研究テーマ
主に法医学的に重要な中毒物質の毒性機序について研究している。動物を用いて中毒モデルを作出し各種臓器の障害・変性機序を調べ、更には細胞を培養して毒性機序をさらに詳しく検討する場合もある。中毒物質による変動をメッセンジャーRNA、タンパク質、代謝産物のレベルで検索するために、DNAマイクロアレイ、プロテオミクス、メタボロミクスの三つの手法でスクリーニングを行い、RT-PCR、ウエスタンブロット、免疫染色などの手法で検証している。
依存性薬物の濫用による中毒
覚醒剤(メタンフェタミン)、コカイン、大麻(カンナビノール)、は世界的に濫用が問題となっている代表的な物質だが、日本では覚醒剤、欧米ではコカインの濫用が多い。そのため日本では覚醒剤と覚醒剤原料(ノルエフェドリンなど)を覚醒剤取締法で規制され、コカインは麻薬として規制されている。また、近年日本でもコカインの濫用が増えつつある。覚醒剤とコカインの中枢神経への作用は似ており、どちらもドーパミンを含むカテコールアミンの神経伝達を増強することで神経興奮作用を発揮するが、中毒が長期にわたるとドーパミンニューロンなどの神経細胞が死滅するとも考えられている。当分野では覚醒剤・コカインのほかに向精神薬などの濫用モデルについても検討している。
環境汚染物質・農薬などの
化学物質による中毒
硫化水素や一酸化炭素は、それぞれ火山・温泉や火災現場で発生し極めて人体に有害な物質である。その毒性は内呼吸(ミトコンドリアの電子伝達)と外呼吸(ヘモグロビンによる酸素の運搬)の双方に及ぶ。また、ヒ素や農薬パラコートは自殺他殺の目的でも用いられてきた物質で、やはり内呼吸を阻害し酸化ストレスを引き起こし最終的に死に至る、法医学的に重要な化学物質である。法医学分野ではこれらの他にも死因となりうるような毒性の高い化学物質の毒性機序についても検討している。
研究イメージ
コカインの作用機序と脾臓・胸腺の萎縮

LPSによる代謝産物の変動

敗血症モデルラットにおける
ミトコンドリアの細胞外放出
