軟骨で作った耳を皮膚の下に埋め込み、平らな耳の形を作ります。2回目の手術で耳を立ち上げ、皮膚が足りない部分へ、他の部分から皮膚を移植します。エキスパンダー法では、1回目の手術で皮膚を膨らませる風船状の装置(エキスパンダー)を皮膚の下に入れます。風船を徐々に膨らませ、2回目の手術で、肋軟骨で作った耳を膨らんだ皮膚の下に入れて、立体的な耳の形を作ります。どちらの手術方法も、良い点と大変な点があるため、患者さんやご家族と相談して方法を決めることにしています。
手術は、体がある程度成長して(胸囲60cm以上が目安です)、肋軟骨がまだ柔らかい10歳前後の間に行うことが望ましいです。1~2週間の入院で、全身麻酔が必要になります。成人の方でも、手術方法の工夫で治療できますので、ご相談ください。当院では、小児科や耳鼻咽喉科と連携し、成長に伴う変化を確認しながら、患者さんやご家族と治療方法を相談していきます。
エキスパンダー法による小耳症手術の例
小耳症:耳垂が一部だけある状態です
エキスパンダー拡張時:皮下にエキスパンダーを入れて十分に膨らませた状態です
採取した肋軟骨:細工して耳介軟骨に似た形を作ります
肋軟骨で作ったフレームワーク:これを拡張した皮膚の下に入れます
術後1年:反対側に似た形の耳介になりました
埋没耳
「埋没耳」とは、生まれつき耳の上方が皮膚にめりこんでいる状態のことです。眼鏡やマスクをかけるのに支障をきたします。1歳未満の患者さんは、テーピングや装具で矯正できる場合があります。装具は患者さんの状態に合わせて作成し、定期的に診察をして、形を変えていきます。装具で効果がない場合や、幼児期以降の患者さんは手術による治療を行うことになります。手術は、耳の周りの皮膚をやりくりして、うまく耳の形が出るようにします。患者さんの状態に合わせて、最適な手術方法を考えていきます。
皮弁法による埋没耳修正術
術前:耳の上方がめり込んでいて、眼鏡がかけられない状態です
術直後:通常の形になりました、この後皮膚の色が落ち着いていきます
立ち耳、カップ耳、折れ耳
いずれも生まれつきの変形で、「立ち耳」は正面から大きく耳が見える状態、「カップ耳」は耳の外側がカップ状にすぼまっている状態、「折れ耳」は耳の上方が折れ曲がっている状態です。外見的に気になったり、眼鏡等がかけられないなどの支障がある場合は、治療の対象となります。1歳未満の患者さんは、テーピングや装具で矯正できる場合があります。装具は患者さんの状態に合わせて作成し、定期的に診察をして、形を変えていきます。装具で効果がない場合や、幼児期以降の患者さんは手術による治療を行うことになります。変形の状態は患者ごとに異なりますので、最適の治療法を考えていきます。