東京医科歯科大学小児科

東京医科歯科大学小児科は、日常的な小児医療から難病の治療まで、
患者様の立場に立った優しい医療を行っています。

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小児科研究実績

研究テーマの概説

説明文内の()内数字は、はじめにの図の各番号に相当します


  1. 原発性免疫不全症に関する研究(2,3,4,5,8)

    原発性免疫不全症候群(PID)は、免疫系のいずれかの部分に欠陥がある疾患の総称ですが、1万人に1人以上の発症頻度であり、決して稀な疾患ではありません。障害される免疫担当細胞などの種類や部位により300近くの疾患に分類され、300以上の責任遺伝が同定されています。共通した症状は易感染性で、疾患によりそれぞれ違う種類の微生物に脆弱性を示しますが、自己免疫疾患、炎症性疾患、腫瘍性疾患が前面にたつ疾患もあります。重症なタイプでは早期に骨髄や臍帯血による造血幹細胞移植を必要としますが、当教室では免疫不全症に対しては日本で最も多い移植を実施しています。

    これらの背景のもと、私たちはPIDの原因遺伝子の同定、ヒト免疫系における役割の解析、病態の解析、早期診断法、根治療法の開発を行っています。

    1) 遺伝子検索
    特に抗体産生不全症を来すPIDや、免疫細胞分化異常症、好中球機能異常症、EBV関連リンパ増殖症の病態を解析し、国際共同研究ならびに新規遺伝子の同定を行っています。また分化異常では東京大学医科学研究所、理化学研究所統合生命医科学研究所と連携して、疾患特異的iPS細胞を用いたり、knock in, knock outマウスを作成したりして、multi-omicsを駆使した解析を実施しています。

    遺伝子検索

    2) 多次元的病態解明 (2)
    先天性免疫不全の患者さんの早期発見を目的とし、新生児マススクリーニングへの実現へと向けて、KREC/TRECによる先天性免疫不全症スクリーニング法開発と病態解析への応用を試みています。
    ○近年の主な成果
    1: 無ガンマグロブリン血症責任分子BTKの好中球での新規機能を発見しました Nature Immunology 2012, 26;13(4):369-78
    2: PTEN遺伝子変異による新しい免疫不全症について報告しました JACI, 2016, 138(6):1672-1680.e10
    3: TNFAIP3変異による自己免疫性リンパ増殖症候群を発見しました JACI, 2016 S0091-6749(16)31286-6
    4: IKZF1変異による自己免疫疾患を伴う無ガンマグロブリン血症を発見しました JACI, 2016, S0091-6749(16)31273-8
    5: 染色体に組み込まれたHHV6の再活性化とその機序について報告しました Clin Infect Dis. 2014 Aug 15;59(4):545-8

    3) 治療法の開発 (4,8)
    免疫不全状態の日和見感染症に対する、より効果的な、汎用性の高い治療法の開発を目的とし、オーバーラッピングペプチドを用いた多ウイルス特異的T細胞の調製を行い、多種類のウイルス特異的に障害性をもつT細胞を誘導、投与することにより感染症を効果的に治療する方法(UMIN000024634)を開発しています。 また、毛細血管拡張性運動失調症(AT)に対する遺伝子治療法の開発を行っています。 マウスの脳に正常なATM分子をトランスポゾン型ベクターを用いて導入することを試みています。

    治療法の開発

    4) 新生児スクリーニング法の応用研究 (3)
    PIDの患者さんの早期発見を目的とし、新生児マススクリーニングへの実現へと向けて、TREC/ KRECによるPIDスクリーニング法の開発と病態解析への応用を行っています。H28年度には、当院出生児に対する新生児スクリーニング検査を開始し、500例を越える健常児からの正常値データの作成を行いました。

    新生児スクリーニング法

    主な研究費
    基盤研究(C)
    「原発性免疫不全症における腸内細菌叢解析と分子病態解析」2017年
    (代表 金兼 弘和)
    「ゲノム薬理学的解析とプロテオーム解析を用いた薬剤性中枢神経障害の病態解明」2017年
    (代表 柳町 昌克)
    基盤研究(B)
    「IKZFファミリー分子によるリンパ球分化制御とその破綻による病態に関する研究」2018年
    (代表 森尾 友宏)
    基盤研究(C)
    「抗体産生不全症原因遺伝子同定によるヒト抗体産生機構の解明」2018年
    (代表 今井 耕輔)
    AMED臨床研究・治験推進研究事業
    原発性免疫不全症レジストリ(Primary Immunodeficiency Database in Japan)を活用した臨床研究・医師主導治験のコンセプト策定研究
    AMED 成育疾患克服等総合研究事業―BIRTHDAY
    核酸検出等の方法を用いた原発性免疫不全症等治療可能な新生児・小児期疾患に対する新生児マス・スクリーニング法の開発

  2. 再生医療研究
    再生医療を進めるうえで幹細胞やiPS細胞は安全なものでなくてはならず、これらの質を効果的により安価に検証する技術の開発を行っています。問題になるウイルスや細菌、造腫瘍性遺伝子などを迅速に同時検出できるシステムを用いることで、細胞の品質保証技術開発を目指しています。造腫瘍性関連では、低頻度の造腫瘍能獲得細胞、遺伝的不安定性獲得細胞を検出できるよう、600前後の造腫瘍性関連遺伝子を1000個に1個の細胞で変異があっても見つけられるような高い精度をもった技術を開発しています。
    再生医療研究

    主な獲得研究費

    ・JSPS基盤研究B(H30-H32)
    IKAROSファミリー分子によるリンパ球分化制御とその破綻により生じる病態

    ・JSPS萌芽的研究(H30-H31)
    広範囲作動抗原による複数HLA刺激システムの解明

    ・AMED再生医療実用化研究事業(H30-H32)
    造血細胞移植後難治性感染症に対する複数ウイルス特異的T細胞療法の臨床研究

    ・AMED再生医療臨床研究促進基盤整備事業(H30-H32)
    再生医療等臨床研究を支援する再生医療ナショナルコンソーシアムの実現

    ・AMED難治性疾患等実用化研究事業(H29-H31)
    稀少免疫疾患に対する新規高精度ゲノム編集手法を用いた治療技術開発に関する研究

    ・AMED IRUD拠点病院を中心とした希少未診断疾患に対する診断プログラムによる新規遺伝性疾患の病態の解明と治療法開発に関する研究(H29-H31)

  3. 腫瘍発生機構の研究 (1,7)

    小児がんの病態の解明と治療法の開発を視野に以下の研究を行っています。

    1) DNA損傷修復応答
    ・DNA損傷修復応答に関連する分子の異常を標的としたPARP阻害剤による小児がんの治療法を開発しています。

    DNA損傷修復応答
    ・ATMを異常が細胞分化に与える影響を解析しています。

    2) 腫瘍発生機構の研究
    乳児白血病の原因究明のためにオミックス解析を行っています。
    ・小児急性リンパ性白血病発症の遺伝的背景を探索する研究を行っています。
    ・RAS変異がリンパ球分化に与える影響の解析とRASを標的とした細胞制御法の開発を行っています。
    ・原発性免疫不全症関連の分子の異常と腫瘍発生の関連を研究しています。

    ○近年の主な成果
    6:リンパ芽球性リンパ腫の発症にTCF3-PBX1融合遺伝子がかかわっていることを明らかにしました。
    Hematologica. 2019 104:e35-e37
    7:神経芽腫においてDNA損傷応答機構のは破綻があり、PARP阻害剤の治療標的となることを明らかにしました。
    J Natl Cancer Inst. 2017 109(11) doi: 10.1093/jnci/djx062.

    主な獲得研究費
    日本医療研究開発機構委託研究費(難治性疾患実用化研究事業) (2017~2019)
    「RAS関連自己免疫性リンパ増殖症様疾患(RALD)治療法開発」(代表 高木 正稔)
    日本学術振興会 文部科学研究費 基盤研究(B) (2019~2021)
    「小児急性リンパ性白血病発症にかかわる遺伝学的背景の検討」(代表 高木 正稔)

    3) エンハンサーの核内配置制御と免疫不全症、発がんメカニズムの解明

    性分化の分子機構の解明
    B細胞、T細胞は獲得免疫の中心的役割を果たし、細胞系列特異的に作用する転写因子が核内の転写領域に配置転換されることで分化機構は制御されています。特に、T細胞系列決定に必須の転写因子BCL11bの配置転換に、エンハンサー上にある長鎖非コードRNA(lncRNA)ThymoDの転写が、ゲノムの配置転換に先行して生じ、エンハンサーの核膜抑制区分からの解放に必須であることを見出してきました(図)。ThymoDの転写停止は、マウスモデルにおいて複合型免疫不全症、T細胞系悪性腫瘍を発症します。このことから、原因不明の先天性免疫不全症を含む疾患群、癌のクローン形成過程に本機構の破たんが含まれる可能性があり、エンハンサー活性化の初期メカニズムの詳細を明らかにし、診断法、治療選択に展開するための研究を行っています。

    ○近年の主な成果
    8: Noncoding RNA transcription at enhancers and genome folding in cancer.
    がんにおけるエンハンサーの非コードRNA転写とゲノムの構造変化(review)
    Cancer Sci. 2019 110(8):2328-2336

    9: 非コードRNAの転写によりゲノムの配置転換が引き起こされT細胞への分化が決定される
    Cell. 2017 Sep 21; 171(1):103-119

    10: B細胞初期分化におけるDNAメチル化修飾、エンハンサーRNA、スーパーアンカーの役割
    PNAS. 2015 Oct 13; 112(41):12776-81

    主な獲得研究費
    日本学術振興会科学研究費助成事業
    若手研究
    「非コードRNA転写によるエンハンサー活性制御と免疫不全症、発がんメカニズムの解明」 2018~2020
    (代表 磯田 健志)

    公益財団法人 武田科学振興財団
    医学系研究助成(がん領域・基礎)
    「非コードRNA(ThymoD)の転写障害で生じたT細胞系腫瘍のスーパーエンハンサー活性化機構の解明」 2019年度
    (代表 磯田 健志)

    公益財団法人 持田記念医学薬学振興財団
    バイオ技術を基盤とするゲノム機能/病態解析に関する研究
    「非コードRNA-ThymoD転写による脱メチル化機構と相分離によるスーパーエンハンサーの核内局在変動の可視化」 2019年度
    (代表 磯田 健志)

  4. 先天性内分泌疾患の分子病態の解明 (9)
    4-1 性分化をモデルとした、細胞分化機構の解明と再生医療応用への試み
    性腺は原始性腺という雌雄同じ原基から、Y染色体上にあるSRY/Sryの有無によって、精巣、卵巣と二つの異なる臓器に分化します。性腺は性分化という同一の臓器から二つの異なる臓器がを発生するという点、また分化した性腺同士、即ち卵巣と精巣の間で転換分化を起こしうる可塑性を有しているという点において、ほかの臓器と異なる大変ユニークな臓器です。
    我々は性腺がもつこうした点に注目し、性分化、性腺発生をモデルに細胞がもつ普遍的な分化機構を解明することを目的に研究を行っています。
    また、性腺の分化異常はいわゆる性分化疾患の原因にもなります。性分化機構の解明は、再生医療を視野に入れた形で、性腺機能低下症あるいは性分化疾患の治療への応用が可能になると考えています。
    現在は卵巣顆粒膜細胞の発生分化における転写制御機構についてNr5A1のトランスジェニックマウスの作成や、トランスクリプトーム解析などを用いて解析を行っています(疾患モデル動物解析学 金井正美教授、成育医療研究センターシステム発生・再生医学研究部 高田修治部長との共同研究)
    性分化の分子機構の解明

    ○ 近年の主な成果
    11: 胎生期卵巣におけるNr5a1/Ad4BP/Sf1の転写抑制はNotch シグナルを介した卵巣発生の最適化に必要であることを報告しました
    J Cell Sci. 2019;132(8) doi: 10.1242/jcs.223768.
    12: 蛋白のシトルリン化を制御するPadi2がSOX9の制御を受けセルトリ細胞の胎生期発生において重要な役割を果たす可能性について報告しました Sci Rep. 2018 Sep 5;8(1):13263. doi: 10.1038/s41598-018-31376-8.

    主な獲得研究費
    日本学術振興会科学研究費助成事業
    基盤研究(C)
    「新規網羅的RNA解析技法を用いた性腺体細胞の転写分子制御機構の解明」2018年
    (代表 鹿島田 健一)

    4-2 先天性副腎過形成の分子機構の解明
    性分化疾患の一つである先天性副腎過形成は、コルチゾル合成酵素の欠損によって生じます。本学は国内随一の患者数を誇り、その臨床像と遺伝変異型などを行っています

    4-3 インスリン受容体異常症患者の病態解明
    我々はまた先天性のインスリン抵抗性を来す疾患である、インスリン受容体異常症患者の分子病態解明についても研究を始めています。希少な疾患でもあり、今後患者の集積とその遺伝型、さらには病態解明へと進めていく予定です。

    ○ 近年の主な成果
    13: INSR受容体異常症の新規変異の同定、および受容体発現機構の異常により重度のインスリン抵抗性を生じる可能性を示しました
    Pediatr Diabetes. 2017 Feb 9. doi: 10.1111/pedi.12508.
    14: INSR受容体異常症の複数の症例の解析からその臨床像を明らかにしました
    J Diabetes. 2019 Jan;11(1):46-54

    日本学術振興会科学研究費助成事業
    若手研究(B)
    「iPS細胞および網羅的遺伝子解析を用いた重症インスリン抵抗性症候群の病態解明」2018年
    (代表 高澤 啓)

  5. 肺動脈性肺高血圧症(PAH)の病態解明 (生体情報薬理学分野との共同研究)

    心臓は常に収縮・拡張を繰り返し物理的な力の影響下にあることが特徴的で、メカノセンシング機構が重要な臓器です。メカノセンシング機構が関与する病態として、圧負荷に対する心肥大、容量負荷に対する心拡大などが挙げられます。
    肺高血圧症では右心不全の重症度が予後を規定します。また重症化には右室負荷に対するメカノセンシング機構の関与が示唆されますが、これまでメカノセンシング機構の中核をなす心臓メカノセンサーが同定されていません。私たちは、難治疾患研究所と連携して、右室負荷に対するメカノセンサーとしてのpannexinの分子動態を解析し、右室リモデリング・右心不全への関与を明らかにし、新たな治療標的を確立することを目的とした研究を開始しました。
    また我々はデクスメデトミジン(DEX; 商品名 プレセデックス)の、NF-kB部分的阻害作用に注目し、ラットのモデルを用いた研究を行っています。

    日本学術振興会科学研究費助成事業 若手研究
    「肺高血圧症の病態におけるインスリン分泌促進ホルモン、その分解酵素の役割は?」2020年
    (代表 細川 奨)

  6. 間質系幹細胞を用いた脳室周囲白質損傷治療法の開発

    脳室周囲白質軟化症(Periventricular leukomalacia:PVL)は、側脳室周囲白質に炎症や虚血性壊死による多発性軟化病巣ができる疾患で、早産児の脳性麻痺の主な原因となります。これまで有効な治療法がなく、予防のために、適切な分娩管理、出生後の全身管理、薬物療法などが試みられてきました。近年、PVLに対して幹細胞を用いた再生医療が有効である可能性が報告され、臨床応用に向けて研究がすすめられています。

    我々は都立多摩総合病院、土浦協同病院、川口市立医療センターと共同で、新生児疾患への臍帯由来間葉系幹細胞治療の臨床応用に向けて、子宮内環境の変化による臍帯由来間葉系幹細胞の性質変化を検討する臨床研究を行っています。

    ○近年の主な成果
    15: Neuroprotective effects of human umbilical cord-derived mesenchymal stem cells on periventricular leukomalacia-like brain injury in neonatal rats.
    Morioka C, Komaki M, Taki A, Honda I, Yokoyama N, Iwasaki K, Iseki S, Morio T, Morita I. Inflamm Regen. 2017,37:1-10

  7. サイトカインストーム症候群に対する病態解析(10)

    サイトカインストーム症候群(cytokine storm syndrome:CSS)は、サイトカインリリース症候群とも呼ばれ、体全体に影響を与える、様々な炎症メディエーターが全身性に発現した状態と定義されています。CSSは血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic lymphohistiocytosis:HLH)と密接に関連しています。HLHは、リンパ球およびマクロファージの異常活性化と、これらの細胞由来の炎症性サイトカインの過剰産生を原因とした、発熱、肝脾腫、血球減少、肝機能障害、凝固異常などを臨床的特徴とする重篤かつ致死性の難治性病態です。HLHは、家族性血球貪食症候群を代表とする遺伝的素因によって引き起こされる原発性と、感染症やリウマチ性疾患、悪性腫瘍に続発する二次性に分類されます。我々は小児において頻度の高い感染症に関連したHLHおよび小児リウマチ性疾患に続発するHLHであるマクロファージ活性化症候群(Macrophage activation syndrome:MAS)に対して、臨床的解析および血清中のサイトカインプロファイル解析を中心とした免疫学的解析を行い、病態の解明、診断に有用なバイオマーカーの探索、新規治療法の開発に向けた研究を行っています。

    ○近年の主な成果
    16: MASに関連する研究
    MASの基礎疾患別のサイトカイン産生動態の異同について明らかにしました。
    Rheumatology 2020 in press.

    主な獲得研究費
    基盤研究(C)
    「マクロファージ活性化症候群の病態解明とIL-18を標的とした新規治療法の確立」 2018年
    (代表 清水 正樹)

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