炎症性腸疾患センター(IBD外来)
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IBDの検査法

1. 血液検査

血液検査は患者さんの病気の状態を客観的に把握する上で大切な検査法の1つです。具体的には1)患者さんへの問診、診察ではわからない病気の活動性を把握すること、2)使用している薬剤などによる副作用の確認を主な目的として採血をしていただいています。

採血する量は初診かどうか、前回までの病勢や活動度、前回までの血液データの異常の有無などにより異なりますが、初診時以外は多くても大体10-15mL程度です。また多くの専門病院では病気の原因を追及するために基礎あるいは臨床研究をしているので、患者さんの同意を得たのち、研究のための採血を余分に(穿刺は1回のみ)させていただくこともあります。

実際のデータの見方としては表をポイントにしてみてください。大きく分けて1)炎症反応をみるためのデータ、2)貧血をみるためのデータ3)栄養状態をみるためのデータ、4)肝臓や腎臓の機能などの異常をみるためのデータに分けることができます。医師はCRPと異常値のみ説明する場合も多いですので、不明な点は質問して聞いてください。

2. 内視鏡検査

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡は肛門から内視鏡を挿入し、約70-80cmある大腸を盲腸まで挿入していきます。通常検査の当日に洗腸のためにニフレックを2-4L服用し、大腸に残っている便を排出させます。服用する量が多いことや匂いが独特であるため服用できない場合もあり、その場合は他の下剤に変更する場合もあります。基本的にニフレックを使用する場合は前日まで特別な食事制限は必要ありません。病院によっては検査前日にラキソベロンやマグコロールを下剤として使用する場合もあります。この下剤を併用することにより当日のニフレック服用量を軽減することができる場合もありますが、ラキソベロンでは腸管が刺激され、腹痛を伴うことがあるので注意が必要です。またニフレックも狭窄が強い場合には服用した下剤が通過せず、腸閉塞や腸管内圧の上昇により腸管穿孔をおこす可能性もあるので使用できません。詳しいことは担当の先生と相談するとよいでしょう。注腸検査に比べてバリウムによる刺激がないことより現在では内視鏡検査が中心に行われことが多くなっています。

検査の苦痛を軽減するために麻酔薬を、施行前に点滴することもあります。検査時間は個人差がありますが、大きな処置がなければだいたい15-30分程度で終了します。

潰瘍性大腸炎では初発時には病理検査による診断を行う上でも重要な検査になります。その後は必要に応じて(治療方針の変更などが必要な場合の判断材料になります)施行します。病気になってから長い経過がたった患者さん、特に炎症が継続した時期が長い(長かった)慢性持続型の患者さんについては大腸がんの発生の危険が増えてくるので、7-10年経過した患者さんについては少なくとも1年おきに施行することが望まれます。

クローン病でも大腸内視鏡検査は大腸粘膜の活動度が直接見られること、生検により病理学的検査が可能であること、また狭窄がある場合などにバルーンを用いた拡張術をおこなうことができるなど利点が多いです。ただし初診時に大腸に炎症がないことが確認された場合には、その後必要がなければ施行しません。また腸管の全体像を把握する場合、特に狭窄、瘻孔(炎症により腸管と腸管、腸管と皮膚などの他臓器がくっついて孔が形成されること)の観察などは造影検査の方がメリットが大きいと思われます。

胃・十二指腸内視鏡検査

いわゆる胃カメラですが、経口的にスコープを挿入し、食道、胃、十二指腸の入り口まで観察する検査です。検査は午前中に行われることが多いですが、検査当日は朝食を絶食にします。また前日夜は消化のいい食事にして夜9時以降は食事をとらない方がよいでしょう。

検査は咽頭麻酔をビスカス(またはスプレー)にて行い、その後検査を開始します。大腸内視鏡と同様に検査の苦痛を軽減するために麻酔薬を、施行前に点滴することもあります。検査時間はだいたい5-15分程度で終わります。

潰瘍性大腸炎では基本的に大腸以外に病変はないので特殊な場合以外は上部内視鏡検査を行う必要はありません。クローン病は症状がなくても特に十二指腸に微細な病変をつくることが多いので、初診時にはおこなうことが望まれます。その後は1回目の検査で病変がなければ継続して行わなくても良いでしょう。

小腸内視鏡検査

これまで小腸の検査法としては小腸造影があるのみでしたが、最近では小腸内視鏡の登場により小腸の観察も内視鏡により可能となってきました。小腸のうち口に近い病変を見る場合は口から挿入(通常の胃カメラと同じ)し、肛門に近い小腸を観察する場合は肛門から挿入します。通常の内視鏡より長い内視鏡であること、小腸の深部まで挿入するために内視鏡の先端とオーバーチューブにバルーンをつけて、屈曲した腸をバルーンで保持して腸管を伸展させずに挿入していく内視鏡です。この検査法によりこれまで観察することのできなかった小腸を直接観察することが可能となったこと、またクローン病の狭窄病変に対して内視鏡的狭窄拡張術を施行することが可能となり、この数年でクローン病の診療は進歩してきています。一方クローン病は腸管の癒着が強い患者さんも多く、癒着がある患者さんに対しては検査が困難、またはできない場合もあります。

詳しいことは担当の先生と相談してください。

3. 消化管造影検査

小腸病変を見るための小腸造影は経口から造影剤を飲んでもらい体位変換を繰り返し、造影剤を腸管に流して観察する方法です。場合によっては鼻から細いチューブをいれてチューブより造影することもあります。瘻孔や狭窄を観察するには必要な検査ですが、診断能力が医師・技師によってかなり差があります。できれば専門の病院で受けることを勧めます。

注腸検査は主に大腸を観察する造影検査で、まず肛門よりチューブを挿入(大腸内視鏡より細いです)しチューブが抜けないようにバルーンで固定してから造影剤を流します。小腸造影と同様に体位変換をしながら造影剤や空気を入れて観察していきます。注腸検査の場合は検査の場合のための食事と検査日2-3日前より下剤を使用します。施行方法は病院によって多少の違いはあるでしょう。また検査後造影剤が腸内に残って固まらないように、造影剤を排出するための下剤を使用します。

最近では潰瘍性大腸炎患者さんに行うことはまずなく、クローン病の患者さんが中心に行われます。

4. CT/MRI検査

腹部CT、MRI検査は苦痛の少ない非侵襲的な検査法です。CT、MRIともに膿瘍の合併、消化管の炎症の程度の評価などに有用な検査法です。MRIは特に肛門部周囲の膿瘍、瘻孔を評価するのに適しています。

近年の技術の進歩に伴い、腸の蠕動を気にすることなく、高解像度のCTやMRIの撮影が可能となり、これを用いた小腸評価が行われるようになりました。今日まで小腸造影がクローン病の小腸病変評価の第一選択でしたが、数々の研究によりCT/MRI検査が従来用いられてきた小腸の消化管造影検査に勝るとも劣らない結果が示され、欧米においてはクローン病を疑った際の第一選択となっています。特にMRIは被爆がなく何度でも行える低侵襲な検査で、病気の経過観察にも有用です。

当院での方法は、消化管内視鏡検査日に服用する腸管洗浄剤(ニフレックR)を1.5リットル内服し、小腸に液体がたまった状態でMRI検査を行い、その後、同日に内視鏡検査を行いますので、患者さんの余分な負担が少なく行える検査です。これをMRエンテログラフィ(MREC)といいます。当院の検査でも内視鏡所見や小腸の消化管造影検査と比べ、良好な一致を確認しています。

    潰瘍性大腸炎・クローン病センター     東京医科歯科大学 難病治療センター  

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