
星野 由美 氏
生体材料工学研究所
医療工学研究部門
精密医工学分野
講師(キャリアアップ)
当制度に申請した理由(着任への想い、どのようなスタンスやマインドでダイバーシティ推進に携わろうとしているか、キャリアアップに向けた意欲など)を教えてください。
本制度への申請は、分野長(池内真志教授)からお声がけをいただいたことがきっかけでした。私自身、子育てを一人で担いながら研究と教育に取り組む中で、キャリアを継続していくことの難しさを実感してまいりました。それでも、研究者・教育者としての志を大切にし、自分らしく歩みを止めることなく前へ進み続けたいという思いを持ち続けています。今後の活動をより発展的なものにしていくためにも、研究に対する責任や役割を少しずつ広げていくことは大切だと感じています。本制度の支援を活用しながら研究環境を整え、限られた時間の中でも質の高い成果を積み重ねていきたいと考えています。
また、これまでの経験を通して、多様な背景をもつ研究者が安心して挑戦を続けられる環境の大切さを強く実感しています。今後は、自身のキャリア形成に努めるとともに、ダイバーシティを推進する一人として、周囲と協力しながら前向きな変化を生み出していけたらと願っています。
ご自身のお仕事の内容とその魅力について教えてください。
私の専門は生殖生物学で、卵子や受精卵を対象に、発生能力の高い、いわゆる“質の良い卵子”を科学的に見極める研究に取り組んでいます。これまでの基礎研究で得られた知見をもとに、細胞診断技術の開発にも力を注いでおり、将来的にはその成果を生殖医療へ応用することを目指しています。現在は、細胞内温度や細胞表面の変化など、卵子の健常性を示す多様な指標に着目し、非侵襲かつ高精度に卵子の状態を評価できる技術の確立に挑んでいます。
この研究の魅力は、生命のはじまりに関わる複雑な細胞内現象を分子レベルで解明しながら、その成果を社会に還元できる点にあります。不妊治療の成功率向上や、患者さんの心身の負担軽減につながる技術の実現を見据え、自らの研究が貢献できる可能性に大きな意義とやりがいを感じています。さらに、異分野の専門家や企業との連携を通じて、新たな医用技術や診断システムの創出にも取り組んでいます。基礎研究と社会実装をつなぐ架け橋として、研究成果が医療現場で実際に役立つ未来を思い描きながら、日々研鑽を重ねています。
キャリアアップ教員に就いたことで、ご自身や周囲で変化したこと等があれば教えてください。
研究と教育の両面において、これまで以上に責任と覚悟を持って取り組むようになりました。自分自身のキャリア形成に対しても、より明確な目標意識を持つようになり、限られた時間の中で研究の質を高めるための工夫や、計画的な時間の使い方をより意識するようになったと感じています。制度の後押しを受けながら、専門性をさらに深めるとともに、次世代の研究者の育成や学内の多様性推進にも積極的に貢献していきたいと考えています。今後も、自身の経験を活かしながら、前向きに歩みを進めてまいります。
当制度に期待すること、ご要望等はありますか。
研究とキャリア形成の両立を支えていただける環境は、大きな励みとなっております。今後も、ライフイベントや多様な背景を持つ教員が、それぞれの状況に応じて柔軟に研究・教育に取り組めるような環境整備が、さらに進んでいくことを願っております。本制度が、同様の立場にある教員にとっても心強い支えとなり、持続的な研究・教育活動の推進につながっていくことを期待しています。
今後の目標(どのような女性リーダーになろうとしているか、研究者・医師・歯科医師・教育者としての抱負など)を教えてください。
これまでに得られた研究成果を社会に還元する取り組みをさらに推進するとともに、研究者としての専門性を一層深めながら、教育の面でも次世代を担う人材の育成に力を注いでまいります。特に、生命の根幹をなす生殖の領域において、基礎と応用の両面から科学的な知見を積み重ね、臨床や社会との橋渡しとなる研究を継続していきたいと考えています。
また、子育てと研究の両立に取り組んできたこれまでの経験を活かし、多様なライフスタイルや価値観が尊重される環境づくりにも貢献していく所存です。しなやかさと専門性を併せ持ち、協調的かつ実践的な姿勢で未来を切り拓いていける女性リーダーを目指し、引き続き研鑽を重ねてまいります。
