My Career Story

服部 麻里子先生イメージ写真

服部 麻里子 氏

東京医科歯科大学病院
義歯科(顎顔面補綴外来)
講師(キャリアアップ)

当制度に申請した理由を教えてください。

長いこと大学で働いてきましたが、これまでは上司にずっと甘えてきました。この度、上司が異動になり、自分が外来を引っ張っていく立場になりました。女性だからといって何が特別なのかと考えるとわからなくなりますが、せっかく大学が理想的な職場となるようにと整備してくださった制度ですので、積極的に利用し、少しでも自分が働きやすくなり、外来の皆さんの利益にもなるなら利用した方が良いと思い、申請しました。実際に上司が不在になってから、例えば私のキャリアでは技工部の利用ができず、技工を依頼できる職員が外来に一人もいないという困った事態になるところでしたが、キャリアアップによってそれを防ぐことができました。

ご自身のお仕事の内容とその魅力について教えてください。

腫瘍摘出後や先天異常などのために顎や顔面に欠損のある患者さんに顎顔面補綴装置を製作する仕事をしています。一人一人の患者さんによって顎欠損の形が異なり、残された組織の動きも違うので、その方にとって最適な補綴装置の設計も様々です。患者さんと一緒に創意工夫を重ねていくところが、顎顔面補綴臨床の魅力です。また補綴装置を製作した方には、装着後も経過観察のために継続していらしていただくので、患者さんと長く関わることができるのも魅力だと感じます。

キャリアアップ教員に就いたことで、ご自身やご周囲で変化したこと等があれば教えてください。

ある学会の代表理事の先生が、私がキャリアアップ教員になったことで次の学術大会の会長を依頼しやすくなって良かったとおっしゃいました。その先生ご自身が私を適任と思っていても、身分が伴わないことで、他の方の理解を得るためには通常より詳しく説明する必要があったことを知り、キャリアップ教員になって良かったと思いました。

当制度に期待すること、ご要望等はありますか。

制度を通して、人間としての基本的な生活の中に、家事や子育て、介護というものがあり、それは性別に関係なく誰かがしなければならないこと、という認識が広まると良いと思います。もし自分がそれをしていないなら誰が代わりにしてくれていて生活が成り立っているのか、もし自分の部下がそれをしていないなら、やはりどなたが代わりにしてくれていて、部下がやらずに済んでいるのか、想像を膨らませることができると良いと思います。代わりにしている人にとってはその生活が理想的なのかどうか、職場の環境が良かったら、その役割分担がどう変わるだろうか、色々と想像できると良いと思います。そうすれば、特定の条件がそろった人でないと働けないような職場環境を作ってしまうことを防げると思います。

今後の目標を教えてください。

大学卒業後23年目となり、そろそろ、新しいことを勉強するというよりは、まとめに入っていかなければならない時期だと思っています。これまで勉強してきたこと、経験してきたことを活かして、自分ならではの研究、教育、臨床を行っていきたいと考えています。イメージとしてはこれまで歩き続けた旅の中で手に入れたおみやげ(知識や経験)がリュックに詰まっていて、今は腰を下ろしてそれを一つ一つ取り出しては自分で使ったり、使い方を考えて人に渡したりして、顎欠損の患者さんや指導する学生のために役立てていきたい、そのような感じです。旅の途中で手に入れた人とのつながりも大切にして、必要に応じて指示を仰いだり、自分にできないことは依頼したりして、できるだけ顎欠損の患者さんが生活しやすくなるように、そして学生がやりたい研究をできるようにサポートしたいと思います。