髄膜腫meningioma

菅原 貴志(すがわら たかし) (脳神経外科外来:毎週金曜日)

髄膜腫とは

主に脳を覆っている髄膜という膜から発生する腫瘍で、8-9割が良性腫瘍(WHO grade 1)で1-2割が悪性腫瘍(WHO grade 2, 3)です。日本では頭蓋内に発生する原発腫瘍の約25%を占め最も頻度の高い腫瘍です。多くは脳の実質外に存在するため、小さいうちは症状を出しませんが、大きくなり脳を圧迫するようになると圧迫された部位の症状が出現します。また、頻度は高くありませんが脳実質内に浸潤し症状を呈するものもあります。腫瘍が小さく症状のない場合は、多くは良性であるため経過観察を行います。急速な増大を認める場合は悪性の可能性も考え、手術により摘出し病理組織診断を確定させます。また頭蓋内に発生する腫瘍は、たとえ良性の場合でもある程度の大きさになると脳実質を圧迫し、麻痺、失語等の症状を呈し、命にかかわる場合もあるため手術による摘出を行います。

腫瘍の発生場所により様々な名称があり、症状、治療等が変わってきます。

円蓋部髄膜種
円蓋部髄膜種
傍矢状洞髄膜種
大脳鎌髄膜種
側脳室三角部髄膜種
錐体骨先端部髄膜種
錐体骨髄膜種
蝶形骨縁髄膜種
錐体斜台部髄膜種
蝶形骨縁髄膜種
嗅窩部髄膜種
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髄膜腫の症状

脳の周りのあらゆる場所に発生するため、圧迫する脳の部位により様々な症状を呈します。頭痛、麻痺(力が入りにくくなる、歩けなくなる)、感覚異常(手足のしびれ等)、失語(言葉が理解できなくなる、しゃべれなくなる)、視野視力障害(物が見えにくくなる)、眼球運動障害(物が二重に見える)、難聴(聞こえが悪くなる)、眩暈、嚥下障害(飲み込みにくくなる、むせる)、嗄声(声がかれる)、てんかん発作(痙攣等)などの局所症状や、頭痛、嘔吐、意識障害等の頭蓋内圧亢進症状(腫瘍により脳の圧が上昇することにより起きる症状)などがあります。

症状が出現した場合は、摘出し圧迫を解除することにより症状が改善することが期待できるため手術摘出をお勧めします。

最近では、脳ドックや頭痛・眩暈精査目的のMRIで症状がない状態で診断されることが多くなっています。

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髄膜腫の診断・検査

頭痛・眩暈精査や脳ドックなどのMRI等で偶然見つかりご紹介いただくこともあります。前記症状を認めた場合にCT・MRIを撮影することにより診断がつくことが多いです。他院にて診断がつき、手術目的にてご紹介いただくことも多くあります。治療が必要と考えた場合には、MRA(MRIによる血管評価)、CTAG(CTによる血管評価)、脳血管撮影(カテーテルによる血管・血流評価)などにより、髄膜腫の性状(血流の多さ)や周囲の重要構造物(動静脈、静脈洞、脳神経等)との関係を詳細に評価します。また当院では3DCTやMRI、脳血管撮影等の画像を3次元画像として重ね合わせることにより、より詳細な検討を行っております。これによりどの手術方法が最適か、また手術が安全に行えるか等も評価できます。脳の表面にあり、比較的安全に手術ができると判断した場合は脳血管撮影を省略することもあります。

3D画像1
3D画像2
3D画像3
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髄膜腫の治療

偶然見つかった場合や、腫瘍による症状がないと判断した場合は経過観察となりますが、その場合、まずは3か月前後にMRI等の画像による再検査を行い増大の有無を確認します。変化のない場合は6か月後、1年後に再度検査を予定し、定期的に画像検査を行っていきます。増大を認めた場合は、年齢等を考慮して治療(手術、放射線治療:詳細は後述)を検討します。また症状出現時は速やかに手術を検討します。

すでに症状を呈している状態で見つかった場合は速やかに手術を検討します。手術は主に開頭腫瘍摘出術を行います。場所によっては内視鏡的腫瘍摘出術も行います。

①開頭腫瘍摘出術・内視鏡的腫瘍摘出術

・開頭腫瘍摘出術

頭部の皮膚を切開し、頭蓋骨を一時的に外して腫瘍に到達します。

・内視鏡的腫瘍摘出術

頭蓋底部に存在する腫瘍に対して鼻腔(鼻の穴)から内視鏡を挿入し腫瘍に到達します。

良性腫瘍(WHO grade 1)の場合は手術で全て摘出することにより治癒が期待できますが、全て摘出することにより血管や脳実質、脳神経などの周囲の重要構造物を損傷する恐れがあり重篤な合併症が予想される場合は、部分摘出にとどめることもあります。残存部に対しては経過観察を行い、増大するようであれば再手術や放射線治療なども検討します。

悪性腫瘍(WHO grade 2, 3)の場合は残存させた場合は再増大する可能性が高いため、可能な限り摘出を行います。しかしながら、重篤な障害が予想される場合はやはり部分摘出にとどめ、術後に放射線治療を追加します。WHO grade 3の場合は全摘出できた場合でも再発率が非常に高いため、術後放射線治療を追加します。

②放射線治療

・ガンマナイフ

最大径3cm未満の小さな腫瘍であれば考慮します。また前述のように術後の残存腫瘍や再発腫瘍に対してこの治療を追加することもあります。良性か悪性かの判断には組織を取り病理診断を確定することが必要であり、この診断は治療法の選択に必要です。そのため、基本的には病理診断の確定していない初発の症例に対しては、高齢者等の手術が困難な患者さん以外にはお勧めしていません。

・外照射

悪性腫瘍(WHO grade 2で術後腫瘍が残存した場合やWHO grade 3の術後全例)に対して術後に腫瘍の発生部位や残存部位を含め放射線を照射します。

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当院の特色

頭蓋底髄膜腫

頭蓋底という脳を支えている頭蓋骨底面の深い場所に発生する髄膜腫の手術を数多く行っています。当院では頭蓋底手術(頭蓋底手術へリンク)を脳神経外科・頭頸部外科(耳鼻咽喉科)・形成外科のエキスパートにより構成される頭蓋底外科チームを組んでおり、必要時はこの3科合同チームで手術を行います。これにより、いろいろな方向から腫瘍を安全に摘出し、複雑な再建も可能となっています。

    
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