お知らせ

遺伝子治療科の研究成果が、『Scientific Reports』オンライン版に掲載されました。

脂肪肝の進行における補体Factor Dの役割を発見

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科先進倫理医科学分野の吉田雅幸教授(当院遺伝子治療科診療科長)、大坂瑞子助教、靏裕美大学院生の研究グループは、同難治疾患研究所 先端分子医学研究部門分子神経科学分野の平岡 優一助教との共同研究で、Factor D が脂質の過剰摂取による肝臓での脂質蓄積に関与することを発見しました。この研究成果は、国際科学誌Scientific Reports に、2020 年10 月16 日午前10 時(英国夏時間)にオンライン版で発表されました。

研究内容

非アルコール性脂肪性肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease: NAFLD)は脂肪摂取の過多が原因の一つとなり、発症します。
NAFLD は心血管疾患や肝臓がんへの進行に関連しており、その予防や治療はこれらの致死性の高い疾患への進行を予防するためには重要です。
一方、「補体関連タンパク質Factor D 」は生活習慣病とも関連しており、糖尿病マウスでのインスリン分泌に関与しますが、NAFLD に対するFactor D の関与についてはよくわかっていませんでした。研究グループはFactorDとNAFLDの関係性を知るために、「CRISPR/Cas9 システム」という方法でFactor D 欠損マウスを作製し、高脂肪食摂取による肝臓での脂肪蓄積について検討しました。
その結果、Factor D は肝脂質蓄積に関与する遺伝子発現の制御に関与し、脂肪肝形成にかかわっていることがわかりました。
NAFLD に対する確立された薬物療法は存在していませんが、今回の研究成果によって、Factor D を標的とした新規診断・治療薬開発への貢献が期待されます。