教室の紹介

当科で行っている診療

2023年10月に機能強化棟がオープンし、ハイブリッド機能を備えた手術室2室を含む7室が新設されました。全身麻酔患者用の中央手術室は18室(改修中の4室を加えると22室)となり、ますます多くの手術要請に対応できる体制となりました。

手術麻酔は、手術中の麻酔管理はもちろんのこと、術前の外来でのリスク評価や説明、手術直前の術前診察、術後の疼痛管理、術後診察を含み、いわゆる「周術期」全般に関わります。多くの診療科・職種と連携しながら、安全に、できるだけ苦痛を少なく手術を受けていただくために日々学び続けています。

診療実績

  麻酔科管理症例 全手術件数
2020年度 3,767件 5,636件
2021年度 4,571件 6,594件
2022年度 5,452件 7,923件

周産期麻酔

周産期麻酔には、帝王切開術の麻酔管理や無痛分娩、妊娠中の非産科的手術の麻酔管理などが含まれます。

無痛分娩について

当院では周産女性診療科と新生児科、助産師と協力して24時間体制で、自然に陣痛が始まるのを待って陣痛が始まってから痛み止めを使用する自然無痛分娩(オンデマンド無痛分娩)とあらかじめ出産の日取りを決めて薬剤で陣痛を誘発しながら痛み止めを使用する計画無痛分娩のいずれにも対応しています。初産婦は自然無痛分娩が基本で、経産婦は自然無痛分娩だけではなく妊娠39週台での計画無痛分娩にも対応します。鎮痛方法は基本的には硬膜外麻酔単独で行いますが、専用の器械を用いて定期的に局所麻酔薬を投与するプログラム下間欠的ボーラス投与法(PIEB:Programmed Intermittent Epidural Bolus)をベースに患者自己疼痛管理調節(PCEA: Patient-Controlled Epidural Analgesia)にてご自身で痛みをコントロールしていきながら分娩をすすめていきます。

無痛分娩にはさまざまなメリットがあります。最大のメリットは痛みの緩和とそれにともなう不安の軽減や産後早期の回復です。また、急な緊急帝王切開術にも速やかに対応できるといった出産の安全性の向上もあります。担当麻酔科医は定期的に訪室して疼痛コントロール状況を把握し、安心して出産していただけるように努めています。

無痛分娩希望者は妊娠30週以降を目安に麻酔科外来を受診し、全身状態のチェックおよび当院での無痛分娩についての説明を受けていただくことでより安全で円滑な無痛分娩を提供できるようにしております。なお、もともと無痛分娩を希望されていなかった場合でも、分娩進行中の急な無痛分娩のご希望にも対応できるような体制となっています。現在では、多くの方が無痛分娩を選択されています(図)。

分娩数

帝王切開術の麻酔管理について

当院では予定帝王切開術は原則として 脊髄くも膜下麻酔併用硬膜外麻酔で管理しています。近年、硬膜外麻酔を併用しない施設が増加していますが、当院ではハイリスク妊娠も多く、きめ細やかな麻酔調節を必要とする場合も多く、硬膜外麻酔を併用しております。また、硬膜外麻酔を併用していますが薬剤調整に工夫を施しておりますので自立歩行も十分に行えるため、術後の血栓予防にもなります。緊急帝王切開術の場合でも、産科医と綿密なコミュニケーションを図り、母児への影響の大きい全身麻酔をできるだけ避けて区域麻酔(脊髄くも膜下麻酔や脊髄くも膜下麻酔併用硬膜外麻酔、硬膜外麻酔)で対応できるようにしております。周産期麻酔では、無痛分娩と帝王切開術の麻酔、小児の麻酔を担当しています。年間100例以上の帝王切開術が行われております。また分娩室での無痛分娩も行っております。

小児麻酔

麻酔管理の基本は鎮痛、鎮静、不動化ですが、これは対象が成人であろうが小児であろうが変わりがありません。小児では低年齢であるほど薬剤や手術の侵襲に対して解剖学的にも生理学的にも十分な防御反応が備わっていないことが多く成人と比して周術期合併症が多いといわれています。また、近年ではそうした防御反応を手助けするための麻酔薬が場合によっては発育・発達に影響することさえ指摘されており、小児に対する麻酔薬の使用には注意すべき点が多くあるといえます。現在、局所麻酔や麻薬は発育や発達に対して最も安全な薬剤とされており、当院では産まれたての赤ちゃんであっても区域麻酔(硬膜外麻酔や末梢神経ブロック)や麻薬の患者またはご両親による自己疼痛管理調節法(PCA: Patient/Parent-Controlled Analgesia)を積極的に用いた鎮痛を主体とした麻酔管理を提供しております。また、小児ではたとえ痛みを伴わない短時間の検査であっても安静を保持することが難しいため何らかの鎮静薬の投与を必要とすることが多く、手術室外のMRIやCT検査における鎮静管理にも積極的に対応するようにしております。

ペインクリニック

月曜日、水曜日、金曜日が診療日となっており、1日あたり10人程度の患者さんの診察を行っています。午前に外来診察を行い、午後は主に透視室を使用しての神経ブロックや病棟等での疼痛管理を行います。緩和ケア科と連携し、がん性疼痛に対する神経ブロックも行っています。

日本ペインクリニック学会専門医(大畑)を中心とし、関連病院に勤務する麻酔科医もともに診察を行っています。

ペインクリニックに興味のある若手麻酔科医は、手術における基本的な麻酔技術の習得後、時期を相談しながらペインクリニック研修を受けてもらう事ができます。

ICU(集中治療部

2023年10月に増築した機能強化棟に、新しいICU・HCUがオープンしました。合わせて25室あり、集中的な管理を要する術後患者や重症患者の診療にあたっています。日常的に手術部と連携して周術期管理を行っています。