
当制度に申請した理由(着任への想い、どのようなスタンスやマインドでダイバーシティ推進に携わろうとしているか、キャリアアップに向けた意欲など)を教えてください。
東京医科歯科大学と東京工業大学との統合に伴い、一年生の教養教育の合同運営について検討する必要が出てきたことをきっかけに周囲の先生からも背中を押していただいて応募しました。二つの組織が一つになっていくなかで、ほんの数年前までは考えられなかった、領域、知見、そして多くの人との幸せな巡り合いがあるだろうと思います。そんな数多くの出会いのなかでも、大学入学直後の学生同士の最初の出会いと学びの場を創出し、そこに立ち会い、見守り、よりよくしていくためのお手伝いができたら、と思いました。それが積み重なって、大きなダイバーシティ推進へとつながるひとつの礎になればよいと願っています。
ご自身のお仕事の内容とその魅力について教えてください。
教養部は、大学に入学したばかりのフレッシュな学生たちが一生懸命頑張っている様子を間近で見ることができるので、教員としてはとても幸せな場所だと思っています。また、統合されて少しずつ育っていく新大学に対して学生たちが胸に抱く有形無形の期待を感じながら、その初年次カリキュラムを形にしていくことは、私の仕事の一番大きな魅力だと考えています。
キャリアアップ教員に就いたことで、ご自身や周囲で変化したこと等があれば教えてください。
まだ就いたばかりであまり実感がない、というのが正直なところです。けれど結果の通知をいただいてから、これまでを振り返り、お世話になった方たちに改めて深く感謝しました。そして自分も、今後ほかの誰かが(立場や状況や性別に関わらず)葛藤を抱えたときに、適切に相談ができるような場所づくりに関われたら、と考えるようになりました。皆が自分のライフイベントをためらうことなく共有し、そのときそのときの状況について周囲と相談を重ねながら、頑張りたいことを諦めずに頑張り続けられるような環境を作りたい、と思っています。その創出を、特定の個人の能力や優しさによって実現するのではなく、もっと大きなネットワークのなかで実現させられたらいいな、とも願うようになりました。それが私の変化、だと思います。
当制度に期待すること、ご要望等はありますか。
限られた期間で特定の分野に大きな結果を出したか否か、だけではない新しい評価軸の創出を期待しています。たとえば私は「新大学の教養教育統合」に関わる教育プロジェクトでこの制度に応募しましたが、自分自身の英文学の研究も頑張りたいと思っています。他の多くのキャリアアップ教員もまた、自分のプロジェクト推進と並行して、ライフイベントに関わるさまざまな用事、分野内業務に割く時間など、「ほかにも大事なこと」をたくさん抱えていると思います。それらを包括的にどう評価すべきか、が非常に難しい問題であることは理解しています。それでも、単にプロジェクトの達成度や数値化された指標を超えたところで、多様な人たちの多様な状況を評価するためにはどうしたらよいのか、検討していただけたら、と願っています。
今後の目標(どのような女性リーダーになろうとしているか、研究者・医師・歯科医師・教育者としての抱負など)を教えてください。
新大学の初年次教育のためのプロジェクトに精一杯注力して、自分にできるすべてのことをしたいと思います。一方で上に述べた通り、自分の研究も充実させられる道を探したいと思っています。教育プロジェクトでキャリアアップ教員に採用していただいたのに、研究プロジェクトも頑張りたいだなんて、これは「欲張り」と言われるかもしれない希望ですが、それでも、さまざまなライフイベントを抱えながら働く方たちや、諸々の事情ゆえに仕事だけに注力できないで苦労している方たちは皆、構造的にこれに通底した状況を抱えているのだろうと思います。だから私もまた、あれもこれも諦めないで頑張ろう、そしてどちらも頑張りたい、と言えるような環境を自ら作っていきたいと思っています。それは決して「欲張り」という言葉で片づけられるものではないはずで、複数の希望や願いをどれも捨てないで持ち続けることこそが、ダイバーシティの包摂と実現につながる、と信じています。
