千葉豪雨で被災した千葉大学病院へ
医療器材の洗浄・滅菌支援を実施
東京科学大学病院は、2026年8月の千葉豪雨で排水処理設備が被災した千葉大学医学部附属病院に対し、手術支援ロボットの器材を含む医療器材の洗浄・点検・組み立て・滅菌を行う支援を実施しました。大学病院の高度な機能を相互に補い、被災地の医療を止めないための新たな連携です。
支援要請から2日で受け入れを開始
8月13日の記録的な豪雨により、千葉大学医学部附属病院では地下の排水処理設備が冠水して故障し、手術や検査に使用する医療器材の洗浄・滅菌が困難となりました。8月19日には予定していた手術をすべて中止し、その後も手術件数を制限せざるを得ない状況となりました。
同院の大鳥精司病院長から、本学の藤井靖久医療担当理事と宮﨑泰成病院長に支援の相談が寄せられました。同じ頃、国立大学病院長会議から、当院の久保田英雄材料部長にも材料部門による相互支援について連絡がありました。久保田部長は以前から、災害時に大学病院の材料部門が支え合う体制の必要性を訴え、情報共有の仕組みづくりに取り組んでいました。
正式な要請を受けた19日のうちに関係者が協議し、翌20日には千葉大学医学部附属病院の穂積崇史材料部副部長が当院を訪問しました。宮﨑病院長、久保田部長らと、対象となる器材の種類や量、搬送、識別、処理工程、安全管理などを確認し、現場を視察。21日夕方には最初の器材が搬入され、洗浄・滅菌支援を開始しました。
夜間の設備と専門性を生かし、約40件の手術を支援
支援では、千葉大学医学部附属病院から夕方に搬出された器材を当院が受け入れ、主に夜間から早朝にかけて洗浄、点検、組み立て、滅菌を行い、翌朝に返却するサイクルを構築しました。1日最大200セット、手術約40件分に相当する器材の受け入れを想定し、当院の診療に影響を及ぼさないよう運用しました。
対象には、手術支援ロボット「ダビンチ」などの複雑な構造を持つ器材も含まれます。こうした器材には、機種ごとに定められた専門的な手順、設備、知識に加え、使用履歴と処理工程を管理するトレーサビリティーが欠かせません。当院では、複数の手術支援ロボットを日常的に運用してきた実績を生かし、専門スタッフ、委託事業者、運送会社、機器メーカーが一つのチームとなって、安全で継続可能な体制を整えました。
また、千葉大学医学部附属病院の器材と当院の器材が混在しないよう、識別方法、保管場所、作業時間帯を明確に分け、受け渡しから返却までの各工程を記録しました。
本格的な受け入れとなった8月24日夜には、千葉大学医学部附属病院から使用済みの医療器材約60セットが、2tトラックで当院に運び込まれました。25日の診療や手術に間に合わせるため、材料部では、千葉大学医学部附属病院のスタッフが夜間・深夜帯に洗浄・点検・組み立て・滅菌を行い、翌朝の返却に備えました。こうした取り組みにより、千葉大学医学部附属病院では24日から一般的な手術の一部を再開することができました。
平時の備えが支えた「機能別の相互支援」
今回の支援を可能にした基盤の一つが、2023年9月に完成した機能強化棟です。免震構造と非常用発電設備などの防災機能を備え、ERセンター、手術室、材料部を集約しています。医科・歯科の洗浄・滅菌設備、専門的な知識を持つスタッフ、夜間にも設備を運用できる余力、器材を追跡管理する仕組みなど、ハードとソフトの両面における平時からの備えが、迅速な受け入れにつながりました。
医師や看護師、手術室が機能していても、安全に使える器材がなければ手術はできません。洗浄・滅菌部門は、患者さんからは見えにくい場所で日々の診療を支える、病院の重要なインフラです。今回の取り組みは、災害によって停止した病院機能を別の大学病院が補う「機能別の相互支援」であり、地域の医療を止めないための新たな災害医療のモデルになり得ます。
NHKニュースと「news zero」で紹介されました
本支援は、8月21日にNHKニュース「被害の千葉大病院支援 医療器具の洗浄設備貸し出し 東京科学大」で紹介されました。8月24日放送の日本テレビ「news zero」では、櫻井翔さんが当院の支援現場を訪れた田中雄二郎学長にインタビュー取材しました。田中学長は、国立大学病院同士で医療器材の洗浄・滅菌を支援する取り組みはおそらく初めてであり、医療材料を通じた新しい病院連携の一歩だとの認識を示しました。また、全国規模の災害に備え、平時から病院同士が助け合う仕組みを考える必要性を語りました。
全国の大学病院が支え合う仕組みへ
東京科学大学病院は、今回の支援で得られた経験と課題を記録し、全国の大学病院で共有していきます。各病院が保有する設備、受け入れ可能な器材や処理量、連絡窓口、搬送方法などを平時から共有し、洗浄・滅菌、物流、設備、電源、情報システムを含めて支え合う体制を整えることが重要です。
当院はこれからも、自院の患者さんとスタッフの安全を守りながら、大学病院としての専門性と総合力を生かし、災害時にも必要な医療を継続できる仕組みづくりに貢献してまいります。
関連報道
NHKニュース「被害の千葉大病院支援 医療器具の洗浄設備貸し出し 東京科学大」(2026年8月21日)
news zero「#286 千葉豪雨…大学病院の“連携”で 手術が再開」(2026年8月24日)
読売新聞 豪雨被災で手術制限中の千葉大病院へ、東京科学大病院が器材洗浄施設を提供…異例の国立大病院間支援
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医療器材の洗浄・滅菌支援を通じた連携を確認し、握手を交わす東京科学大学病院の宮﨑泰成病院長(左)と、千葉大学医学部附属病院の大鳥精司病院長(右)

医療器材の洗浄・滅菌設備を前に、支援に携わった千葉大学医学部附属病院と東京科学大学病院の両院長、病院スタッフ、材料部スタッフ(左から3人目は宮﨑泰成・東京科学大学病院長、同5人目は大鳥精司・千葉大学医学部附属病院長)
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複数のメディアの取材に応じる東京科学大学病院材料部の久保田英雄部長。材料部に報道カメラが入ったのは今回が初めてで、取材陣は医療器材の洗浄・滅菌工程を熱心に取材しました。

医療器材の洗浄・滅菌支援に向けた現場確認を終え、握手を交わす久保田英雄・東京科学大学病院材料部長(左)と、穂積崇史・千葉大学医学部附属病院材料部副部長(右)


























