「同じ手術をするなら、小さい創の方がいい」という患者さまの思いは、当然のことです。私たちは、皆さまのこの思いに応えてゆきたいと考えています。
現在当科では、できるかぎり創を小さくして、手術による身体への負担を軽減する、低侵襲手術のなかでも、さらに創を極限まで小さくして負担を軽減する、単孔(たんこう)式腹腔鏡下手術を推進していこうと考えています。原則的に臍(へそ)の創ひとつだけで手術を行いますので、手術後もこのように、臍の創はほとんど目立ちません。
腹腔鏡下胆嚢摘出術の創
(通常の場合)単孔式腹腔鏡での創
単孔式手術での実際の創
よく見ないと臍の創がわかりません。
Q.ところで、単孔式手術とは?
単孔式とは、字のごとく、ひとつの孔を腹部に開けて行う手術の方法です。通常は臍(へそ)部を2-3cm程度切開して、手術用具を挿入しやすくするポートとよばれる器具を装着します。原則として、このポートひとつだけ用いて手術を行います。肝臓や膵臓の手術の際には、より複雑な操作が要求されますが、体に傷が残るポートを増やしません。
そこで、当科のオリジナルテクニック その1 「ドラムスティック法」を紹介します。細い医療用ワイヤーを腹部に刺して、体内でその先端にクッション状の器具を接続して太鼓のばち状の器具を用意します、これを2本両手で操作して自由自在に臓器を押さえたり、持ち上げたりすることができるので、「ドラムスティック法」と呼称しています。


Q.胆嚢や脾臓の手術でも、単孔式手術が可能ですか?
胆嚢(のう)や脾臓摘出術は通常、腹腔鏡を用いた手術が一般的です。しかし、手術器具を挿入するために、3から4箇所のポート挿入が必要となります。通常、5mmから 10mm程度の創であるため、手術後にさほど目立ちません。しかし、創が少ない方がいいと、皆さんが思われるのは、当然のことだと考えます。
「同じ手術をするなら、小さい創の方がいい」という思いに、当科では真剣にこだわっていきたいと考えています。単孔式手術では、ひとつのポートで胆嚢(のう)や脾臓を切除したうえ、そのひとつの孔から胆嚢(のう)や脾臓を取り出すことができます。脾臓は充実した大きな臓器のため、腹腔内でバックに入れて破砕して、小さくして、このひとつの孔より摘出します。胆嚢(のう)や脾臓摘出術は単孔式手術の長所が最も生かせる手術なのです。


Q.切り取った大きな臓器では、新しく創を作って取り出すの?
肝臓切除術など切除した臓器(肝臓など)が大きければ大きいほど、取り出すため創が大きくなってしまします。せっかくひとつのポート、単孔式で手術するのだからこそ、当科では単孔に、そして小さな手術創にこだわっていこうと考えています。そこで、当科のオリジナルテクニック その2 「バッグ イン バッグ」法の登場です。切除した臓器を腹腔内で袋詰めにして裁断して、小さくしてから小袋に分けて腹腔外に摘出するというアイデアで、臓器摘出のための大きなキズを無くす究極の方法です。
臍から袋を入れて、切除した臓器を袋詰めにします。
臍の中で、大きな切除臓器を小さく裁断、小袋に詰めます。
臍から小袋に入った小さな臓器片を取り出すことができます。