My Career Story

助川 明香先生イメージ写真

助川 明香 氏

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科(医)
ウイルス制御学分野
講師(キャリアアップ)

当制度に申請した理由を教えてください。

女性研究者が「女性」という枠組みに捉われず、子育てをしながらも、ごく当たり前に活躍できる社会作りに貢献したいと考えています。日本は、ダイバーシティ先進国である欧米諸国と比較して、育児や介護は女性が担う、という固定概念が未だ強いため、女性管理職や女性研究者の割合が低いままです。研究は続けたいけれど、仕事と子育てとの両立を前に今後のキャリアに不安を感じながら働く若手女性研究者も多いかと思います。本制度の「研究支援員配備」等のサポートを受けながら、自身のキャリアアップに挑戦するとともに、若手女性研究者のロールモデルとなって、多くの女性研究者がより活躍しやすい社会体制の構築に貢献したいと思い申請をしました。

ご自身のお仕事の内容とその魅力について教えてください。

専門は、ウイルス感染症分野です。大学院時代から、世界三大感染症の1つであるエイズ(AIDS)の原因ウイルス、HIV-1の基礎研究に従事しています。エイズは発見当初は「死の病」と恐れられていましたが、医学の進歩により種々の抗ウイルス薬や治療法が開発され、現在では「慢性疾患の1つ」とまで捉え方が変化してきました。しかしながら、ウイルスの発見から40年が経過してもなお、体内からのウイルスの完全排除は困難であり、未だ治癒には至っていない非常に興味深い特徴をもつウイルスです。私は、HIV-1感染症治癒を目指して、新規抗ウイルス薬の標的となり得るウイルス複製制御因子の探索や、新規抗ウイルス薬の探索研究をおこなっています。基礎研究は、一見地味で忍耐力が必要ですが、新たな発見があった時は、宝の地図を見つけたような興奮と喜びに襲われます。そして、論文として世に出た時の達成感は何事にも代えがたい中毒性があります(笑)。

キャリアアップ教員に就いたことで、ご自身やご周囲で変化したこと等があれば教えてください。

職場の同僚や上司、家族から「おめでとう!よかったね!」と自分ごとのように喜んでいただけ、嬉しくもあり、照れくさくもありました。正直、まだあまり実感は湧いていませんが、講師(キャリアアップ)に登用いただき、助教として本学に採用していただいた時以上に、自分のやるべきことがやれているのか、と自問しつつ、与えていただいたチャンスを無駄にしないように、積極的に挑戦していこう!と前向きに考えています。1つの収穫としては、仕事中心の夫が、私のキャリアアップに刺激され、私自身と家族にとってより良い形を模索してくれるようになったことです。これまで以上に、お互いの大切な仕事を尊重し合える良い機会になりました。

当制度に期待すること、ご要望等はありますか。

子供が2人となり(2023年8月出産)、今後ますます子供の発熱等、突発的な不測の事態で研究を中断せざるを得ないことがあり得ると思います。そのため、本制度の「研究支援員配備」に期待する部分は非常に大きいです。育児をはじめとしたライフイベントと仕事との両立にあたり、研究支援員の方にお手伝いいただくことで、より効率的な時間の活用が可能になるとともに、キャリアアップに挑戦できます。本制度は、子育て世代の研究者にとって、とても魅力的な施策だと思います。

今後の目標を教えてください。

「女性」に限らず、研究とライフイベントの充実に熱意を持つ全ての研究者の良き先輩として、「半歩先を行く」存在になりたいと考えています。素晴らしい女性リーダーは多く存在しますが、私にとっては、2歩3歩も先を行くような輝かしいキャリアを積んでこられた、手の届かないような存在です。まずは、自分自身が、あらゆるチャンスと制度を活用して、研究と家庭の両立を図りつつ、自分らしい生き方の実現を目指します。若手(女性)研究者が、ライフイベントと仕事の両立に不安を感じることがあれば、その気持ちに寄り添い、半歩先を行く先輩として自身の経験を基に支えたいと思います。「あの人ができるなら、自分も頑張って挑戦してみよう!」と前向きに自身のキャリアの可能性を考えてもらえる、身近な存在でありたいと思います。