ごあいさつ

ごあいさつ

分子生物学領域におけるテクノロジーの目まぐるしい進歩は、医療の形をも大きく変えようとしています。1990年に開始されたヒトゲノム計画(Human Genome Project)では、10年以上の歳月と100億円近い費用をかけてヒト一人の全ゲノム配列を明らかにしましたが、現在では数日間、数万円でゲノム情報の取得が可能となり、革新的な塩基配列決定技術を基盤として、臨床においてゲノム情報が利活用される時代が到来しました。例えば、がんゲノム医療における「がん遺伝子パネル検査」は保険収載されましたし、あるいは乳がんの原因遺伝子であるBRCA1/2 遺伝子に異常が見いだされた患者さんに予防的乳腺切除術を施行することが我が国でも診療として始まり、ゲノム情報を用いた先制医療の一例となっています。またCRISPR-Cas9をはじめとするゲノム編集技術は遺伝子治療への応用が期待されています。「未来医療」の開発という大きなテーマを掲げるこのコンソーシアムでは、こうした最先端の技術を社会実装することを最終目標としています。
このコンソーシアムは3つの組織で構成されています。「基礎研究拠点」では、未知ゲノム機能探索やクライオ電子顕微鏡を用いた細胞構造解析、ゲノム編集、核酸医薬、mRNA医薬といった領域の新たな知識と技術を創出することを目指しています。「応用研究拠点」では難病・がん・生活習慣病の治療開発を行います。「情報統合コアユニット」においては、未来医療のための多階層にわたる情報を統合し、ビッグデータ解析技術やバイオバンクが収集する高品質の生体試料・臨床情報の管理・提供、あるいは生命倫理学的側面からの支援により、両拠点の橋渡しを行います。
未来医療を目指した本コンソーシアムの活動にご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。

未来医療開発コンソーシアム長

田中 敏博

未来医療開発コンソーシアム長