My Career Story

野上 彩子先生イメージ写真

野上 彩子 氏

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科(医)
臨床検査医学分野
講師(キャリアアップ)

当制度に申請した理由を教えてください。

緊張感がある状況の方がモチベーションが維持しやすく捗るので、周囲の先生からの勧めもあり応募しました。ダイバーシティ&インクルージョン推進の考え方にも共感しています。まずはこの機会に後押しされる側に入り、後に引き上げる側に成長する形で地道に、後にパワフルに推進していきたいと思います。

ご自身のお仕事の内容とその魅力について教えてください。

血液内科医としては、診療のみならず再生不良性貧血および発作性夜間ヘモグロビン尿症等の原因分子を特定し、特異的な治療に繋げたいと考えています。診療を担当する医師ならではの研究を心掛け、大学院で培った造血異常の分子生物学的な解析技術に、新規の免疫ゲノム解析を取り入れています。地道な作業の積み重ねによって科学的根拠が形成されていく過程で日々多くの発見があり、真実が自身の手で明らかになる喜びを少しでも多くの学生さんや医師の方々に伝えたいと思います。検査部では、臨床検査専門医という立場で年間400例程の骨髄標本を鏡検すると共に産学連携事業としてAIを用いた血球の形態異常検出に関する共同研究を行っています。これは医療機器メーカーが試作した装置を用いて、迅速に形態異常を呈する血球を検出し、かつ腫瘍性、非腫瘍性を区別する社会実装です。この技術により、自動血液細胞分析装置のスクリーニング性能が向上し、高感度化による患者の病態変化の早期検出などが期待されます。診療に役立つだけでなく、臨床検査技師の方々の鏡検負担が減り、自動化による作業時間短縮とより専門性の高い業務へのシフトが可能となります。学術的にも独自性の高い本研究を推進し、俯瞰的な立場で医療現場の問題に取り組んでいきたいと考えています。多岐に渡りますが、臨床現場での患者さんの言葉、形態学に基づいた骨髄の診断、疾患遺伝子に基づいた研究、これらが有機的に結びついて各々を推進する次の動機となる、大変やりがいに満ちた環境に感謝しております。

キャリアアップ教員に就いたことで、ご自身やご周囲で変化したこと等があれば教えてください。

仕事への情熱を説いてきた家族の皆が拍手をして喜び、以前にも増して協力的になりました。学内でもお声がけいただく機会が増え、身の引き締まる思いです。これまでは自分の得意なことや成し遂げたいことに忠実に生きてきたのですが、今後は後進の方が、ライフイベント等を機に寝食を忘れて仕事に埋没することができない状況に置かれた際に、自ら忖度して身を引くことなく少しずつでも前に進めるよう、身近な道標として存在したいと考えるようになりました。

当制度に期待すること、ご要望等はありますか。

本制度について、女性を擁護するのが目的のような誤解があるようにも見受けられますので、構成員の多様化による活力ある組織の形成という本制度の趣旨をアピールしていただきたいと思います。最終的にはいわゆる特別枠等を「付加的に設ける」のではなく、「社会構成比と同等にする」のが自然であると思います。重要な会議、人事等、意思決定の場の開催に際しては常にダイバーシティの確保を必須要件とする取り組みがなされることを期待したいです。また、各家庭、各科など小さな単位で平等な社会参画の機会が維持できるような管理者の取り組み(重要な会議の開催時間、男性職員の育児・介護参加推進等)が、業績と同様に評価されるようになることを願います。

今後の目標を教えてください。

どのような立場であっても自身がやりたいことを追求できる環境、風土の形成を担うことによって、構成員がより高いモチベーションで集う組織になると良いと思っています。個人的にはScienceと疾患の間に立ち、前述の研究をライフワークとして国内外に発信し続けることで、良き前例となることができれば幸いです。