微生物や腫瘍などに対する生体防御に免疫細胞は死活的に重要であり、また生体機能の維持や、再生・炎症においても免疫応答は重要な役割を果たしています。
免疫細胞治療の有効性も明らかになってきました。造血細胞移植後のGVHDに対しては、間葉系幹細胞が用いられるようになっており、難治性白血病に対しては、キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T療法)が実臨床で用いられるようになっています。
免疫細胞治療ユニットでは、本学の充実した基礎医学研究室と連携して、基礎研究を臨床の場で応用し、臨床試験、診療に結びつけています。私たちが特に力を注いでいるのは、微生物を標的とした画期的な効果を示す免疫細胞治療の開発です。生体内に宿る生体防御機構を最大限に呼び起こし、機能を強化し、付与し、新しい免疫能を創生します。
宿主の免疫は、オルガノイドの生着・再生にも大きな役割を果たします。創生医学においては、臓器が生体内に生着し、機能することが重要で、その過程には免疫細胞が深く関与します。このユニットでは、生着や拒絶の制御といった側面で、創生医学領域全体を支援する研究も進めます。
大学院医歯学総合研究科
発生発達病態学分野
教授 森尾 友宏
造血細胞移植後には免疫学的再構築までの間、免疫不全状態となり、アデノウイルス、BKウイルス、EBウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型など様々なウイルス感染症に罹患する。有効な治療がなく、重症化する症例も多いことから、私たちはこれらの5ウイルスに対する複数特異的T細胞を2週間以内に調製できる方法を用い、培養をより安全なものとして、臨床試験を開始しています。
AMED再生医療実用化研究事業「造血細胞移植後難治性感染症に対する複数ウイルス特異的T細胞療法の臨床研究」(研究代表者:森尾友宏)
http://www.tmd.ac.jp/med/ped/medical/research/life_theme.html#02
NK細胞は自然免疫細胞として、がん細胞や感染細胞を排除する機能を有しており、その抗腫瘍効果は多くの基礎・臨床研究で示されていますが、その細胞増殖が困難なことなどから、腫瘍に対するNK細胞を用いた自然免疫細胞療法はまだ確立されていません。私たちは現在のCAR-T療法及びNK細胞療法、双方の限界を克服した新たながん免疫細胞療法を確立することを目的で研究を進めています。