膝疾患の治療-前十字靭帯(ACL)損傷とは

前十字靭帯(ACL)損傷とは

前十字靭帯(ACL)損傷

前十字靭帯(ACL)とは大腿骨(太ももの骨)の後方から脛骨(すねの骨)の前方をつなぐ靭帯で、大腿骨に対する脛骨の前方のゆるみと膝のひねりを制御する膝の安定性にとって重要な靭帯です。

受傷原因

前十字靭帯損傷は、ストップ、カット、ターン、ジャンプの着地などで生じることが多いです。スキー、バスケット、バレーボール、サッカー、ラグビー、フットボール、柔道でよく起こります。状況によって側副靭帯を伴うこともあります。(内反ストレスで外側側副靭帯=LCLが、外反ストレスで内側側副靭帯=MCLが損傷されます)また、半月板の合併損傷がみられることもあります。

症状

  1. 損傷時
    ボキッという音とともに「膝が抜けた感じ」がして、脱力感のためほぼ全例スポーツ不能となります。
  2. 急性期
    来院時には関節内に血液が貯留し関節の腫れと痛みを伴い動きが悪くなりますが、約3週で回復し、通常の生活では足を引きずって歩くことなく困らないようになります。この時点までにきちんと診断と指導がされないと一見治ったように思ってしまい放置されるようになります。その後の経過は患者さんによって異なりますがスポーツをするような活発な方は以下に記す慢性期の症状が生じます。
  3. 慢性期(陳旧例)
    「膝がガクッとなり外れる感じ」(=膝くずれ)が特にスポーツ時、急な横の動きやジャンプ時に起こりやすくなります。膝くずれを繰り返しているうちに、半月板や軟骨を損傷することがあり、そうなると膝の引っかかり感(=キャッチング)や伸展不全(伸びなくなること)(=ロッキング)を生じます。

診断

  1. 徒手検査:ラックマンテスト
    膝を20°曲げて行う脛骨の前方引き出しテスト。前十字靭帯(ACL)が損傷していると終点(end point)がなく、「グニャ」とした感じがします。
  2. MRI
    核磁気共鳴現象を利用した画像診断で、靭帯や半月板の状態がわかります。
  3. KT-1000
    脛骨の前方のゆるみを測定する器械です。

半月板損傷について

半月板とは膝の内側、外側に一対ある半月状の板でクッションの役割を果たします。半月板損傷は前十字靭帯(ACL)損傷に合併する例が多く特に長期に経過した人に多くみられます。半月板を切除すると将来的に変形性膝関節症になりやすいので極力温存します。(損傷後長期経過したものや半月板損傷の部位によっては修復が期待できないこともあり、その場合は必要に応じて部分切除いたします。)。

治療(保存治療 or 手術)

膝くずれの防止が治療の最大目標ですが、損傷された前十字靭帯(ACL)は保存療法では修復されにくいので年齢や活動性、関節の不安定性などによって治療法を決めます。

  1. 保存療法を選択する場合
    1. 前十字靭帯(ACL)の単独型損傷で日常生活レベルにおいて不安定感のないもの
    2. ジャンプや全力疾走を含むスポーツ活動に従事しないもの
    3. 高齢者
    例えば55才女性、走ったりすると膝の不安定感があるが、普段の生活ではさほど不自由を感じない。
    ⇒中年以降
    50才男性、以前からの膝の不安定感とともに半月板症状(疼痛など)が出現する。
    ⇒半月板の処置のみで再建術はせず
  2. 手術療法を選択する場合
    例えば22才男性、大学体育会でサッカーをしている。
    ⇒スポーツアクティビティの高い人
    17才女性、特にスポーツはしていないが今後レクリエーション程度の運動はしたい人
    ⇒若年者
    32才男性、前十字靭帯(ACL)損傷は指摘されていたが、今回膝をひねり膝が伸びきらなくなってしまった。
    ⇒半月板損傷あり、比較的若年者
  3. 相対的な手術の適応
    例えば40才女性、ママさんバレー選手、今後もバレーボールを続けたい。
    ⇒中高年で膝の拘縮(可動域制限)を生じやすく筋力の回復も遅れがちのためリハビリに積極的に協力していただけるならば手術をする。

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