教授挨拶・治療科

 

放射線治療科 教授 吉村亮一

学は自得するを貴ぶ。(「言志後録138」より)
社長

 都内には多くの大学医学部、大学病院そしてセンター病院があり、いずれでも最先端の研究が行われ、最新の医療機器が整備され、高度な医療が提供されています。放射線治療の分野も同様で、さらに1時間もかけずに隣の県に行けば、重粒子線治療や陽子線治療といった特殊な治療設備を有した施設もあります。
 東京医科歯科大学そして附属病院は、‘お茶の水’、‘湯島’というどこに行くにも便利、その上、学術文化の聖地として落ち着いたロケーションにあり、私たち腫瘍放射線治療学分野そして放射線治療科は、この地において放射線腫瘍学そして放射線治療に関する教育、研究、診療の3つの業務を司っています。
 しかしながら、私自身は教育も研究も診療も、それぞれがそれほど得意というわけではありません。
 私は放射線治療に関して、本学以外に国立がん研究センター、昭和大学と場を変えて学んできました。親身な指導を受けたというわけではなく、そこには個性的な先輩、優秀な同期、元気な後輩がいて刺激的で、何よりも人間味溢れる放射線治療部門の長たちが魅力的で、勝手に師と仰いで技術や考え方、仕草を見習ってきました。東京は学べる場が沢山あります。ですから、どこに籍を置いていても、そこに留まっている必要はないし、ここで学んだことを違う場で発揮しても良いし、他で学んだことをここに持ち帰って実践しても良いでしょう。
 研究に関して、現在、当分野でできる研究の幅はまだまだ狭く、深さは心の持ちように依存しています。日常の臨床を少し良くしようとする研究から、医療を変えてしまうかもしれないほどの研究まで、それを一人で、チームで、多施設で、いろいろなパターンで実践できる可能性があります。ここに今ある場を活用しても、ここに新たに作っても、あるいは場を外に求めても、それは研究の内容と目指す結果と心意気次第だと思います。
 放射線治療はあらゆるがん患者に対する特殊な治療方法でありながら一般的でなければなりません。ですから、診療においては医師だけでなく、治療の質に直接関わる医学物理士を含めた診療放射線技師、そして心と体のケアを担う看護師との3師のチームプレーが必須です。病院の近くに住んでいる患者さんや都内に通勤している患者さんが安心して受けられ、我々が行っている特殊な治療を遠方からも躊躇なく相談してもらえるような体制と力と気持ちが大事になってきます。

 東京医科歯科大学の腫瘍放射線治療学分野そして放射線治療科は、一人一人が放射線治療への想いを持って集まれる場であり続けましょう。

                          吉村亮一