当科では脳梗塞を始めとする脳卒中に対して24時間・365日、最先端の治療を提供しております。
脳梗塞とは?
脳梗塞とは、脳卒中(脳血管障害)のうちの一つの病気で、脳を栄養する動脈の血行不良(もしくは閉塞)により、酸素や栄養を受けている神経細胞が死ぬことでさまざまな症状をきたす病気です。
脳梗塞は、その機序(でき方)によって大きく以下に分類できます。
かつては脳卒中の4分の3を「脳出血」が占めていましたが、近年その割合は著しく減少し、代わって「脳梗塞」が増え、2006年には70%を占めるようになりました。その理由として、高血圧対策の普及と生活習慣の変化による糖尿病や脂質異常症の増加が考えられます。
日本では欧米に比べてラクナ梗塞の割合が多い傾向がありましたが、脂質異常症や糖尿病の増加にともない、アテローム血栓性脳梗塞が増えています。また、高齢化にともない心房細動の患者さんが増加しているため、心原性脳塞栓も増えています。
- 【症状】
脳梗塞で最も多い症状は、体の片側半身かに力が入らなくなるような運動麻痺です。特に、手足と同じ側の顔にまで麻痺が起こる場合は、脳梗塞の疑いはさらに強くなります。次に多いのは、ことばの症状で、ほぼ半数の患者さんに出現します。この症状には、呂律が回りにくくなる症状(構音障害)と、ことばを理解できなくなったり、言いたいことが言えなくなったりする症状(失語)の二つ種類があります。ほかに多いものとして、歩けなくなる、意識が低下する、体の半分のしびれなどの感覚障害、めまいや吐き気・おう吐、片目もしくは視野の半分が見えにくくなるなども、脳梗塞が疑われる症状です。こうした症状のうち、一つだけが出現することもありますし、いくつか症状が重複して出る場合もありますから注意が必要です。
脳卒中の症状は、突然現れることが多く、たいていは起こった時間がはっきりしています。最初の症状がそのまま短い時間のうちに軽くなり、消えることもありますが(一過性脳虚血発作など)、様子をみているうちにどんどん悪化したり、他の症状が加わったり、いったんは消えた症状が再び現れて、こんどは元に戻らないこともあります。
- 【診断・検査】
脳梗塞が疑われる場合も、多くの画像検査が行われます。それぞれに得手、不得手があり、その検査でしかわからないことや検査の限界があります。CTやMRIは、脳の中の構造を見ることができ、脳出血・脳梗塞・脳腫瘍などの病気の発見に適しています。特にMRIの拡散強調像という取り方は新しい脳梗塞を鋭敏に確認できます。
一方、脳の血管が細くなったり、詰まったりしていないかを見るには、血管撮影、MRA(magnetic resonance angiography)、CT血管造影検査、超音波検査が、また脳を流れている血液の量をみるためにはシンチグラフィー検査が適しています
脳梗塞の治療について
以前は脳梗塞に対する治療法は大規模研究などで有効法が証明された方法はほとんどありませんでしたが、2005年10月に認可された発症4.5時間以内の脳梗塞に有効とされるt-PA静注療法が行われるようになり、脳卒中に対する超急性期の治療が進歩しました。ただ脳主幹動脈(=根元の方の太い動脈)閉塞による大きな脳梗塞の患者さんには期待されたほど効果がありませんでした。これに対して最近では脳血管内治療というカテーテルを用いた最新治療の成績が劇的に向上し、脳卒中は発症後できるだけ早く専門病院にて治療を開始することが生命予後だけでなく、機能的な予後も改善することが判ってきました。
脳血管内治療とは、カテーテルという細い管を血管に挿入して、頭の中の血管へ進めて詰まった血管を通し直す“頭を切らない脳の手術”です。今までに様々な器具を用いた方法が行われてきましたが、2014年7月にステントタイプの血栓回収カテーテルが2種類(ソリティア、トレボ)認可されました。これは柔らかい金属のステントで閉塞した血管内で広げて、血栓を中に取り込んで回収するもので、このステントリトリーバーと呼ばれるカテーテルの効果により、早期に高い確率で再開通ができるようになりました。この結果2015年以降、ステントリトリーバーを用いた国際臨床試験の結果が多数発表され、すべての治療成績はそれまでとは比べものにならないほど良好であり、急速に全世界に広がっています。
当科でもこの最新治療を、24時間・365日に即時で行えるように、救急救命科・脳神経内科・脳神経外科と協力して体制を整えており、以前では助けることができなかった脳主幹動脈(=根元の方の太い動脈)閉塞による大きな脳梗塞の患者さんを多数助けることに成功しております。