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研究Research

研究

臨床と同様に研究分野も多岐にわたります。 急性、慢性の過敏性肺炎の病態解析や診断法の開発、間質性肺炎における肺線維化の病態解明を行なうと共に、肺線維症における発癌機序の解明、肺がんの予後マーカー探索、慢性閉塞性肺疾患モデルにおける炎症細胞の関与の検討、喘息の動物モデルを用いた病態解析などを行なっています。

各研究班の紹介

1.間質性肺炎班

間質性肺炎は、じん肺(石綿肺、珪肺)、膠原病肺、薬剤性肺炎、慢性過敏性肺炎などを含む包括的な病名であり、原因不明の場合は特発性間質性肺炎(IIPs)と診断されます。IIPsは厚生労働省の「特定疾患」に指定されています。その中の一つである特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)はIIPsの約半数以上を占めており慢性進行性の疾患で呼吸不全を来す疾患です。IIPsのなかで最も重要な疾患である特発性肺線維症(IPF)には有効な治療法が少なく、厚生労働省難治性疾患研究事業などにおいて全国規模の研究がすすめられています。当科でも臨床試験などに参加し、新しい治療法の開発に貢献することを目指しております。
 また、当科の特色として慢性過敏性肺炎の臨床経験が豊富であり、診断に必要な実験室レベルでの免疫学的検査法が準備されております。慢性過敏性肺炎は家のカビや鳥(鳩、インコ、羽毛製品など)が原因となるアレルギー性疾患で、いわゆる「原因のある」病気でありますが、IIPsと臨床像が類似しており専門的な知識と経験がないと正しく診断することができません。本来、間質性肺炎をみた場合十分な鑑別を行った上でIIPsと診断すべきですが、実際には通り一遍の問診と簡単な画像の読影により特発性(原因不明)とする傾向があり、慢性過敏性肺炎は誤ってIIPsと診断されていることが多いようです。 さらに、これまでに厚生労働省難治性疾患研究事業である「びまん性肺疾患に関する調査研究」班の班員としても活動しており、慢性過敏性肺炎の全国調査などを報告しています。また、2017年度からは同研究班の班長としての責務も担当しております。当科としては、同研究班内でも特に慢性過敏性肺炎の病態理解を踏まえて肺線維化のメカニズムを解明しようと試みております。具体的な研究内容には環境における原因抗原の同定・定量、抗原決定部位のクローニング、Th1/Th2/Th17を含むケモカイン・サイトカインの発現解析、線維化肺におけるアポトーシスや上皮・間葉系形質転換(EMT)の関与、慢性過敏性肺炎動物モデルの作製などがあります。人的労力が必要な実験や研究も多く、大学院生も含め教員・医員などの医局員全体で協力し、いろいろな実験・研究などを進めております。

過敏性肺炎における研究が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和4年度免疫アレルギー事業に採択され実施しております(「過敏性肺炎の全国疫学調査と疾患進行抑制のためのエクスポソーム研究」研究代表者宮崎泰成、研究分担者岡本師)。詳細はリンクをご覧ください。

2.腫瘍班

腫瘍班は「Yushima Lung Cancer Oncology Group(YLOG)」として大学と関連病院が一体となって定期的に会合を開き、臨床研究を推進しています。化学療法に関する臨床試験を計画、実施しており、その成果を学会、論文にて発表しています。その他WJOG、NEJなどの全国規模での臨床試験の参加、precision medicineのためのLC-SCRUMによる遺伝子スクリーニングにも参加しています。
当科には間質性肺炎が多く、間質性肺炎には高率に肺癌の合併が見られます。現在間質性肺炎合併肺癌に対する化学療法の臨床試験、疫学的解析、またがんセンターや当院呼吸器外科と共同してのゲノム解析など、間質性肺炎合併肺癌を当科全体の1つの柱として研究を行っています。その成果がJCO Precision medicine誌に掲載されました(Honda T et al. , Deleterious Pulmonary Surfactant System Gene Mutations in Lung Adenocarcinomas Associated with Usual Interstitial Pneumonia)。 

3.感染症班

肺炎は我が国の死因の第3位を占める重要な疾患です。肺炎を引き起こす病原体は多数ありますが、抗菌薬により治療をします。その中で緑膿菌は院内肺炎の代表的な細菌です。健康な成人でも口腔内や腸管にいますが、免疫力が低下している人には肺炎を来します。元来抗菌薬が効きにくい性質を持っていますが、抗菌薬使用により多剤耐性緑膿菌(MDRP)などになることがあります。一方で抗菌薬の開発は活発に行われていますが、なかなか上市されていない現状があります。そこで我々は宿主側(患者側)の因子が病態にどのような影響を及ぼすかを検討し、治療成績の向上をめざして研究を行っていきます。肺結核患者は順調に減少していますが、欧米と肩を並べるほどに減少していない現状が有りますが、近年では同じ抗酸菌のなかまで、非結核性抗酸菌症が増加しています。治療に関してはまだまだ満足のいく状況ではなく、上記アプローチにより排菌陰性化率の向上を目指して研究していきます。

4.気管支喘息・COPD班

気管支喘息の治療においては、ステロイドの吸入薬が普及したことによって喘息のコントロールは飛躍的に改善し喘息死も減少しました。しかし一方で、アレルギー疾患の患者数は着実に増加しており、喘息においては有症率が10年ごとに1.5~2倍と急速な増加を示しています。喘息の発症メカニズムについては未だ不明な点が多く、発症後の病態についても気道過敏性(わずかな刺激にも気管支が敏感に反応して収縮してしまうこと)や気道リモデリング(慢性炎症によって気管支が傷害された後に異常な修復が起きて気管支の壁が硬くなったり厚くなったりすること)の病態はまだ十分解明されていません。我々は、ヒトの気道上皮細胞・気道平滑筋細胞の培養系や、マウス・ラットの喘息モデルを用いて気道過敏性・気道リモデリングのメカニズムについての解析を行っており、喘息の予防・治療に役立つことを目標に研究を進めています。

5.睡眠時無呼吸症班

快眠センター/呼吸睡眠制御学講座のホームページをご覧ください。

※実験助手を随時募集しております。ご希望の方は下記連絡先にメールをください。
メール:岡本師(医局長) tokamoto.pulm@tmd.ac.jp