ロールモデルインタビュー

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女性研究者たちが諦めないで頑張れる環境作りをしたい

お名前:河野 春奈(かわの はるな)氏
家族構成:夫、長女(3歳)、第2子妊娠中
所属・職位:順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器外科学講座 助教
研究内容:遺伝性腎疾患の臨床/基礎研究泌尿器科がんにおける末梢血循環癌細胞(CTC)の研究

インタビュー:2016年1月29日

研究者になろうと思ったきっかけをお聞かせください。

もともと癌に興味があり、癌のある科を志して泌尿器科医になりました。泌尿器科医として癌の診断、治療、緩和・終末期医療などに携わっていくうちに、「癌とは何なのか」という本質を知りたくなり、大学院へ進学して、基礎研究を行うことにしたのです。

実際に大学院で研究を始めてみると、臨床とは違った奥深さ、おもしろさ、大変さがあり、ライフワークとして研究をしていきたいと考えるようになりました。

河野 春奈 (かわの はるな)氏

研究を続ける上で苦労したことがあればお聞かせください。

1日も空けることなく細胞の世話をしなければならなかったため、休日も休まず実験に出ていましたが、妊娠中のトラブル、また産後は休日の作業が難しく、研究を中断せざるをえないときが一番苦労したかもしれません。

大学院生活が終わり、臨床と研究の両方に関わるようになってからは、研究の時間を確保することと、より効率のよい実験計画を立てていくことも大変でした。

結婚、出産のタイミングについては考えましたか?

結婚は大学院2年目、妊娠・出産は大学院3年目でした。臨床の仕事は当直などがあってハードなので、研究のほうが融通がききやすいということから大学院時代に結婚・出産する医師は割と多いですね。あとはちょうど大学院に行くタイミングと、女性が結婚・出産を考え始める年齢が重なるというのもあり、私も大学院の間に結婚や出産はあるかなと思っていました。

河野 春奈 (かわの はるな)氏

結婚・出産・育児の両立について、どのようなところが大変ですか。

結婚に関しては、夫の理解もあり特に問題なかったですね。でも、妊娠、出産、育児との両立は思うようには行きませんでした。妊娠中、産休に向けて早めに結果を出そうと焦るあまり、無理をしてしまって20週目に切迫早産になり、寝たきり生活となってしまったのです。実験を突然中断しなければならなくなり、仲間の助けを借りて細胞をストックしてもらってなんとか切り抜けたのですが、初めて両立の厳しさを突きつけられた瞬間でした。

また出産後もすぐに復帰したかったのですが、大学院生という身分のため保育園に預けることが難しく、大変苦労しましたね。今は制度が変わったのですが、当時は院生だと学内の保育園に入る資格がなかったのです。区の保育園も学生だと入れないと言われてしまい、本当に八方塞がりでした。仕方なく、子どもを抱きかかえながら顕微鏡に向かったこともあります。

そこで本学で、女性研究者支援をとりまとめている平澤恵里先生にご相談したところ、平澤先生のご尽力により、大学の保育所に院生でも預けられる特別な枠を作っていただけることになったのです。そして、生後6カ月から預けて研究を再開することができました。

お迎えまでの限られた時間に、仕事は終わるのでしょうか?

育児という時間的制約の中、大学教員としての仕事、泌尿器科医としての仕事に加え、取り組む研究課題も増えたので、時間の捻出には日々苦労しています。子どもを寝かしつけてから、ペーパーワークなどのためにパソコンに向かう毎日です。

正直、私はハードワークなほうかもしれません。出産したからといって、みんなが夜遅くまでパソコン仕事をしなくてはいけないわけではないと思います。子どもと一緒に寝ちゃったという話もよく聞きます。ただ、こういった働き方をさせていただいている以上、果たすべき責任があると思うのです。たとえば子どもがいると当直ができません。その分、他の職員たちの当直回数が増えて、その方たちのプライベートが削られているわけです。だからこそやれる範囲のこと、ペーパーワークなどは積極的にやっています。少しでもそうして周りの人に恩返しするからこそ、自分もご支援いただけると思うのです。

両立の難しさを乗り越えるために、組織内の支援制度などを利用した経験はありますか?

本学の男女共同参画推進室から実験助手さんを派遣していただいています。時間的制約の中で結果を出すには、研究助手さんの手助けが欠かせません。助手さんの派遣事業は本当に助かるので、ぜひ皆さんにも利用して欲しいと思います。両立を諦めないで済む、大きな力になってくれるはずです。

また、男女共同参画推進室で企画されているシンポジウムやランチョンセミナーは、自分のモチベーションを保ったり、不安を解消する大変よい機会になっています。

DDユニットさんでも、さまざまな支援制度があるようですね。私もファミリーサポートをいつか利用したいなと思っています。習い事の送迎や、土曜日の午後など保育園がない時間帯の預かりなど、さまざまなシーンでお願いできそうなので、すごく期待しています。

研究をあきらめず、続けてよかったと感じるのはどんなときですか。

研究の結果が積み重なり、論文になったときは一番喜びを感じます。また、周りの人が喜んでくれると喜びもひとしおです。

でも、研究室で私が実験をしているのを見た子どもが「おかあさん、かっこいい。わたしもやりたい」と言ってくれたのが一番うれしかったかもしれません。

今後の目標をお聞かせください。

実は今、第2子妊娠中です。第2子については前も倒れたしとすごく悩んでいましたが、私がここで諦めたら、たぶんほかの人も続かないと思ったのです。今はいろんな制度がありますから、やれるかもしれないと思えました。まずは第2子出産に向けて、無理しない範囲で研究を続けることが第一です。そして、第2子出産後はすぐに復帰し、今やっている研究を実らせて世の中に出していく。それが小さな目標です。

最終的には、私が平澤先生に手助けしていただいたように、優秀な女性研究者たちが諦めないでずっと頑張れる環境作りをしたいですね。その大きな目標に向かって努力していこうと思います。

両立を考えている研究者、研究者を目指している方へメッセージをお願いします。

妊娠中に思ってもみなかったトラブルがあったからこそ言えるのは、もっと情報を仕入れておけばよかったということです。妊娠中に働くこと、出産後の子育てとの両立、保育園探しなどについてももっと早く知っていれば土壇場で焦らずに済んだなと思います。

ですので、自分のいる施設にどういう支援制度があるのか徹底的に調べたほうがいいですね。あとは、いわゆる自分の住んでいる自治体の情報も大切です。ホームページも整備されていますけど、できれば直接行って話を聞くことが大事かなと思います。

私には無理かなという気持ちが頭をもたげて、諦めそうになることもあるかもしれません。でも自分一人ではなく仲間はたくさんいますし、やってみれば意外となんとかなります。何年後かに振り返ってみて、あのとき一歩を踏み出してよかった、と思うときがきっとくるはずです。ぜひ皆さん、自分の力を信じて一歩を踏み出してみてください。

河野 春奈 (かわの はるな)氏

1日のタイムスケジュール

6:30 起床
8:00 子供と家を出て保育園に送る
8:30 始業
18:00 終業
18:30 保育園へお迎え
19:00 夕食
20:00 お風呂
21:00 寝かしつけ 子どもが寝た後、家事の残り、パソコンワーク
24:00〜25:00 就寝

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