膝疾患の治療-2重束2ルート前十字靭帯再建術

2重束2ルート前十字靭帯再建術

当施設では現在、全国的に行なわれている2重束2ルート再建術を全国に先駆け、1994年から施行しています。
入院も1週間前後で済み、高いスポーツ復帰率、患者満足度(全体評価で89点、スポーツパフォーマンスで87%)などの成績を誇っています。

2重束2ルート前十字靭帯再建術の利点

2重束2ルート前十字靭帯再建術1重束前十字靭帯再建術に比べ、移植腱骨移行部の接触面積が広いため、移植腱骨移行部の治癒を早める効果があります。
また、移植腱を任意の位置に設置できるため、前十字靭帯の解剖学的位置に近く設置することができます。
また、2本の移植腱の初期張力を自由に設定できるため、各々の移植腱の生体力学的特性を考えた初期張力を与えることができます。

2重束2ルート前十字靭帯再建術の利点

2重束2ルート前十字靭帯再建術の実際

1.移植腱の準備

皮切箇所半腱様筋腱付着部近く(@)を、約3cm皮膚切開し半腱様筋腱(長さ22〜26cm)を採取します。採取した半腱様筋腱を半分の長さに切り、両端に糸をかけておきます。
さらに移植腱を半分に折り曲げ、太さを計測します。太い方が脛骨側(折り曲げて両端が重なる側)、細い方(折り曲げた側)が大腿骨側の骨孔の大きさになります。
@ 約3cmの皮切から半腱様筋腱を採取する。 脛の骨に穴を開ける。
A・Bは関節鏡用の7mmの長さ

移植腱の準備

2.関節内の観察と脛骨側の骨孔の作成

約7mm(A、B部分)皮膚切開し、関節鏡を挿入し関節内の靭帯、半月板、軟骨に問題がないか確認します。
確認後、残っている前十字靭帯を参考に前内側束(AM束)、後外側束(PL束)の位置を決め、ガイドピンを挿入します。再建靭帯のインピンジメントの防止・制動性の確保のためにこの時点でのガイドピンの位置は重要なため、レントゲン写真で確認します。
ガイドピンの位置が正しければ、計測した移植腱の太さでガイドピンに沿ってオーバードリルします。
これで脛骨側の骨孔が完成です。

確認レントゲン写真

3.大腿骨側の骨孔の作成

作成した脛骨側の骨孔からガイドピンを再び通し、膝の角度を調整しながら大腿骨側にもガイドピンを挿入していきます。大腿骨の骨孔の位置は以下のように開けるようにしています。

大腿骨の骨孔位置

4.移植腱の挿入

ガイドピン挿入後、移植腱が入る深さ(この例の場合25mm)だけドリルでオーバードリルし、さらにその先を直径4.5mmのエンドボタンドリルで大腿骨を貫きます。
こうして完成した大腿骨の骨孔の全長(この例の場合45mm)を計測します。

移植腱の半分に折り曲げた部分に、先ほど計測した骨孔の全長に応じた人工靭帯のついたエンドボタンを連結します。エンドボタンから骨孔の全長の位置と、そこから8mm離れた部分の2箇所にマーキングします。

パッシングピンを脛骨骨孔から大腿骨骨孔に向けて通し、それをガイドに移植腱を導入します。
エンドボタンをマーキングを見ながら、ひっくりかえし移植腱を関節内に固定します。PL束、AM束の順に挿入します。

大腿骨の骨孔位置

5.移植腱の固定・観察

移植した2本の腱をどのような緊張で止めるかは術後の成績に大きく影響します。2つのアンカーステープルを用い、関節鏡で観察しながら、それぞれの腱の太さにあった張力で移植腱を固定します。

完成した再建前十字靭帯を関節鏡で観察します。2本の移植腱の張力パターンを確認します。

術後確認

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