環境遺伝生態
3.比較(メタ)ゲノム解析による細菌進化と多様性の実験的・情報学的研究
・背景・目的 難培養性の細菌に関しては、細菌叢に含まれる細菌のゲノム混合物を直接読むというメタゲノム解析が現在、培養法、16S解析に次ぐ第三の方法として盛んに行われている。細菌の生息部位毎の菌種組成も様々であり、その遺伝子組成からも新たな発見があると考えられる。例えば、細菌によっては共生関係にある菌から遺伝子の取り込みを積極的に行い、その環境での生存戦略を図っていると考えられる菌も報告されている。 また、近年、食生活や人種の異なる個体間でのメタ比較解析も行われており、細菌叢との相関性が見出されている。個人の保有する細菌叢も多様性に富んでおり、法医学の分野において個人識別として有用との報告がある程、細菌叢から得られる情報量は計り知れない。 これらの膨大な情報量取得を可能にしたのが、従来のサンガー法に代わり導入された新型シーケンサーである。遺伝子の塩基配列解析の速度は加速度的に増し、さまざまな生物の比較ゲノム解析やメタ比較解析が進められている。ゲノム解析から得られる様々な遺伝情報は、現代の生命科学研究にとって必須のものとなっている。ゲノムに書き込まれた情報を、さまざまな臨床メタデータと照らし合わせながら解読することにより、実験室株のゲノム情報からは得ることの出来なかった新規の病原遺伝子の発見や性状を含めた生存戦略を解明することが可能となり、病態との関連性の解明につながる可能性が高いと考えている。
・方法・対象
臨床分離株のゲノム配列は、新型シーケンサーRoche 454 GS Junior、Illumina GA IIx, MiSeqによって、ゲノム配列の取得を行い、インフォマティクス解析にかけゲノム構造比較、遺伝子構成比較、一塩基多型(SNPs)解析、遺伝子領域・非遺伝子領域比較などの比較解析を行っている。
また、遺伝子発現解析の一つとして、単離株からRNAを抽出し、逆転写反応などを経て、Illumina GA IIx, MiSeqを用いたRNA-seqに供する。得られた配列データをマッピングしてから、正規化し、遺伝子発現のプロファイリングを行っている。さらに発現プロファイリングにおいて、発現に特徴のある遺伝子を選び、これを破壊した株を作製し、細胞毒性試験や実験動物を用いた生残への影響を調べることで、新規病原遺伝子としての機能を判明させようと試みている。
・現在対象としている疾患 溶レン菌感染症・歯周病・細菌性髄膜炎・腸内感染症など
作成中のため、詳細はお問い合わせください。(丸山)