お知らせ

ECMO装着重症患者の救急搬送トレーニングに参加

2022年6月18日、栃木県の病院で開催されたECMO装着重症患者の救急搬送トレーニング「ECMO Transport研修」に当院の医師、看護師、臨床工学技士、救命士が参加しました。研修に参加したERセンター准教授森下幸治先生、加藤渚救急救命士に話を聞きました。

ECMO Transport研修

開催場所栃⽊県済⽣会宇都宮病院
開催日時2022 年 6⽉ 18⽇(⼟) 8:25~16:40
研修概要(案内文書より抜粋)
栃⽊県下の医療機関に勤務する医師、救急救命士、臨床⼯学技⼠を対象として、重症患者搬送、ECMO装着下搬送(以下、ECMO搬送)を行う上で必要な知識、法規などについての座学講習や、実際搬送に用いる車両を使用したシミュレーショントレーニングを含む研修を⾏い、有効かつ安全な患者搬送を実施可能な⼈材を育成する。

森下先生、加藤救命士にインタビュー!

ECMO Transport 研修とは?

  • 准教授 森下 幸治 医師

    医療機関に勤務する医師、看護師、臨床⼯学技⼠および救命士等を対象として、重症患者搬送、ECMO装着下搬送(以下、ECMO搬送)を行う上で必要な知識、法規などについての座学講習や、実際搬送に用いる車両を使用したシミュレーショントレーニングを含む研修が行い、有効かつ安全な患者搬送を実施可能な⼈材を育成することが目的となっています。(今回は第3回目とのことです。)
    参加チーム:医師、看護師、臨床工学技士、救命士を含む多職種チームで参加します。
    今回、参加施設:済生会宇都宮病院、日本医科大学付属病院、東京医科歯科大学附属病院、広島大学病院が参加し、われわれは、救命救急センターから、安達 朋宏助教、加藤 渚救命士統括、北原 嶺救命士、原島 瑞葵救命士。MEセンターから、高濱 臨床工学技士、そして私(森下 幸治准教授)の医師2名、救命士3名、ME1名で参加しました。

    ERの役割:ECMO患者の搬送には、1.要請・出動対応、2.紹介元病院での医療スタッフと協力しながら活動(ECMO関連の必要物品の用意、紹介元の医療スタッフと一緒に活動、同意書の取得など)、3.Packing・車内への搬入、4.車内での急変対応と様々なステップを適切に行うことが重要です。ERはこれらの各ステップにおいて、様々な医療スタッフ(他科の医師、看護師、MEなど)と協力しながら適切にマネージメントをすることが求められます。

  • 加藤 渚 救急救命士

    ECMO(体外式人工心肺補助装置)は昨今のコロナ診療において、一般にも知られるようになってきましたが、ECMO等の生命維持装置を装着した患者様は全身状態も不安定な重症な状態であり、搬送には細心の注意を払う必要があります。
    コロナ禍において、都内の医療機関に入院中の患者様が重症化し、ECMO治療が必要であるが、導入できるスキルが無いといった際に、当院から医師・救急救命士・臨床工学技士が出動し、先方の病院でECMOを確立し、当院ICUまで搬送する、Primary ECMO transportを行ってきました。
    今回の研修では、搬送中に起こりうる高度なトラブルシューティングの訓練とチームディスカッションを繰り返し行い、安全なECMO搬送を目指すという趣旨で開催されました。

トライハートドクターカーの感想は?

  • 准教授 森下 幸治 医師

    今回の研修で見学させていただきましたが、患者さんを乗せて搬送する際は、スペースが大きく車内での対応がしやすく好ましいと思いました。

  • 加藤 渚 救急救命士

    今回トライハートの救急車は使用しておりません。当院の病院救急車を持ち込み、訓練しました。当院の病院救急車は、昨年4月から運用を開始しており、見た目は消防の救急車と変わりませんが、内部構造は当院のオリジナルな仕様になっており、ECMOカーとしての役割も持っております。

今回の研修の成果は?

  • 准教授 森下 幸治 医師

    発生する可能性が低くても、万が一に備えて、マイナートラブルにも対処できるトレーニングが出来て非常に有意義な機会でした。より安全にECMO搬送が出来るよう、学んだ内容について、院内でも共有できればと考えています。

  • 加藤 渚 救急救命士

    今回の研修で、ECMO搬送を行うためには、他院の先生方と良いコミュニケーションを取りながら協力して搬送対応することの大切さを再認識しました。また、ECMO netの同意書、搬送チェックリスト、搬送経過シート、デブリーフィングシートなども確認することができ大変参考になりました。当院の救急車にECMOのついた人形を載せた訓練を行うことにより、救急車内の限られたスペースでの、コミュニケーションの取り方、車内で急変が起こった際のトラブルシューシューティングなどを学ぶことができ大変有用でした。

今後の救急医療やパンデミック対策は?

  • 准教授 森下 幸治 医師

    ERでは普段から患者様の転院受け入れ、転送に関わる機会は多いのですが、人工呼吸器管理中の患者様の搬送はあっても、ECMO装着中の患者さんの搬送は非常に少ないです。しかし今後、ECMOの必要な重症患者の搬送が必要になる可能性もあり、われわれの使用している救急車を用いて、Packaging、車内搬入、搬送の研修ができたことは、今後の出動に際してとても役立ったと思います。

  • 加藤 渚 救急救命士

    ひとえに、「患者搬送」といっても、病態に応じて様々なコメディカルスタッフの協力がないと実行できません。医師・救急救命士・臨床工学技士など、様々な専門的視点から意見を言える環境を整え、多くのスタッフを巻き込んだシミュレーショントレーニングを行う必要があると実感しました。

コロナ感染症の状況は?(2022年6月23日時点)

  • 准教授 森下 幸治 医師

    通常の(非コロナ)救急患者さんの依頼が増えて来ておりますので、引き続き気を引き締めて頑張りたいと思います。

  • 加藤 渚 救急救命士

    一定数重症の患者もおり、今後強力な変異株が発生した場合に、第4波・第5波のような状況になることは想定しておかなければならないと考えております。一方で、「急病」や「事故」などの重症救急患者はいつでも発生しますので、感染症のみならず、重症救急患者の受け入れを止めないよう、東京都の3次救命救急センターとしての使命を尽くしているところです。

最後に…

  • 准教授 森下 幸治 医師

    今回の研修の経験を活かして、体制を再整備してECMO transportの必要な患者様がいる際には、社会貢献できる様にしたい思います。

  • 加藤 渚 救急救命士

    救命救急センターでは、救急救命士による病院救急車の運用を行っております。
    患者搬送に関して難渋している場合にはお気軽にご連絡ください。