My Career Story

佐々木 純子先生イメージ写真

佐々木 純子 氏

東京医科歯科大学 難治疾患研究所
未来生命科学研究部門
病態生理化学分野
教授(キャリアアップ)

当制度に申請した理由を教えてください。

どんなに些細な仮説でも、自分の考えを実証できたときの喜びは格別です。たとえ仮説が棄却されたとしてもそこから新たな仮説が生まれるので、実験結果が出る瞬間は今でもワクワクします。これまでは目の前の研究に集中することでプロモーションの機会に恵まれました。その過程で出産、子育て(現在進行中)を経験しているのですが、周囲のサポートがなければ研究を続けることはできなかったと思います。次のステップは教授なのですが、時間的制約がある中で、研究以外の多くのスキルを求められる教授職に果たして自分が務まるのかと不安に思っておりました。そのような中、本校の女性上位職登用制度を知りました。3年間の研鑽期間を経て最終的なキャリアアップを目指す本制度は、不安を抱える自分にマッチしたものであると強く感じました。また第1期、第2期に登用された先生方のご活躍に触れ、自分も成長したいと思い申請いたしました。

ご自身のお仕事の内容とその魅力について教えてください。

細胞膜リン脂質の一種であり、脂質性シグナル分子として機能するイノシトールリン脂質(PIPs)の生理機能解析を行っております。極性基のリン酸化状態により7種に分類されるPIPsは、それぞれに特異的に結合するタンパク質分子の局在や活性を制御することで多様な細胞応答に関与します。7種のPIPs代謝は相互に連関しており、現在までに48種類の代謝酵素が見出されています。私はこれまでにPIPs代謝酵素の遺伝子改変マウスを多数作製し、PIPs代謝の乱れはがん、免疫疾患、代謝性疾患、神経変性疾患など様々な疾患発症につながることを明らかにしてきました。また最近は、PIPsのリン酸化状態と疎水性尾部をなすアシル基構造を識別する新たな解析技術PRMC-MS法(Phosphoinositide Regioisomer Measurement by Chiral column chromatography and Mass Spectrometry)を開発し、疾患におけるリン脂質そのものの異常動態を解析するとともに、新規リン脂質の探索と機能解析を行っております。これらの知見が、難治疾患の新しい医療に資する治療薬や診断法の開発につながるよう、留学生を含む10数名の学生とともに日々研究に励んでおります。

キャリアアップ教員に就いたことで、ご自身やご周囲で変化したこと等があれば教えてください。

役職が人を育てると言いますが、教授(キャリアアップ)の名称を付与され、実際に使用することで自身の意識が変化しているのを感じます。分野の一員として現在進行中の研究プロジェクトをどのように進めていくべきか俯瞰的に見るようになりましたし、研究室のスタッフや学生に積極的に話しかけ、なるべく早い段階で問題に対処できるようこれまで以上に心掛けるようになりました。今後はキャリアアップ教員対象に開催されるリーダーシップ向上セミナーやオーダーメイド支援等を有効活用して必要な資質を身に付けていくとともに、苦手分野にも挑戦していきたいと思っております。

当制度に期待すること、ご要望等はありますか。

女性上位職登用制度は画期的な制度であると思います。今年が最終年度と伺いましたが、後輩の女性研究者のためにも、類似の制度が再度立ち上がることを希望いたします(そのためにも、今回の女性上位職登用制度が成功であったと評価されるよう、精進してまいります)。

今後の目標を教えてください。

質の高い独創的な研究を展開するとともに、優秀な若い研究者を育成していきたいです。特に学生に対する教育に関しては、「ダイバーシティ」を意識し、学生一人一人の個性を大切にするきめ細やかな指導をしていきたいと思っております。