われわれの身体は、1個の受精卵が繰り返し増殖と分化を繰り返すことにより形成され、最終的に生命体の機能単位である臓器、ひいては、数十兆の細胞からなる個体が形成されます。私たちは、このようなヒト臓器や個体発生における緻密な生物学的プロセスを理解・制御を試みることで、その破綻がもたらす疾患の理解と克服・移植医療におけるドナーの絶対的不足という臨床課題の解決を目指した研究開発を進めてきました(Nature, 2013; Nature, 2017; Nature, 2019)。本ユニットでは、近年研究が進歩の著しい幹細胞生物学や発生生物学における最新知見を駆使することで、ヒト人工多能性幹(iPS)細胞などの幹細胞から数百万もの細胞から構成される複雑な構造を有した臓器の芽(オルガノイド、Organoid)を創出する技術の確立を目指します。最終的に、現在も治療が困難なさまざまな疾患分野において移植医療や創薬応用を通じて、オルガノイドを活用した革新治療概念(オルガノイド医学、Organoid Medicine)を次々と実証していくことを目標としています。
統合研究機構
先端医歯工学創成研究部門
教授 武部 貴則
私達の研究室では、ヒトの幹細胞より創出したさまざまな臓器の正常・疾患オルガノイド(臓器の芽)をツールとして、発生学・分子生物学・工学・遺伝学・進化学・情報科学・物理学・化学・医学など多分野における学理を結集することにより、次世代のオルガノイド研究領域を牽引するクリエイティブな基礎科学研究を推進します。具体的には、以下に示す大きく3つの研究プロセスを通じて、これまでの常識や原理・原則に囚われず全く新たな学術・医療概念を生み出すことを試みます。