ロールモデルインタビュー

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ハンドルの遊び(=ライフ)が研究のヒントになる

お名前:藤﨑 ひとみ(ふじさき ひとみ)氏
所属・職位:株式会社ニッピ バイオマトリックス研究所 主任研究員
研究内容:会合体を形成したコラーゲンがガン細胞の増殖抑制及び上皮間葉転換に与える影響
上司:服部 俊治 所長
所属・職位:株式会社ニッピ バイオマトリックス研究所 所長

インタビュー:2018年1月10日

藤﨑ひとみ(ふじさき ひとみ)氏

左:服部氏  右:藤﨑氏

研究者になろうと思ったきっかけを教えてください。

藤﨑)大学に入学した時は、研究者になろうとはまったく思っていませんでした。むしろ、ずっと実験を繰り返し、データ解析をコツコツするイメージのある研究者は「自分には向いていない」と思っていました。でも、非常に楽しそうに研究の話をされる先生に出会い、「実験も大切だけど、研究にとって一番大事なのは考えること。その事象がなぜ起こるのか、徹底的に考えることも研究のひとつだ」と教えていただいたのが、自分の運命を変えた気がします。そういう研究の仕方なら自分にもできるかもと、研究の道を志すようになりました。

藤﨑ひとみ(ふじさき ひとみ)氏

研究職の魅力はどこでしょうか。

藤﨑)実験計画を立てて、実験が計画通りに進んだにもかかわらず、結果が予想通りでないときに、おもしろさを感じますね。私にとっての研究職の魅力は、予想を裏切られること、そしてその裏切られた理由を見つけることです。

服部)同じ研究でも、やる人によって見えてくるものがちがうというのは、研究の醍醐味だと思いますよ。

これまで研究で悩んだとき、どのように解決してきましたか。

藤﨑)実験がうまくいかないときは、他の研究者の意見を聞いて参考にし、また新しい実験方法を模索しました。実験結果の解析に困ったときは、暗記するほど生データを眺めてデータの解析方法から見直しました。いずれの場合も、関連論文は端から検索し読みます。ただ、実験結果が予想通りではないというのは、そんなに悪いことではありません。原因がどこにあるのか、他の方の意見なども参考に自分なりに答えを導き出すことが大事だと思っています。

煮詰まってしまい、「やめたい」と思うことはしょっちゅうです。でも、気持ちの切り替えで乗り越えています。

ワーク・ライフ・バランスをとるために、常日頃、意識していることがありましたら教えてください。

藤﨑)うまくいかなくても決めた時間がきたら一旦終了して、気持ちとやることの切り替えをするよう心がけています。海の近くに住んでいるのですが、休日にきれいな風景を見ながらぼんやりするのも、私にとって大切な時間です。通勤時間に読書したり、会社帰りにスポーツクラブに寄ったりという時間もスイッチのオンオフになっています。仕事をしていない時間って、一見「遊んでいる時間」にも思えそうですが、でもその一見無駄な時間に、意外と研究のヒントが潜んでいるものなんです。

服部)会社組織としても、バランスが取りやすい環境だと思いますね。もちろん、一人ひとりの意識の違いで差はありますけど、ダイバーシティという観点からも、多様な働き方ができる組織でありたいと思っています。

現在、DDユニットの「研究力強化の共同研究」の支援を受けようと思ったきっかけがありましたら教えてください。

藤﨑)3年前に所長より話をいただいて、新しい出会いや発見があるかもしれないと思い応募しました。今は、東京医科歯科大学と大阪医科大学の先生の3人で共同研究をしています。

DDユニットの支援を受けて、どのような効果がありましたか。

藤﨑)研究や実験にはいろんなやり方があるのだと改めて感じ、研究に新たな視点が生まれたと思います。また、会社のデイリーの仕事とはまた違った新たな視点の研究を進められることも非常に有意義です。コミュニティも広がっており、とても楽しく、研究を進めさせていただいています。

服部)藤﨑さんは「自分が納得すれば、他の人にどう思われても気にしない」というタイプで、個人的にはそういう考え方ができるのが藤﨑さんの魅力だと思っています。ただ、組織としては、アウトプットしてほしいと思うところがあったのも本音でした。そういう意味では、今回のように他の組織と共同で研究を進めることで、他者への伝え方、働きかけというのには大きな変化が生まれたのではないでしょうか。研究所内でのコミュニケーションにもよい影響があったように思います。

また、彼女の共同研究が縁で、新たな仕事のきっかけが生まれており、ニッピの組織としても広がりを感じています。

これからの女性研究者支援に望むことはありますか。

藤﨑ひとみ(ふじさき ひとみ)氏

藤﨑)行政は女性の責任ある立場への登用や働き方の多様化などに力を入れていると思います。この方向を進めてほしいです。仕事を始めて26年経ちますが、この10年で大きく変化し、たとえば大きな学会などでも当然のように託児室が付いているようになってきています。多様性を認める社会がさらに広がってきてほしいですね。

DDユニットさんの支援も行き届いていると思います。シンポジウムにも何回か参加させていただきましたが、いろいろな分野の先生の話が聞けて大変勉強になりましたので、ぜひこれからも続けてほしいです。

ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(連携型)に採択されたことで、研究所またはご自身の意識にどのような効果・変化がありましたか。

服部)自分の意識として変化はあまりないのですが、世間にも流れがあることにより、本社に対して、ダイバーシティの重要性が認められつつあるように感じています。

また、以前勤めていた東京医科歯科大学とこうして連携できることは、研究という意味でも、人としても幅の広がりがありました。

ただ、色々な考え方があるため、それこそダイバーシティという観点から、やり方・進め方に葛藤や難しさがあるというのも正直なところではあります。やはり「いろんな考え方がある」と理解しあえる環境が理想ですので、そういった組織にしていけるよう、これからも試行錯誤していきたいですね。

藤﨑ひとみ(ふじさき ひとみ)氏

藤﨑)社員のひとりとしては、社内の意識に変化があったと思います。こういった活動が会社としてあるんだということ自体が改めて認識されたことが、そもそもとても大きいです。ニッピとしては初めての取り組みだと思うので、とても意義深いのではないでしょうか。

これからの夢や目標、また、女性研究者や若手研究者へメッセージをお聞かせください。

藤﨑)社会に恩義を感じているので、その恩返しとして、これからはなるべく自分の研究を社会に還元していきたいなと最近は思っています。自分もそうですが、若い研究者のみなさんも「こうあるべき」というステレオタイプな考え方にとらわれず、やりたいことの本質を見つけて楽しんでほしいですね。

服部)いろんな生き方があるから、こうでなくちゃダメとは思わずにチャレンジしてほしいですね。ライフイベントとの両立に悩む女性研究者も多いと思いますが、自分だけでなんとかしようなどと思わず、頼れるものは頼ってください。ただそれは自分で信号を出さないと伝わりませんよ。しっかり周囲に困っていることを発信することが大事です。組織なのか、社会なのか、家族なのかわからないですが、頼れるところはきっとどこかにあります。なんとかなりますから、あきらめずにがんばって!

1日のタイムスケジュール

5:00 起床
5:15 家を出る
通勤中、電車で読書したり、寝たりして切り替える
8:30 会社着、コーヒーを飲み勤務に備える
9:00〜19:00 勤務
20:30 スポーツクラブに立ち寄る
23:00 帰宅
24:00 就寝

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