ロールモデルインタビュー

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子育てがひと段落した今、さらなる飛躍を目指す

お名前:桑葉 くみ子(くわば くみこ)氏
家族構成:夫・子2人(23歳、19歳)
所属・職位:株式会社ニッピ バイオマトリックス研究所 課長
研究内容:コラーゲン関連成分の利用に関する研究

インタビュー:2016年12月9日

研究者になろうと思ったきっかけをお聞かせください。

もともと「研究者になろう」という強い意思はなかったのですが、いくつかのきっかけから研究者になったと思います。きっかけを思い起こしてみると、第一に高校時代、化学や生物の先生がわかりやすい授業をしてくださり、実験もおもしろく、科学に憧れるようになったことです。

第二は、大学で農芸化学を学んだ後、ゼラチン・コラーゲンの原料メーカーである弊社に入社したところ、配属先が研究所だったことです。当時の上司は、コラーゲンや結合組織をこよなく愛し「コラーゲンのファンクションを明らかにする」ことをライフワークにされており、刺激を受けたことで自然と研究者への道を歩み始めたと思います。

また、入社当時は一般職での採用でしたが、ドイツでの生活経験がある上司が「日本もドイツのように、女性が男性と同じ地位にならなくてはいけない」というリベラルな考えを持っており、しばらくして私を含む3名の女性研究者が総合職となり、これが大きな励みとなりました。

桑葉 くみ子(くわば くみこ)氏

これまで研究などで悩んだときにどのように解決してきましたか。

当研究所には先輩方が残してくださった書籍が多くあり、研究で悩んだときは、すがるような気持ちでこのような資料を読み漁ったこともあります。

たとえば、皮膚組織のコラーゲン周辺に分布するデルマタン硫酸プロテオグリカン(デコリン)の研究していた際、実験が一区切りして研究が打ち切られそうになったことがありました。でも、納得できず、図書室にあったデコリンに関する本を読み、書かれていた仮説を明らかにしようと一念発起。そして、実験を繰り返し、結果が導き出せたときの感激は今でも忘れられません。トータルで2年ほどかけ、大学の恩師や先輩のご指導もいただきながら論文にまとめました。

仕事とプライベートライフとのバランスは取れていますか。ご出産当時のお話も含めて、お聞かせください。

私が出産したとき、既に弊社には産休明け2年までの育休・時短勤務制度が整っていたので、目一杯時短勤務を利用しました。制度はあったものの、当時は結婚後退職する女性社員がほとんどでしたので、制度を利用したのは私が2人目と聞いています。経験者が周りにおらず、そういう意味では不安もありましたが、上司をはじめとした周囲の理解があり、ありがたく利用することができました。その当時の法律では、子供が1歳になるまでの育児休業までしか認められておらず、私は大変恵まれていたと思います。

また、子どもたちが少し大きくなってから家庭の事情で一旦退職。3年間のブランクを経て、同研究所へパートタイムで復職し、数年後に正社員にさせていただきました。私のケースは少しレアだと思いますが、子育てをするうえで時間的に多少融通のきく期間があったことは、とてもありがたかったですね。そして、それを許してくださった組織には感謝の念しかありません。

桑葉 くみ子(くわば くみこ)氏

育児と仕事との両立を続けるうえで、一番大変だった時期はいつですか。
またそれをどのように乗り越えましたか。

2回目の時短勤務が終わってから、フルタイム勤務と2人の子育てに励みました。そしてしばらくして研究が軌道に乗ってきた時期に、夫の海外赴任が決まりました。退職して夫についていくか、このままこちらに残り仕事を続けるか大変悩みました。結局、まず仕事を続けて研究をまとめるという目標を持ち、その間夫は単身赴任。私は、仕事・育児・家事の両立に必死だったことを覚えています。

そのときは、自治体のファミリーサポートを利用したり、子どもが病気のときは1時間ほどの距離に住む両親に預けたり、保育園のお母さんに助けていただいたり、なんとかやりくりしていました。また、保育園の先生を信頼できたことは大きな支えでした。

ワーク・ライフ・バランスを保つために、意識していることはありますか。

今は組織的にも恵まれ、子育ても一段落したので、意識せずとも保てていると思います。

ただ、子どもが小さい当時、もっと子どもの気持ちに寄り添ってあげればよかったかなと、今になると思ったりもします。その当時は、自分としては“やり遂げることができた”と満足でしたが、子どもの気持ちや立場を理解できていなかった時期でもあったと思うのです。

今だからこそ言えることですが、ワーク・ライフ・バランスを保つうえで、時には頑張りすぎないことも大切かもしれません。

現在、DDユニットの「研究力強化の共同研究」の支援を受けていますが、どのような効果がありましたか。

これまで研究を主導したり、外部の方と共同研究したりする機会がほとんどなかったので、責任感も強くなりましたし、新しい視点の発見にもつながっています。

また、順天堂大学や東京医科歯科大学の女性研究者の方が、家庭を持ちながら研究・仕事に高い目標を持って取り組んでいらっしゃる姿に、大変刺激をいただいていますね。

研究を続けてよかったと思う瞬間はどんなときですか。

わからなかったことを、実験データなどを組み立てて自分の言葉で説明できたときは、言葉では言い表せない感動があります。

これからの女性研究者支援に望むことはありますか。

女性に限らず、多様な働き方を認め合う制度、社会、意識改革が必要だと思っています。

女性・男性問わず、ライフステージごとにどう生活するのか、そして仕事とのバランスをどう取るのかについて、それぞれが意識しながら認め合えたらいいですね。

これからの研究者としての夢や目標は。

DDユニットを通して他の研究者と触れ合うなか、今まで、時間などの制約を言い訳にして、仕事に対し冒険しないようにしていたことに改めて気がつきました。今後は、積極的に取り組みたいです。

後輩へのメッセージをお聞かせください。

若いときに、研究者としてたくさんの多様な経験を積んでください。男女共同参画社会になっても、出産・育児、配偶者の転勤、親の介護などに遭遇すれば、女性が折り合いをつけなければならないことは正直多いです。だからと言って、すばらしいライフイベントである出産・育児の機会を諦めるなどの選択はせず、そのときも想定して、若いときは貯金するくらいの気持ちでいてくださいね。

また、自分の性格、子供の個性、そして置かれた環境にもよると思いますが、子育て中は目一杯頑張り続けることが必ずしもよいわけではないと思います。子どもが小さいうちは特に、信頼できる方を見つけて助けていただくことが大事ですよ。

そして、周りへの感謝は忘れずに、制度として利用できるものは、引け目を感じることなく堂々と利用してください。がんばってくださいね。

桑葉 くみ子(くわば くみこ)氏

1日のタイムスケジュール

6:00 起床、朝食・お弁当作りなど
8:00 自宅を出る
9:00 始業
17:30~18:00 終業
19:00~19:30 買い物後、帰宅
19:30 夕食準備、夕食、団欒、家事、入浴
24:00 就寝

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