対象疾患は各種先天性・後天性心疾患(川崎病、心筋症など)、不整脈の診断および治療、そのほかの各種重症小児疾患における心機能の評価とそれに基づく呼吸循環管理、肺高血圧・酸素化障害患者に対する吸入一酸化窒素吸入療法や学校心臓検診にも取り組んでいます。
2006年の心臓カテーテル検査症例は年間53例(左右短絡疾患18、川崎病13、根治手術後12、チアノーゼ性心疾患4、カテーテルインターベンション2、そのほか5)でした。心臓手術は、現在3名の医局教室員を派遣している榊原記念病院で13例、京都府立医科大学で1例施行しています。
臨床研究としては、先天性肺血流増多心疾患の術後肺高血圧の肺血管圧-流量関係による術前予後評価、致死性不整脈症例(VT、PSVT、QT延長症候群やBrugada症候群など)に対する体表面電位図、TWAによる再分極のばらつきの評価や加算平均心電図における微小電位測定などを用いた危険因子の解析、心臓カテーテルによる電気生理学的検査による予後評価とカテーテル焼灼術による治療法の開発を行っています。
基礎研究としては、肺循環、電気生理と心発生に関する研究を、学内生命研、生体材料工学研究所、難治疾患研究所および防衛医科大学校において実施しています。
肺循環は肺高血圧の機序解明に関するラットin vivo実験と、先天性心疾患患者血漿中の内因性NOS阻害物質と肺高血圧に関する臨床研究、電気生理は心室負荷と不整脈に関するマウスのin vivo実験と、致死性不整脈疾患の予後に関する臨床研究、心発生は発生段階における心室拡張機能の変化とCa2+ transientの関連に関するマウスin vivo実験を行い、実績を重ねています。
来年度はロンドンのDepartment of Anaesthetics, Pain Medicine and Intensive Care, Imperial College Londonへの教室員派遣により、留学先施設との共同研究を計画しています。
臨床では、川口市立医療センターおよび土浦協同病院周産期センターが主な活動拠点となっています。川口市立医療センターNICU(新生児集中治療施設)部門は、保険上届出病床数9床、growing care unitを含めて合計30床が稼働しております。スタッフは6名で常勤医4名(部長、副部長、医長)、特別研修医2名、日勤帯の応援医師1名であり、いずれも東京医科歯科大学と筑波大学から派遣されています。2006年のNICU入院患者数は221名で、このうち超低出生体重児・極低出生体重児は、それぞれ21名と62名でした。フォロー外来では、新生児集中治療施設を退院した子どもの学齢期までの支援、在宅医療児の医学的管理のほかSIDS(乳児突然死症候群)外来と母乳育児支援外来も行っています。
土浦協同病院周産期センターは茨城県内では最も古くから活動しており2005年8月には茨城県指定の総合周産期母子医療センターとなりました。新生児科は保険上の届出病床数9床、growing care unitを含めて合計34床が稼働しています。スタッフは6名で常勤医2名(部長、医長)、その他のローテーターはすべて東京医科歯科大学からとなっています。茨城県の南東部を中心に年間約300名が入院しており、極低出生体重児は70名に達します。
2005年から2006年にかけて、奥、山南、西田、森丘、滝が米国ハワイでの米国小児科学会のNRP(neonatal resuscitation program)のプロバイダーコース、インストラクターコースを受講し、インストラクターライセンスを取得しました。
研究面では、臨床的研究が主体となっています。川口市立医療センター新生児集中治療科は厚生労働省児童家庭局研究「アウトカムを指標としベンチマーク手法を用いた質の高いケアを提供する"周産期母子医療センターネットワーク"の構築に関する研究」分担研究「小児科医・一般産科医・助産師・看護師向けの新生児心肺蘇生法の研修プログラムの作成と研修システムの構築とその効果に関する研究」(分担研究者:田村正徳埼玉医大総合医療センター教授)に参加し、新生児蘇生プログラム(NRP)の普及に関する研究を行っています。
研究面では、先天性免疫不全症であるWiskott-Aldrich症候群に合併するIgA腎症の発症機序に関する研究を進めており、日本小児腎臓病臨床研究グループ(JSKDC)の多施設共同臨床試験である「頻回再発型小児ネフローゼ症候群を対象としたタクロリムス治療とシクロスポリン治療の多施設共同非盲検ランダム化比較試験(JSKDC06)」にも参加しています。また、順天堂大学腎臓内科 富野康日己教授、淺沼克彦助教の研究室およびUniversity of Miami, Miller School of Medicine, Division of Nephrology and Hypertension, Peter Mundel Laboratoryのご指導のもとで、腎臓糸球体上皮細胞(ポドサイト)の機能解明についての研究も行っています。